太古宇宙人飛行士説と新たなる説 2
ミサキが『
この番組は、太古の時代に宇宙人がやってきて、原始の人類に文明を教え、ピラミッドやストーンヘンジなどを建設したという『
怪しい番組だが、今日、この番組に宇宙人がやってきて、質問に答えると言う。
どんな風に答えるのか、ちょっと楽しみだ。
「そろそろ始まるわよ」
ミサキがテレビをつけて、音量を上げた。
しばらくすると、『太古の宇宙人』というタイトルが表示され、番組が始まる。
スタジオに、安っぽいクイズ番組のようなセットが組まれていて、中央に居る司会と思われる小太りの人が、マイクを片手にこう言った。
「ようこそ『太古の宇宙人』へ、こんにちは『ジョルジュ・トカロフ』です。今日は特別番組でプレアデス星団の宇宙人様が出演する予定です。宇宙人様にいきなり質問をぶつけても良いのですが、この番組を初めてみる人のために、『太古宇宙人飛行士説』という
セットの奥の方から、白髪のガタイのよい老人が現われた。
ジョルジュが手のひらで、その人物を示しながら、紹介をする。
「『太古宇宙人飛行士説』を世に出した張本人。『エルリッヒ・フォン・デルケン』氏です」
デルケン氏は、笑顔でジョルジュに話しかける。
「やあ、ジョルジュ。まさか宇宙人様から説明が聞けるなんて、こんな奇跡のような事が起こるとは、信じられないよ」
「ええ、私もです。こんな素晴らしい時が訪れるとは思ってもみませんでした。さっそくですが『太古宇宙人飛行士説』について、説明をお願いできますか?」
「『太古宇宙人飛行士説』とは、簡単に言えば宇宙人が昔から地球に来ていて、地球人に様々な影響を与えていたという説です。例えば、旧約聖書に書かれている出来事では、宇宙人はノアに箱舟を作るように言って、その後に大洪水を起こしました。他には、争いの絶えないソドムとゴモラの街を核兵器で滅ぼしたり、ソロモン王が関わったとされる『契約の箱』は、宇宙人の作った何らかの装置だと考えるのが
デルケン氏はとんでもない事を言うが、司会のジョルジュは深く頷きながら答える。
「そうですね。全くもってその通りだと思います。私も10年以上、この番組をやってきて、様々な出来事が宇宙人のしわざだと確認しています」
僕はここで
こんな番組が10年以上続いていたのか……
「もっと『太古宇宙人飛行士説』を語り合いたい所ですが、そろそろメインゲストにご登場頂きましょう。プレアデス星団の宇宙人様です!」
ジョルジュがそう言って、大げさな拍手で宇宙人を向い入れる。
宇宙人は、いつもの調子でやってきて、席に座るとこう言った。
「ヨロシクネー」
「はい、今日はよろしくお願いします」
ニコニコした笑顔でジョルジュが答える。
宇宙人がいる番組は、かなり異質なハズだが、毎週テレビで見ているので、この光景も慣れてきた。
宇宙人が席に着くと、さっそくデルケン氏が質問をする。
「あなたは、聖書について出てくる神や天使についてどう考えていますか? 私は古代の人類が、超テクノロジーをもった宇宙人の事を、神や天使に例えたと思うのですが?」
デルケン氏は、ちょっと核心からは遠い質問をする。
本題の質問をして、下手な答えが返ってくると、『太古宇宙人飛行士説』が否定されて、番組が終わってしまうからだろう。まずは様子見といった感じだ。
「聖書って古い本でショ? ワレワレは1年半前にこの惑星にやって来たばかりだから、それ以前の事は全く知らないネ」
「……ええと、ひとまずCMに入ります」
司会のジョルジュは、無理矢理CMを入れた。
宇宙人が番組に対して、致命的な一言を放った。
番組の冒頭の発言で、いきなり『宇宙人が過去の歴史に干渉してきた』という、『太古宇宙人飛行士説』が完全に否定された。
CMに入り、ヤン太が空気を全く読まない宇宙人に、あきれた表情で言う。
「この後、どうするんだ、この番組」
「いや、どうにもならないんじゃないの?」
ジミ子もやはりあきれた感じで言う。確かにあの一言は致命的だ。
しかしミサキはあきらめない
「大丈夫よ。ここからが『太古の宇宙人』の見所よ!」
……この状況で何とかなるのだろうか?
CMが開けると、番組はジョルジュの質問から始まった。
「プレアデス星団の宇宙人様は、およそ1年半前にやって来たという事ですが、宇宙には、他の宇宙人も居るんですよね」
「居るネ。この惑星の知能と、同じレベルの知的生命体は75惑星。ワレワレ、プレアデス星団と同じレベルの知的生命体は3惑星、居るネ」
「では、そのいずれかの宇宙人が地球にやって来て……」
「報告は受けてないネ。他の宇宙人も来ていないと思うヨ」
「報告漏れという事は……」
「無いネ。情報を共有する協定を結んでいるからネ」
「ええと、CMです」
再びCMを放送する。
「もう、この番組は終わるんじゃないのか?」
キングが絶望的な状況に、思わず本音をもらす。
「いや、まだよ。番組はまだ始まったばかりだから」
ミサキは反論をするが、その根拠はまるで無い。
「うん、まあ、とりあえず最後まで見てみようよ」
見続けようと言ってはみたものの。はたしてこの状況で、何か打開策はあるのだろうか?
CMが開けると、デルケン氏の質問から番組が始まる。
「我々よりも高次元に居る、5次元や6次元の知的生命体の存在は、完全に否定できますか?」
「確認はされていないケド、存在の否定は出来ないネ」
「高次元の存在が、我々に認識されず、世界に何かしらの影響を与えられると思いますか?」
「相手の文明のレベルによるケド、影響を与えられる可能性はあるネ」
「つまり、認知できない存在が、我々の歴史に干渉している可能性も否定できませんよね?」
「ソウネ。可能性は否定は出来ないネ」
「私が
デルケン氏は、
隣では番組が続きそうな事がわかり、
「そうですよね。オーバーテクノロジーが無いと、ピラミッドの建設など、説明がつきませんよね」
安心したジョルジュが漏らした、このひと言がいけなかった。宇宙人がこんな事を言う。
「ワレワレがピラミッドの周辺を調査したら、建築方法を記した文献が見つかったヨ。人類の力だけで建設は可能ネ」
「……そうだ! ミステリーサークルの出現の謎とかありますね。あれは人間には製作が不可能です」
「去年から作られた162個のミステリーサークルの制作者は人間で、全て把握してるネ。作成方法が分らないナラ、作成中の動画を見てみるカネ?」
「あっ、いったんCMです」
番組は再びCMに入る。
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