#096(14日目・夜・セイン)

 朽ちた壁に囲まれた果てしない廃墟。見た目の物がなしさに反して…、その場所は今日も大いに賑わっていた。


「あいかわらずの人気だな…。海底神殿の閑散っぷりがウソのようだ」

「L&Cのダンジョンと言えば、ココ、旧都アルバダンジョンにゃ~」


 王都アルバではなく、旧都アルバ。まぎらわしいので"旧都"と呼ばれるその場所は…、その名の通り王都の跡地がダンジョン化した、L&C最大のダンジョンだ。


 もとのアルバは海岸沿いに存在した貿易都市で、場所もアーバンとクルシュナの中間に位置していた。それが500年前の魔人の襲撃により壊滅。今の山に囲まれた王都は、もともと近隣の鉱山でとれた鉱物を集約するための中継地点だった場所に仮移転して、そのまま居つく形で発展したものだ。


 一応、L√のストーリーの表向きの目標は、"旧都を浄化して人の住める街に戻す"と言うものになっているのだが…、イベントがすすむにつれ、話は横道にそれて、魔王を倒す話に発展する。


 ちなみに旧都には、魔王はおろか魔人さえいない。本当にただの巨大なダンジョンとして利益目的で国から存在を黙認されている。その辺の詳しい事情は明確に語られていないが…、C√を進めるとNPCから意味深な情報をえることができたりする。


「しかし、こうも混雑していると、狩場に困りますね…」

「お花見状態だからな。さっさと奥へ進もう」

「はい」

「うぃ~」


 いくら広くてもそれ以上にPCが多い。入ってしばらく続く"広場エリア"はゾンビやスケルトンが出現する初心者向けのエリアだ。


 狩りのスタイルも固定狩りが主流で…、各自が一定間隔で陣取り、即湧きした魔物のタゲを見てエモノを分配する。なのでココでは通路に陣取らず、速やかに移動するのがマナーだ。


「そういえば、兄ちゃん」

「ん?」

「船長は結局どうするにゃ?」

「あぁ、そのことか…。今後の方針については、ちょっと考えさせてくれ」


 キャプテンのドロップは、コモンが[宝箱]で、あけるとランダムで換金アイテムが手に入る。大体1kから1Mと振れ幅が大きいが、平均して300k、つまり30万ほどの儲けになる。そこに加えてアンコモンやレアで各種装備が手に入るのだが…、結局出たのは[宝箱]から出た200kとハズレ装備の[眼帯]だけだった。


 まぁ、[眼帯]は嗜好装備としての需要もあるので今ならソコソコの値段で売れるだろうが…、結局、朽ちた装備ガチャのアタリは短剣型鈍器の[十手]が1つ出ただけだった。


「兄さん、猫を王都に戻して、お留守番させるのはどうでしょう?」

「にゃ?」

「なるほど、それなら最近のゴタゴタは全部ニャン子に任せられるな」

「にゃにゃ!?」

「大丈夫だ。もし自警団と本格的に敵対することになっても…、俺はまったく気にしない!」

「私も、むしろコチラから縁を切りたいくらいです」

「にゃ~ん、ゴロゴロ~」


 猫のマネをして誤魔化すニャン子。コイツに交渉事を任せられるとは思わないが…、正直に言って今のは冗談でも何でもなく、本心だ。ぶち壊してもらっても全くかまわない。とはいえ…、現状では"触らぬ神に祟りなし"、下手に刺激しないのが1番な気がする。


 唯一気がかりなことと言えば…、ギルドのある王都でないとスバルとの手合わせが出来ない点だ。


「あぁ、いっそクルシュナで在庫のアイテムを売却するのも手だったな。頑張れば1Mくらいにはなったかも」

「そうですね。街が変われば需要も変化するので、もしかしたらスムーズに売れるかもしれません」


 基本的にウチは販売メインではないので、売れるものを売りきったり、目標金額に到達したら切り上げてしまう。装備のほとんどは自力で調達しているので、支出は最低限。あくまで露店はジョブ経験値を稼ぐのがメインなのだ。


「すこし勿体ないが、こっちの買取商人に丸投げするのもありか…」

「急ぐ必要はないと思いますが…、判断は兄さんにお任せします」

「アチシも気にしにゃ~ぃ」


 特にコダワリのない2人。アイはともかく、ニャン子も猫関係の装備いがいは特にコダワリはないようだ。面倒がなくていいが…、俺もプランを考えるのが面倒になる時もある。




 そうこうしていると、目的地の"王城エリア"に到着した。


 ここには定番の不死系に加えて、下位の悪魔の"インプ"に、上位アンデッドの"ゾンビソルジャー"なども出現する。


 さらに奥に進むと本格的に厄介な連中が出現する"城内エリア"に続いているが…、今回は王都エリアで狩りをする。


「ところで、リッチの魔法はどうするつもりにゃ?」

「根性」

「お、おぅ…」


 リッチは魔法使いのゾンビなので魔法を使ってくる。幸いなことにアンデッドの知能は知れており、このランク帯の魔法攻撃で致命傷になりえるものは存在しない。結局のところ、下手に対策して他を疎かにするのは悪手だったりする。


 素人は物理防御を貫通する魔法攻撃を煩わしく思い、対魔法装備を欲しがるが…、魔法使いを相手にするのと同じで、魔法を撃たれる前に肉薄して速攻で倒すのが1番だったりする。そのためには、やはり殲滅力と機動力。つまり、いつも通りだ。


「今回は魔法関係の触媒が目的だからムリしてタゲを集める必要はない。普通にその辺をブラブラして、出てきたやつを、見つけ次第…、ぶっ殺せ」

「うぃ~」


 もちろん、この手のアイテムは露店でも買える。わざわざ取りに来たのは…、半分は観光だったりする。一応、悪魔系や魔法使い系は面白いレアドロップが多いが…、さすがに1日で揃うほど容易くはない。


 とは言え…、やるからには時間まで、キッチリ狩らせてもらう。




 こうして…、気分転換に必要性の乏しい魔法装備を集めて終わった。

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