管理アプリ 3
「弟ちゃん。スマフォのアプリを、インストールしてテストしてくれない?」
姉ちゃんが酔った勢いで作ったアプリを、僕がテストする流れになってしまった。
どんなアプリか不安だが、まあ、スマフォのアプリなので、いざとなったらアンインストールすれば良いだけだろう。
「いいよ。じゃあインストールしてみるね」
僕はアプリのURLを教えてもらい、それをインストールしてみた。
インストールが終わると、スマフォに『管理アプリ』というアイコンが追加された。僕はさっそくアプリを起動してみる。
アプリを起動すると、始めに質問をされる。
『あなたが管理したい物を、一覧からお選び下さい』
管理したい物のリストには、『本棚(書籍)』『冷蔵庫・食品棚』『ソーシャルゲーム』『CD・DVD』『その他を追加』『おまかせ設定』などの項目があった。
僕はとりあえず『本棚(書籍)』を選択して次に進める。すると、次にこんな質問をされる。
『本棚の情報を共有しますか?』続いて『共有しない』『家族と共有する』『友人と共有する』という選択肢が出て来た。
僕は『家族と共有する』を選んだ。
『データがありません。カメラで本棚を撮影して下さい』画面に表示された通りに、僕は自分の部屋に行き、カメラで本棚の写真を何枚か撮った。すると、撮影した画像の書籍が、スマフォの中の本棚に格納される。1分もかからずに、僕が持っている本の登録が終わってしまった。
メニューに追加する形で『続刊の発売予定』と『あなたにオススメの商品』という項目が現われる。
僕は試しに『続刊の発売予定』を押してみると、持っている本の続刊の発売リストが表示される。これは意外と便利だ。
「簡単なのね。私も登録して来るわ」
僕の様子を見ていた姉ちゃんは、そう言うと、自分の部屋に行き写真を撮る。
しばらくすると、僕のスマフォに『
「ああ、これは便利ね」
スマフォをイジっている姉ちゃんに、僕は言う。
「そろそろ仕事じゃないの? 時間大丈夫?」
「あっ、そうだ。たしか冷蔵庫とかの管理もできるから、母さんにもアプリの使い方を教えておいてね。お友達も良かったら薦めてね。じゃあお願い!」
そういって家を飛び出していった。
夏休みで学校の無い僕は、ゆっくりと朝食を取った後、母さんに管理アプリの使い方を教える。
冷蔵庫や食品棚の管理も、本棚と基本的には変わらない。いくつか写真を撮って、それで登録完了だ。
今日は昼過ぎからジミ子の家で遊ぶ。なんでも絵画を売り飛ばしてお金を稼ぐボードゲームを買ったらしい。
ミサキと二人でジミ子の家に行くと、すでにヤン太とキングの自転車が止めてあった。チャイムを押すと、僕らは家の中に入る。
家に入ると、僕らは食堂を兼ねた台所に案内される。ジミ子の話だと、ダイニングテーブルがあり、ボードゲームをするには、ここで遊ぶのが良いらしい。
その部屋に入ると、ヤン太とキングが、昨日買った『
ミサキが不思議に思い、ジミ子に質問をする。
「あれ? あのマンガは読んで良いの? 新品として転売する予定だったんじゃない?」
「出版社が緊急増刷したみたいなの。今日の午前中に本屋に行ったら、凄い数が積んであったから、もう転売はあきらめたわ」
ジミ子がちょっと残念な顔で言う。
ここで、僕がちょっとした疑問が思い浮かんだ。ジミ子に聞いてみる。
「そう言えば、昨日、買ったのは7巻からじゃなかったっけ? 1巻から6巻はどうしたの?」
「本屋に並んでいたから、1巻から買いそろえたのよ。読んで見たら、これが面白いのよ」
熱心に読んでいるヤン太とキングを見て、ミサキが興味を持ったようだ。
「へえ~、後で読ませてよ」
「良いわよ。まずは買ってみたボードゲームをやってみましょう」
ジミ子が買ったボードゲームは、競りと転売がメインのゲームだった。
競りで絵画を安く買い叩いて、高く売り飛ばして利益をあげる。
ただし、絵には相場があり、必ずしも儲かるとは限らない。下手をすると暴落して、高値で競り落とした絵画の価値がゼロになってしまう。そんなルールの中で『最も金を稼いだ者が勝つ』というゲームだった。ジミ子の好きそうなゲーム内容だ。
