#128(19日目・午後・セイン)

 ヒュッ ヒュッ パシン!!


「ん~、イマイチだな…」

「え!? すごくいいじゃないですか! セインにピッタリですよ!!」

「そ、そうか…」


 昼過ぎ、ギルドで昨日手に入れた鞭、[ローズウィップ]を試し振りしていた。


 [ローズウィップ]は、「性能はイマイチだけど再生能力がついている」でお馴染みの草系装備で…、トゲがついているせいか草系の中では攻撃力は高めに設定されている。攻撃力が高いのはいいのだが、やはり実戦を考えると耐久値が低いのは問題だ。草系装備はエンチャントが耐久方面に限定されるので、最終的な自由度はどうしても低くなる。


「じゃあ、セインはどんな鞭がよかったんですか?」

「そうだなぁ…、鞭専門でもないし、攻撃力はほかで補えるから、やはり耐久重視で金属系の[ワイヤー]あたりか?」


 [ローズウィップ]は、昨日たまたま見つけたユニークからドロップした装備であり、狙って入手したわけではない。お試しとしては有り難いが、欲を言えばもっと実用的な鞭がよかった。


「えぇ~、金属なんて無粋ですよ。やっぱり鞭なら革じゃないですか!?」

「そうか?」

「そうです! おすすめはこの[馬上鞭ばじょうべん]、あとあと、ナインテール系も外せません!! 種類も豊富で…。…。」


 攻略サイトを表示しながら熱弁を振るうスバル。しかしスバルのオススメは、どれもショート系の鞭であり、トリッキーな動きには使えない。


 ちなみに[馬上鞭]は騎乗時に装備していると瞬間的に加速する特殊スキルが使える鞭で、基本的に武器としては使わない。種類的には硬鞭こうべんに属するらしく、リーチも短いのでシナるロッドといった感じだ。


 ナインテール系は、柄に紐が複数ついている短めの鞭で、表面積が多いので毒などのエンチャントスキルに持続ボーナスがつくほか、皮膚に直接攻撃をヒットさせると追加で大ダメージが入る特性があることから、対高速アタッカー用装備の位置づけだ。


 [馬上鞭]はともかく、[ナインテール]は悪くないが…、俺の場合はメインが短剣なので速度面は不自由していない。レンジ的にもカブるし、やはり俺には装備を奪ったり、変則的な移動を得意とする長めの軟鞭なんべんがいいと思うのだが…、スバルには評判がわるい。


「ねぇ2人とも、装備も大事だけど…、自警団はいいの? 今、掲示板は自警団が負けた話で持ち切りだよ?」


 装備の話に興味はないのか、ユンユンが話題をすり替えてきた。個人的には自警団に興味はないが…、L&C全体の影響力を考えるとバカにできない組織なのは否定できない。


「自警団は…、まぁ焦る必要はないと思うぞ? 一応、考えもあるし」


 自警団とEDの一件は、ほぼ予想通りだった。


 自警団がゴブリン村を占拠している以上、C√ランカーに狙われるのは当然だったし、コロッケ1人でランカー集団を止められるわけもない。C√PCが今後どう動くのかも大体予想できる。


 俺の関心は、自警団が犯人を"指名手配できるか"と"魔王が出てくるか"だったが…、どちらも期待外れ。さすがに自警団が弱すぎて元魔王がいたか正確な判断はできなかったが…、少なくとも動画に映っている中にはいないだろう。


 自警団は完全に、勇者やランカーを目指すガチ勢から見捨てられている。せめてもっとましな協力者というか、アドバイザーがいれば今回の完全敗北は回避できたはずだ。少なくとも、表向き協力している白の賢者あたりならPK集団の行動パターンくらい知っていたはずで、的確なアドバイスなり援軍をよこすなりしたはずだ。それが"無い"という事は、つまりそう言うことだ。


「え? あぁ、そうなんだ。お兄ちゃんて、意外にマメなとこあるよね」

「意外ってなんだよ、失礼な」

「ふふふ、セインはテスト前に慌てて勉強するタイプじゃないですよね! 普段から確り勉強している癖に、テストはあまり気にしない。そういうタイプですよね~」

「え? いや、まぁ…(なんで知ってんだ?)」

「うわっ、もしかしてお兄ちゃんって勉強できる人? とりあえず嫉んどくね!? むしろ掘られろ!!」


 どうでもいいが、日に日にユンユンの態度がデカく…、というか地の性格が出てきている気がする。まぁ猫かぶるのが仕事みたいなところがあるから気持ちは分からんでもないが…。


「にゃにゃ~ん。遅くなったにゃ~」


 猫をかぶってストレスを溜めるユンユンに対して、猫をかぶることでストレスを発散するニャン子。なんとも面倒なヤツラだ。


「さて、ニャン子も来たし、さっさと試合するぞ!」

「「はぁ~ぃ」」

「ところで兄ちゃん」

「ん?」

「かわいいニャンコからお願いがありますにゃ」

「興味ありません」

「せめて用件を聞いてから断ってほしいにゃ~」


 ニャン子もニャン子で、ちゃっかり試合にかこつけて俺に要望を出してくる。ニャン子は挑戦を受ける側であって、本来は挑戦者としてカウントしていない。ユンユンがニャン子を指名してくれるのは有り難いが、かわりにニャン子が俺を指名するようになっては、プラマイ、マイナスだ。


「せめて抽選を勝ち取ってから要望をだしてほしいな」

「いや~、まぁそうにゃんだけど…、タイムリミットがあるというか…」

「知らん! 俺に何か求めるなら、抽選で権利を勝ち取るか、見合った対価を用意して正式に依頼しろ」


 俺は「愛や友情は見返りを求めない」と言う考えはあまり好きではない。俺自身が事故で周りの人に頼りきりの生活を送っていたせいもあるが…、やはり与えるだけ、与えられるだけでは「対等な関係」にはなれない。


「うぃ~。まぁ考えてみるにゃ…」




 妙に気落ちしたニャン子をよそ目に、本日の抽選がはじまる。

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