Law and Chaos online 7 ~俺は人生をかけて人類の敵、やってます~

yuki

#001(プロローグ)

 その地は黄昏が永遠につづく白夜の森。沈まぬ太陽が、見る者の瞳に時が止まったかのような印象を与える。


「やっと着いたか。苦労したが何とか誰もかけることなくココまでこれたな」


 日の光を常に横から受け、歪に育った森をぬけた先には古城があり、多くの異形のものが巣くっていた。


「守護者は手を焼いたがな。でも、これが最後だと思うと…、なんだか寂しくもあるな」


 魔物の巣窟と化したその城に、今、36人の選ばれし英雄が集っていた。


「でもさ、傲慢の無敗神話をちょっと応援したい気もするよな?」


 彼らの眼前には鍵のかかった大きな扉がそびえ立ち、資格のない者の侵入を頑なに拒んでいる。


「おい! 冗談でもそんなこと言うな。俺たちを消耗させないためにココまで引っ張ってくれたサポーターの気持ちも考えろ!」

「わりぃ、アイツらもボスに挑んで終わりたかったよな…。勝つにしろ、負けるにしろ」


 この場に集まった戦士は、トップギルドから選び抜かれた精鋭たち。本来、ギルドは同盟を結んだ間柄でも無暗に連合PTを結成しない。理由は、手に入ったレアアイテムの分配や攻略情報の扱いなどさまざまだが…、今回は例外中の例外と言えるだろう。


「あらためて言うぞ! 俺たちが集まった理由は1つ! 傲慢の魔王を無敗神話を終わらせるためだ! 今日でL&C6のサービスが終了する。泣いても笑っても、これが最後のチャンスだ!!」


 L&Cの世界にはMMORPGでは定番のGvGが存在しない。そのかわりに存在しているのが"聖戦システム"だ。特定の条件を満たしたプレイヤーがダンジョンのボスとなり、挑戦者を待ち受ける。


 彼らが挑戦しているのは傲慢を司るプレイヤーが守護するダンジョン。このダンジョンは代替わりしてから、まだ1度も陥落していない。ほかの魔王が守護するダンジョンは全て何度か陥落しているので…、現在"L&C最強のプレイヤーは傲慢だ"と言われている。


 そして今日が、サービス終了に合わせて開催された最後の挑戦機会となる。今さら難攻不落のダンジョンを攻略しても、手に入れたレアアイテムが役に立つことはない。それでも彼らが集まった理由は他でもない。L&Cのトッププレイヤーとして"無敗の魔王を無敗のまま終わらせない"ためだ。このまま終われば、名実ともにL&Cの頂点に君臨するのは傲慢の魔王と言うことで終わってしまう。


「そろそろゲートが開くぞ!」


 ジャラジャラと音をたてて、鍵に絡まった鎖がほどけていく。


「よし、皆! 本当にこれが最後のチャンスだ! アイテムの出し惜しみもする必要はない。レアすぎて使えなかった回復アイテムも盛大に使い切るぞ!」

「「「おおぉぉーー!!」」」


 各々が手に持った装備を高らかに掲げる。


 やがて扉は、灰色の霧をはきだしながら開かれ…、


 世界が光に包まれる。


 36人の英雄たちが、専用の戦闘フィールドへと転送される。





 フィールドはさながら舞踏会の会場といった装い。このまま集まったトッププレイヤー同士でパーティーでもひらけそうな舞台だが…、そんな最後は誰も望んでいない。


 選ばれし者だけが入ることを許される専用フィールド。ひとたびココに入れば、同じギルドメンバーであっても助けに入る事はできない。当然、時間内でも全滅すれば挑戦権はなくなってしまう。挑戦者は最高12人PTを3組、合計36人と、それぞれ持ち込んだアイテムを駆使してボスに挑むこととなる。


「よぉ、傲慢。悪いが今日でお前の連勝記録は終わりだ。L&CのトップがC√プレイヤーのままで終わらせることはできないからな」


 そこにたたずむ男は、大よそボスとは言い難い普通の体格をしていた。角が生えている以外は、ほぼ人間と言っていいだろう。


 AI制御のボスは感知範囲にプレイヤーが入れば、即座に戦闘がはじまるが…、この場にいるボスは同じプレイヤーが操作する生きたボス。いきなり飛び掛かるような無粋なマネはしない。


「ようこそ、よくもまぁこれだけのメンツを集めたものだ」


 彼は集まった精鋭に背を向けたまま、惜しむように会場を見渡す。


 見た目も普通なら、物腰もスキだらけ。しかし彼は間違いなくこのゲームの頂点に君臨する最強のプレイヤーだ。迂闊に飛び込めば、精鋭PTと言えども即座に壊滅するだろう。


「こんなナリフリ構わないガチPTで悪いな。だが、これもL√ならではだと思わないか?」

「かまわないさ。L&Cは数で押し切るゲームじゃない。どれだけのメンツを集めても、実力で圧倒すれば済むだけの話さ」


 L&Cはこの手のRPGには珍しく、フレンドリーファイヤーがあり、魔法や操作ユニットにも接触判定がある。大規模な周囲魔法は味方を巻き込むし、相手が中型以下なら一度に攻撃できる前衛の数も限られる。そのため、人数でのゴリ押し戦術はあまり効果をなさない。


「言ってくれるな。さすがはトップだ。しかし…、他の大罪は全員落とした。あとはオマエだけ。基本的には数と装備の質がモノを言うのはL&Cだって同じなんだよ!」

「なにも分かっていないな。そんなことを言っているうちは俺を倒すことはできないぞ?」

「言ってくれるじゃねぇか。まぁそうだよな。結局、それを決めるのは口じゃない、行動だ!」

「さて、名残惜しい気持ちもあるが、そろそろおっぱじめるか!?」

「あぁ、その前に1ついいかな?」


 戦いの火ぶたが切って落とされんとするその時、やっと彼が振り返って告げる。


「な、なんだ…」

「君たちは今日で終わりだと思っているようだけど、俺はこれからもL&Cを続けていくつもりだ。だからさ、君たちL√プレイヤーが頂点に立つことは…、これからも無いよ」

「言ってくれるな。悪いがこの戦いは録画している。今日は徹夜で編集して、無敗の傲慢が負ける姿を全世界に配信してやるぜ!」

「あっそ」

「いくぞ、皆!」

「「「おおぉぉーー!!」」」


 戦いの幕があがる。


 各分野で頂点に君臨するプレイヤーたちが集まってつくられたドリームチームが、同じく頂点に君臨するボスであり同じプレイヤーに勝負を挑む。


 後世に語り継がれる伝説の戦いとなるのは必然だが…


 この戦いも、彼を讃える伝説の1つでしかない。


 そう、彼の伝説はまだ終わらない。




 次世代VRギアに対応したL&Cは…、また新たな物語を綴る。


 第7世代VR対応、MMOアクションRPGゲーム "Law and Chaos online 7" 近日サービス開始!

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