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『ねえ、ちょっと地元の本屋を自転車で巡ってみない?』


 ジミ子からLnieでメッセージが飛んできた。

 特に予定の無い僕らは、次の日に空飛ぶ自転車で本屋を巡る事になった。


 朝の10時に集まって、まずは隣の駅の本屋に向う。

 その本屋は結構遠い、普通の自転車なら35分くらかかる道のりだが、空飛ぶ自転車だと直線距離を行けるので、およそ20分くらいで到着できた。昔に比べるとかなり早くなった。


 店の前に自転車を止めて、さっそく中に入る。

 この本屋はマンガのコーナーが多く、地元の本屋に置いていない本も多くある。

 僕らが物色ぶっしょくしようとしたら、ジミ子がこう言った。


「どうやら、私の目的の本は無いみたい」


 ジミ子の目線の先を追うと、『すいません。鬼潰きかいの刃、売り切れです』との張り紙があった。


「このマンガが目当てだったの?」


 僕が聞くと、ジミ子は残念そうに言う。


「そうよ。いま人気爆発のマンガらしいの。本があったら買ってみたかったんだけど……」


 僕とジミ子の会話を聞いていたヤン太が、少し落ち込んでいるジミ子をフォローをする。


「まあ、今日はほかに2店舗に行く予定だから、大丈夫だろう。せっかくここまで来たから、この本屋で本を見ていこうぜ!」


 僕らは店の中を見回り、それぞれが興味のある本を買って店を出た。



 店を出ると、キングがスマフォを見ながら言う。


「ちょっと150メートルほど先に、ボクモンGOのスポットがあるらしい。よっていっても良いかな?」


「いいぜ、ちょっと寄っていこう」


 ボクモンGOとは、ネンテンドーがスマフォで出した、歩き回ってモンスターを収集するゲームだ。

 150メートルは、自転車だとすぐだ。僕たちは少しだけ寄り道をすると、次の本屋へと向った。



 2軒目の本屋にも、ジミ子の目的のマンガは売っていなかった。

 この店で、僕は昔買った漫画の続きが出ていたのに気づく。その本を買っていると、キングが他のボクモンのスポットを近くにみつけたらしい。再びボクモンスポットを通りすぎ、3軒目の本屋へと向う。


 3軒目の本屋は、個人経営の小さな屋だ。あまり品揃えが良いとは言えない。

 しかし、こういう店には、意外と隠れたお宝が眠っているらしい。集央社しゅうおうしゃのマンガの棚には『鬼潰の刃』の7巻から12巻が売れ残っていた。

 ジミ子はそれを見つけると手に取り、すぐさまレジに走った。7巻から買うという事は、6巻までは既に読んでいるのだろうか? 僕はちょっと不思議に思った。



 僕らは本屋巡りを終えると、また別のボクモンスポットを通りすぎてから、いつものメェクドナルドゥに寄り、遅めの昼食を取る。

 ポテトとハンバーガーを食べながら、今日買ってきた本の話をする。

 僕は、まずジミ子に話を聞く。


「ジミ子は『鬼潰の刃』の7巻以降を買ってたけど、6巻までは読んだ事があるの?」


「まったく読んだ事が無いわ」


「……じゃあ、なんで買ったのよ?」


 ミサキが不思議そうに聞いてくると、ジミ子はスマフォのあるページを見せながら言う。


「今、この本は売り切れてて在庫が無いのよ、オークションサイトのメルキャリにかければ、飛ぶように売れるはずよ!」


 ジミ子が珍しく、漫画に興味を持ったと思ったらコレだった。


「どうしましょうかね。1巻からだったら倍ぐらいの値段でも売れそうだけど。7巻からだと、ちょっと売れにくそうだわ。とりあえず定価の1.5倍の値段で出展してみよう」


 スマフォをイジりながら、ジミ子はさっそく商品をオークションに掛ける。

 まあ、この行動は、ジミ子らしい行動かもしれない。



「他のみんなはどんな本を買ったの?」


  僕はメルキャリに夢中になっているジミ子を放っておく事にした。


「俺は『ろくでなし水滸伝すいこでん』っていうヤンキー漫画だ。高校生の不良が、戦乱の中国に転移する話みたいだぜ」


 そう言ったのは、もちろんヤン太だ。ヤン太はヤンキー漫画というと手当たりしだいに買う。おそらく今回も表紙買いだろう。買った本は、劇画調げきがちょうの絵柄で、リーゼントの男が中国風の鎧姿よろいすがたで立っている表紙だった。



 続いてキングが本を取り出しながら言う。


「俺は3軒目の本屋で、こんな本を見つけて思わず買っちまったぜ」


 それはネンテンドー3D$スリーディーダラーズの『ボクモン・ブラック・ホワイト』の攻略本だった。


「よくそんな本が売ってたね」


 僕が半ば感心、半ばあきれながら言う。


「そうだな。10年くらい前のゲームだからな。よく残ってたよ」


 しかし、こんな本が置きっぱなしだなんて3軒目の本屋は大丈夫だろうか? 僕はちょっと心配になった。



「私は、このかわいらしい表紙のマンガを買ったの」


 そういってミサキが見せてきたのは『メイド・イン・アヌビス』というマンガだった。ふわふわとした、絵本のような絵柄で、かわいらしい男の子と女の子が書かれている。


「どんな話なの?」


 僕がミサキに聞くと、ニコニコと笑いながら、こう答える。


「お店の紹介文を読んだら、どうやら『冒険物語』らしいわ。きっと楽しい冒険物よ」


 表紙の絵柄から、きっと子供向けの話だろう。このマンガはミサキに合っているような気がする。



「ツカサはどんな本を買ったの?」


 ミサキが僕に聞いてきた。


「ええと、かなり昔に買ったマンガの続きと、新しく出ていた小説の一巻を買ってみたよ。小説は『十三国記』っていう本なんだけど……」


「あれ? その本、お姉さんが持ってなかった?」


「えっ、そうだっけ?」


「私、借りた覚えがあるよ。かなり昔で、内容は忘れたけど……」


「うーんそうか。重複して、ちょっと無駄になっちゃったかな……」


「まあ、別々に持っていても良いんじゃないの?」


「そうかもね」



 そんな話をしていると、キングが話に割って入る。


「そう言えば、『重複』と言えば、集めたボクモンの整理とか大変だぜ。時々、ゲームやってんだか、倉庫の管理やってんだか分らなくなるぜ」


 その話にヤン太も食いついた。


「俺もソシャゲをやっているけど、似たような感じだ。とにかくキャラとアイテムの管理がめんどくさい」


「僕もそう思う。なんかプレイ時間の半分以上、整理をやっている気がする……」


 僕も似たような意見を言う。するとジミ子はこう言い放つ。


「じゃあ、そんなゲームは辞めちゃえば?」


「いや、それは……」「まあ、辞めようと思うほど大変じゃない」「そうそう、面白い所もあるし……」


 元男子3人はそれぞれ否定をする。ソシャゲはなかなか辞められない。


 この後、元男子は、それぞれのお気に入りのソシャゲの話をした。

 キングがヤン太のやっているゲームと、僕のやっているゲームに興味を持ち、両方に軽く手を出してみるといっていた。ますます整理が大変そうだ。



 話し込んでいると、けっこう時間が経っていた。僕たちは急いで帰路に着く。


 家に帰ると、姉ちゃんが既に家に居て、缶のチューハイカクテルを飲んでいた。

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