1ゲーム目。僕らは競りも転売も経験が無い。ジミ子が上手く立ち回り、利益をあげて勝利した。
2ゲーム目。ジミ子に勝たせまいと、競りに熱が入る。結果として、競りに大金が突っ込まれ、仕入れに掛かる費用が膨れ上がった。こうなると競り落として転売してもあまり儲からない。それどころか絵画が暴落して、損をする場面が頻繁に起こる。
結果として、あまり競りに参加していないハズの僕が勝利を収めた。
3ゲーム目。2ゲーム目で、手痛い失敗をしたので、なんとなく緩い雰囲気と相場が出来上がる。ちょっとした
最後のゲームに勝ったヤン太が笑顔で言う。
「いやぁ、面白かったな」
「競りなんて経験した事がないから、難しいな、このゲーム。どうすりゃ勝てるんだ?」
キングが分析をしだした。ミサキが口をとがらせながら言う。
「私はほとんど儲けが無かったわ。どうしてかしら?」
「金を突っ込みすぎよ。利益を計算してから、突っ込むお金を考えなさい」
ジミ子に注意される。これは普段のお小遣いにも通じる所がある。ミサキはもっと考えてからお金を使うべきだ。
「さすがにちょっと疲れたな。休憩しよう」
ヤン太がそう言うと、キングがスマフォを取り出して、こう言った。
「そうだな。ちょっとソシャゲもこなさなきゃ行けないし」
ここで僕は大切な事を思い出した。
「そうだ。姉ちゃんがソシャゲとか色々と管理するアプリを作ったみたいなんだけど、入れてみる?」
「おっ、便利そうだな」「いいぜ、試してみよう」
ソシャゲという単語に、ヤン太とキングが反応した。
二人とも、さっそくインストールしてみる。
ヤン太とキングはアプリを立ち上げ、管理するリストの中から『ソーシャルゲーム』を選ぶ。僕は追加で、同じく『ソーシャルゲーム』を選ぶ。このアプリは色々な事を管理できるが、それは後でみんなに説明しよう。
『ソーシャルゲーム』を選ぶと、次にこんな質問が表示された。
『以下のうち、管理する項目を選んで下さい』
その後に、項目が並ぶ。
『日々の自動ログインと、ログイン報酬の回収』
『キャラクターとアイテムの自動整理』
『キャラクターとアイテムの自動強化(自動成長)』
『毎日の日課のクエストの消化』
ヤン太が次々とチェックをつけていく。
「これは、全部つけた方がいいだろう」
「そうだな。チェックをつけておいた方が良いな」
キングもヤン太に続く。
僕も二人に同意見だ。全ての項目を選択した。
この後、いくつかの具体的な質問が来た。
『コモンなど、レアより
『何か特別なイベントがある場合は、そのイベントを優先的に消化する』
僕は次から次へと細かな質問に答え、設定を終えた。
画面から視線を上げ、周りを見ると、ヤン太とキングも設定が終わったようだ。
「ゲームをやってみようぜ」
キングがスマフォのゲームを立ち上げると、そこで固まった。
「どうしたの? 何かマズい事でもあった?」
僕が聞くと、キングはこう答える。
「日課が全て終わっている。俺のやる事が無いぜ……」
「俺もだ。する作業がない」
ヤン太もアプリを立ち上げると、同じ事を言う。
僕は、何を言っているか分らなかったが、ソシャゲのアプリを立ち上げると分った。次々にこんなメッセージが表示される。
『ログイン報酬、回収しました』
『今日の分の曜日クエスト、消化しておきました』
『マッチング対戦の処理、終わりました。5戦のうち、2勝3敗です』
『毎日できる無料ガチャ。引いておきました。報酬は既に持っているコモンアイテムだったので、処分しておきました』
「……えーと、確かにやることが無いね」
どうやら僕の日々の楽しみは『管理アプリ』に奪われてしまったらしい。
この後、みんなに改めて『管理アプリ』の使い方を説明する。ソシャゲだけでなく、書籍や冷蔵庫の中身を管理できる事を説明すると、ジミ子が感心を持った。
「へえ、書籍も管理できるのね。それに、お姉さんの開発したアプリなら、私も入れてみようかしら」
「それなら私も、アプリを入れてみようかしら」
特に目的の無いミサキも、そんな事を言い出した。
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