大航宇宙時代 1

 メェクドナルドゥで時間を潰している時に、ミサキがキングのスマフォを横から覗きながら言う。


「あら、また新しいゲームを始めたの?」


「ああ、そうなんだ、『大航海時世だいこうかいじせい』ってゲームで、15世紀半ばから17世紀半ばまでの大航海時代に、貿易をして利益を上げるゲームだぜ」


 金儲けのゲームだと知って、ジミ子が興味を持ったようだ。


「そのゲーム面白い?」


 キングに聞くと、こう答える。


「うーん。俺には合わないかな。金を儲けられるルートが見つかれば、そのルートを荷物を載せて行ったり来たりして、ただ往復するだけの行動になりがちからな。作業が面倒くさいだけのゲームって感想だ」


「なるほどね。そう聞くとあまり面白そうじゃなさそうね」


 キングの説明を聞いて、ジミ子は興味を無くしてしまった。

 僕らも、この説明だと興味を持てず、次の話題に移って行った。


 この日はこの後、みんなで猫喫茶に行って時間を潰す。

 それぞれ紅茶やコーヒーを飲み、ミサキは猫をなで回す。

 のんびりとした時間を過し、夕方過ぎに解散した。



 家に帰ると姉ちゃんが、お酒を飲んでいた。この日は仕事が早く終わったようで、すでに3本ほど空き缶が並んでいる。


「弟ちゃん、今日は何して遊んでいたの~、姉ちゃんに教えてよぉ~」


 酔っ払っていて、かなり面倒くさい状況だ。


「分ったよ説明するね。今日は『動物ノ王国』の経営する猫喫茶に行ってきたよ」


「駅前にあるヤツよね、それでそれで?」


 酔っ払いが相手なので、適当に話をすると、どうやら納得したようだ。


「そっかぁー、他に何かあった?」


「ええと…… そうだ、キングが『大航海時世』っていうゲームをやっていたよ。中世の大航海時代に、船を行き来させて貿易をするゲームなんだけどね」


「へぇ、そんなゲームもあるんだ。もしかして、ただ船に荷物を積んで、輸送するだけ?」


「うん、そうみたい」


「そんな内容で良いんだったら、うちの会社でも作ってみようかしら」


 そう言って姉ちゃんはスマフォを取り出し、どこかへメールを出していた。

 この後、姉ちゃんは酔い潰れて、僕と父さんでベッドに運び込んだ。



 翌日になり、僕らはキングの家で遊んでいると、姉ちゃんからメッセージが飛んできた。


『弟ちゃんから教えてもらったようなゲームを作ったわ。まだ未発表で、面白かったらリリースしようと思うんだけど、良ければちょっと遊んでみて』


 そこにはダウンロード先と見られるURLとQRコードが貼り付けてあった。


「私が始めにインストールしてみるわね」


 姉ちゃんの事を尊敬しているジミ子が、真っ先に動き出す。

 僕らは、まずジミ子の様子を見た後で、遊ぶ事にした。



 ジミ子がゲームをインストールして、アプリを立ち上げる。

 すると『大航宇宙時代だいこううちゅうじだい』というタイトルが浮かび上がる。


「『大航宇宙時代』って何かしら?」


 ミサキが疑問をぶつける。僕は、このタイトルに思い当たる事があったので、説明をする。


「昨日、キングが『大航海時世』ってゲームをやってたじゃない。その内容を僕が姉ちゃんに説明したから、おそらく似た内容のゲームなんじゃないかな?」


 ヤン太が何となくゲームを予想して言う。


「『大航海時世』が、海を航海して貿易をするゲームだから、『大航宇宙時代』は宇宙を渡り歩いて、貿易をするゲームなのかな?」


「それはすげぇ面白そうだ!」


 キングがやや興奮気味に言う。確かにこのゲームは面白いだろう。少なくとも『大航海時世』よりは面白そうだ。



「インストールが終わったから起動するわよ」


 ジミ子がゲームを始めようとすると、キングがこんな提案をしてくる。


「どうせだったらテレビに映して、大画面で見ようぜ」


 キングはどこからかケーブルを取り出し、テレビへと繋いだ。これで準備はバッチリだ。



 ゲームを起動すると、『大航宇宙時代』という、シンプルなタイトルロゴが現われ。続いてこんな注意書きが表示される。


『このゲームは1年間が1分で過ぎていきます。ゲームに出てくる惑星と星人は実在しますが、登場人物は架空です』


「ん? どういう事?」


 ミサキが思わず声を上げる。僕も意味がいまいち分らない。

 メッセージアプリで姉ちゃんに意味を確認すると、こういう答えが返ってくる。


『ああ、それは、ゲームに出てくる惑星は実際に存在していて、そこには本当に異星人が住んで居るんだけど、異星人の写真をそのまま使うと、著作権に問題が出てくるから、異星人の名前と画像は架空という意味ね』


 僕がさらに質問をする。


『異星人の写真をそのまま使えないの? どういう姿なのか気になるんだけど?』


『ええと、チーフ宇宙人の言う事には、一部の異星人の写真をそのまま使うと、18禁になっちゃうからダメだってさ』


『えっ、あー、そうなんだ』


 宇宙人の判断基準がよく分らないが、未成年の僕はそう答えるしかなかった。


「そろそろゲームを始めるわよ」


 ジミ子が注意書きの表示から、ようやくゲームを進める。

 どんな異星人が出てくるのか、楽しみでしょうがない。

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