ちょっとだけ帰ってきたレオ吉くん 3
学校で授業を終えて、僕らは姉ちゃんの会社へと行く。
今日は、会社でレオ吉くんと合流して、猫喫茶まで歩いて行く予定だ。
ちなみに、姉ちゃんの会社から猫喫茶までは、徒歩で10分と掛からない。
姉ちゃんの会社に着くと、僕は受付のロボットに声を掛ける。すると、会社の中に通された。
階段を上がり、事務所のドアを空けると、レオ吉くんがノートパソコンをいじりながら、ロボットに指示を出している。
仕事をしている所は初めて見たが、こうしてみると、やり手のビジネスマンに見える。テキパキと仕事をこなす姿は、いつもと違って頼もしい。
しばらくして、レオ吉くんは僕らに気がついた。ノートパソコンを閉じて駆け寄ってきてくれる。
「皆さん、お久しぶりです」
両手を広げて近寄ってくるレオ吉くんに、僕らも応える。
「元気そうね」
ミサキがレオ吉くんにハグをする。
「元気そうじゃないか」
ヤン太がレオ吉くんの頭をクシャクシャと撫でる。
「皆さんもお元気そうですね」
レオ吉くんが照れ笑いを浮かべながら、返事をする。
「動物の王国の演説、見たわよ。立派にやっているじゃない」
ジミ子が褒めると、キングもそれに続く。
「派遣会社の方も業績が順調なんだってな。すごいじゃないか」
「そ、そうですか? そうでもないですよ」
レオ吉くんが鼻の下を伸ばしながら、答える。
その様子は、少しだらしないが、心の底から喜んでいるようだ。
この後、少し「最近はどうだった?」とか「仕事を覚えるのが大変」とか、身近な話しをした後、話題がミサキのアホ毛に移った。
そういえばレオ吉くんは、アホ毛になったミサキには、会ったことが無かった。
「
「触りたければどうぞ」
頭を差し出すミサキ。
レオ吉くんは、おそるおそるアホ毛に触る。すると、ぷるぷると震えだすアホ毛。
「すごい弾力ですね。これ、直せないんですか?」
「直せないのよ、どんな整髪剤も効かなかったわ」
「へえ、そうなんですね」
そんな事を言いながら、ぶるんぶるんとアホ毛を弾きまくるレオ吉くん。
猫じゃらしのように動くアホ毛をイジっていると、ちょっと楽しくなってきたようだ。
ややテンションが上がってきたレオ吉くんに、ロボットが水を差す。
「ソロソロ、猫喫茶の視察の時間デス。ご準備をお願いしマス」
はっとするレオ吉くん。
「そうでした。そろそろ出発しないと」
ノートパソコンを鞄に詰めると、鏡の前に立って身だしなみを整える。
しばらくすると、身支度が出来たようだ。
「さあ、でかけましょう」
レオ吉くんに言われて、会社を出ようとした時だ。
ボクとミサキはいつものように手を繋いでいるのだが、レオ吉くんはそれが気になったみたいだ。
こんな事を言い出してきた。
「ボ、ボクも手を握って良いですか?」
その申し出に、すぐに答えるミサキ。
「うん、いいよ。みんなで手を繋ごう」
ミサキはレオ吉くんの手を握り、三人で並んで猫喫茶へと歩き出した。
歩いて居る最中のレオ吉くんは、ちょっと浮かない顔をしていた。
手を繋いで歩く事は、予想より大した事は無かったらしい。
ゆっくり歩いて10分近く、僕らは猫喫茶の店の前にきた。
そこはマンションの一階で、元はコンビニだった場所だ。
うちの駅前では最近、コンビニが3件ほど乱立した。
2件あったコンビニに、さらに3店舗が加わった形になる。
系統の違うチェーン店ならまだ話しは分かるのだが、同じ系列のチェーン店が目と鼻の先に2件ほど、新たに建ててしまう。
うちの駅にそこまでの需要は無い。結果として、2店が生き残れずに潰れた。
ここは、そのうちの1件だ。
僕らは、まず、外から中の様子を覗き込む。
店の作りはガラス張りのコンビニのままだが、中は喫茶店のように改造されている。
大きめのテーブルに、ゆったりとしたソファーが置いて有り、なかなか良い雰囲気だ。
普通の喫茶店と違うのは所々に猫の遊具がある事だろうか、キャットタワーが外から見える位置に設置してある。
そして、猫喫茶なので、もちろん猫も居る。
猫といえば、気まぐれで、普段はだらけているイメージがあるが、ここの猫は違った。
玄関で直立不動で整列して、国王が来るのを待っている。
「レオ吉くん、あれを見て」
僕は店の外から軍隊のように並んでいる、猫達を指さす。
「いつも通りで構わないと言っておいたんですが……」
あきれながら店の扉を開けるレオ吉くん。
やはり国王という肩書きは凄まじいようだ。
僕らもおそるおそる、レオ吉くんの後を着いて店の中へと入っていく。
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