#023(4日目・午後・セイン)
「それでは自分のPTは、別行動で目ぼしいエリアを巡回します。報酬は無理を言うつもりはないので…、猫関係のアイテムや不要なエンチャント素材でかまいません」
「はい、たぶんそれで大丈夫だと思います。もともと、にゃんころ仮面さんを勧誘するために[猫耳]は集めていましたし、多分みんな納得してくれるかと。それと…」
昼。俺はあらためてレイに会い。昨日話し合った内容を伝えた。まだログインしていないメンバーもいるので確定ではないが…、この調子ならPKKの話は問題なく通りそうだ。
「まだなにか?」
「こっちから連絡がとれないので、ブラックリストを解除してもらえないでしょうか?」
「それはもう少しまってください。近いうちに何とかするつもりですが…、妹はリアルだと重度のコミュ障で、異性とは話もできないタイプなんです」
別に嘘はついていない。ニャンコロさんはどうか知らないが、少なくともアイは絶望的に人付き合いが悪い。そのせいで…、妙に同性にモテるようだが、まぁそっちは面白いので口をはさまないようにしている。
「せめてギルドが使えれば、"ギルドホームの掲示板"が使えるんですけどね…」
あぁ、その手もあったか。
今までアイと2人でやってきたからギルドを設立することは考えていなかった。ギルドは、ほかのMMOと大体同じで、大勢のPCをまとめ上げる組合のようなものだ。上位ギルドになると砦をもったり、専用クエストを受注できるようになるが…、C√だと指名手配犯が表札を出しているようなものなので、利用する者は滅多にいない。
重要なのはギルドを設立すると、"ギルドホーム"と呼ばれるプライベートエリアを購入できる点だ。酒場にいかなくても会議ができたり、ギルド専用倉庫で余剰アイテムを共有したり、ギルドホームの掲示板を利用することで部外者とも連絡がとれる。
「それじゃあ、あらためて明日、結果を聞きに来ます。それでは」
「はい、にゃんころ仮面さんにもよろしくと伝えておいてください」
「はい。それじゃあ」
あれからレイのテンションは驚くほど普通になった。個人的には都合のいい勘違いをしてくれて感謝しているのだが…、しばらくはこのまま利用させてもらう。
しかし…、にゃんころ仮面さんか…。
ニャンコロさんの今のキャラネームは"ニャンコロ"であり、"にゃんころ仮面"ではない。仮面の方で定着しているせいもあり、現在のキャラネームをあえて聞いてくるPCはいない。
つまり連中はまだ、ニャンコロさんの本当のキャラネームを知らないのだ。これなら不味い現場を目撃されても相手はIDを参照できないので、本人だと断定できない。俺もキャラネームとは別の名前を定着させれば…、もしもの時の保険になるかもしれない。
そんなことを考えつつも、俺は酒場をあとにした。
*
昼過ぎ、サーラムの密林3。
「さすがにここまで背伸びするPCはいないか…」
ニャンコロさんは午後の遅い時間にログインするそうなので…、俺はあいた時間を利用してC√プレイヤーがよく利用するC値稼ぎの定番エリアを巡回していた。
サーラムの密林3には"朽ちた遺跡"があり、イベントをこなすとランダムでアクセサリーが入手できる。まぁ大したものは出ないので、あくまでイベントの通過点なのだが…、C√プレイヤーの狙いは別にある。
ココには2人の重装下級兵士が見張りをしており、それ以外に監視するNPCは存在しない。適正レベルは若干上がるが、指名手配される危険度はコチラの方が低い。
つまり、殺人を犯してC√を確定させる定番ポイントの1つだ。
「ん~、とりあえず、<サーチ>。 …反応なし。本当にいないのかな…」
<サーチ>は猟師系のアクティブスキルでMPを消費して感知範囲を一時的に増幅させるスキルだ。まだレベル1なので確実ではないが…、まぁNPCの兵士相手に回りくどい手を使うヤツはいないだろう。
猟師の特徴は、攻撃スキルが少ない代わりに、補助スキルが多いのが特徴だ。正直に言ってソロでは使いにくいスキルが多いが、上位職になると対人で使えるスキルが増えるので、積極的に使ってジョブレベルとスキルレベルを上げておく。
・追加スキル
技能強化Lv1:技のステータスを上昇させるパッシブスキル。
気配察知Lv1:周囲にいるユニットの感知能力を強化するパッシブスキル。
気配遮断Lv1:感知スキルの効果を半減させるパッシブスキル。
ストライクLv0:刺突攻撃を強化するアクティブスキル。弓での攻撃も強化できる。
サーチLv1:感知能力を一時的に増幅させるアクティブスキル。
マークLv0:指定したユニットが視界から消失しても発見判定の消失を抑制するアクティブスキル。
Lv0スキル:ギルド加入などで入手した未覚醒状態のスキル。使用しても高確率で不発するが、スキル経験値は入手できる状態。
しばらく、周辺で目立たないように狩りを続けていると…。
来た!
やがて2人組のPCが兵士に近づいてきた。どうやら2人で1人ずつ兵士を狩る作戦のようだ。俺は[道化師の仮面]を装備して、死角からギリギリまで2人に接近する。
7世代では初となるPKKに挑戦する。
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