民住島 2
ちなみに他の野党にも、この
噂によると、
ロボ党が、この民住島を発表して、翌日になった。
僕たちは『生徒のモデル』のバイトとして、朝から姉ちゃんの会社の前に集まる。
『生徒のモデル』という事なので、服装は夏休みなのに制服を着ている。久しぶりの制服は、ちょっと
「弟ちゃんたち、準備が出来たから出かけるわよ」
姉ちゃんに言われて僕らは会社の中に入る。
そして、ピンク色の『どこだってドア』で、別の場所に移動をする。
移動先は、どこかの建物の中だった。広い廊下があり、両側には大きな部屋がいくつも連なっている。生徒のモデルという話だったので、ここは学校なのだろう。
姉ちゃんが、教室らしき部屋のドアを開けて言う。
「ちょっと窓の外を見てみなさい」
僕らはダッシュで部屋に入り、窓際に駆け寄る。
窓から見えたのは一面の青い海。そして、空と雲の他には何も見当たらない。
「すげぇな、海の真ん中だ」
ヤン太がつぶやくと、姉ちゃんが説明してくれる。
「そうね。今は太平洋のど真ん中にいて、これから東京湾に向ってるところなの。この海上都市は移動が出来るけど、あまり早くないのよね。時速15キロぐらいしか出ないの」
「それでも充分すごいと思います!」
ジミ子がやや興奮した感じで答える。
5000人規模の都市が移動できるのは、確かに凄い。今は東京湾に向っているが、その気になれば、どこにでも移動できそうだ。
「さて、まずは『生徒』として写真を撮りましょうか。ちなみに、この都市は建築途中で、まだ出来てない部分も多いんだけど、後でこの都市を見て回りたい?」
「「「見たいです」」」
僕らは大きな声で返事をする。どんな都市なのか見てみたい。
「じゃあ、まずはさっさと撮影をしましょう」
こうして僕たちの撮影が始まった。
海上都市の教室は、大学の講堂のような作りをしていた。階段状になっていて、後ろの方が高くなっている。これなら後ろでも見やすいだろう。
机も広く、普段、僕たちの使っている倍くらいはあった。
この教室は、あまりにも立派なので、特別な教室かと思ったのだが、姉ちゃんに確認したら、ここは高校の一般的な教室になる予定らしい。こんな所に通えるなんて、かなりうらやましい。
そんな教室の中で、授業風景を撮る。
机に座り、教科書を開き、ノートを取っている振りをする。
いつもは真面目に勉強をしないミサキも、勉強の振りだけは、なかなか
10分ほどすると、教室の撮影が終わる。
「さあ次は体育館での撮影よ、その次は図書室ね」
僕らは校内を移動して、体育館へと向った。
体育館は違う階にあったが、校内にはエレベーターとエスカレーターが設置されていて、フロアの移動はかなり楽だ。体育の授業が終わると、短い時間で3階分を駆け上がっている僕らとしては、この学校はずるいと思う。
体育館に着くと、僕らはバスケットボールをしている振りをして、何枚か写真を撮る。体育館はかなり広く、僕らの高校の2~3倍くらいはありそうだ。
「姉ちゃん、僕ら制服で、体操着を着てないんだけどいいの?」
「細かい事は気にしなくて良いわよ。楽しそうに遊んでいる光景が撮れればいいの」
「そういえば、この学校に校庭はないのかな?」
「無いわ、屋外はちょっと風が強すぎるからね。球技とか、かなり難しいわ」
「そうなんだ」
海上都市だと、地上では考えられないような問題が出てくるようだ。
外で遊べないのは、ちょっとかわいそうに思えるが、これだけ大きな体育館があれば、運動不足にはならないだろう。
「体育祭とかも、ここでやるのかな?」
ヤン太が広い体育館を見回しながら言うと、姉ちゃんが答える。
「この都市には4万人規模のアリーナ競技場があるから平気よ。学校の体育館とか、球技大会とかはそこでやると思うわ。保護者の方がいくら押し寄せても大丈夫でしょう」
「マジか…… 体育祭とか地上のアリーナでやったら、どれだけ金がかかるんだろう……」
ヤン太が遠い目をして言う。確かに、この海上都市の学校は恵まれすぎている。僕らも一度で良いから、本格的な球場で何か球技をやってみたい。
体育館での撮影が終わると、次は図書室へと移動をした。
図書室に入ると、ちょっと異様な光景が広がっていた。
明るい開けた空間と、広い勉強机。その周りには本棚が連なり、所々に観葉植物が置いて有る、ちょっとおしゃれなカフェの様な空間だったのだが、不思議な事に、本棚には本が一冊も入っていない。
「あれ? 本が無いぜ……」
キングが周りを歩き回って見たが、やはり一冊も本は見当たらなかった。
その様子を見ていた姉ちゃんが言う。
「海上都市にある施設は、空のまま民住党さんに引き渡すの。この図書室にどんな本を購入して入れるかは民住党さんしだいね」
「全部、使える状態にして渡すんじゃないんだ」
僕が聞くと、姉ちゃんはこう答えた。
「そうね。この学校は公共施設だから、普通に使える状態にまで作っているけど、一般エリアにあるビルは、外側だけ作って、内装は未完成のまま引き渡す予定よ」
「どうして作らないの?」
「ビルの中身をオフィスにするのか、住宅にするのか、お店にするのかは民住党さんの判断に任せるつもりだから」
それを聞いていたジミ子が言う。
「政策や方針によって、街づくりの形も変わってきますからね」
「そういう事。とりあえず、ここでの撮影が終わったら、今日のモデルの仕事は終わりよ。ランチを食べた後に、ちょっと他の場所もみてみましょうか?」
「はい」「わかりました!」
ランチという言葉に釣られて、ミサキがひときわ元気な返事をした。
この後、空の図書室で何枚か写真を撮って、モデルのバイトは無事に終わった。
今まで月や火星では、1から10まで、宇宙人が全て用意していたが、この町はそうでは無いらしい。
民住党の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます