ボクモンGO 2
授業が終わり、放課後になると、いつも通りハンバーガーチェーンのメェクドナルドゥに移動を開始する。
メェクドナルドゥへの道のりは短く、話しながら歩くとあっという間に着くのだが、この日は違った。
「ちょっとコッチへ30メートルほど寄り道して良いか?」
キングが途中で寄り道をリクエストしてきた。
「まあ、30メートルだったらいいぜ」
ヤン太がOKを出すと、キングは住宅地の道をフラフラと歩いていく。
そして、およそ30メートル。民家5件分ほど移動すると、立ち止まり、スマフォをかざして何かをしている。
少しすると作業が終わったのか、小走りにこちらへ戻ってきた。
「悪い悪い、待たせたな」
時間にすると1分くらいだろうか。大した時間ではなかったが、この作業は何度も繰り返す。
メェクドナルドゥに着くまで、5~6回は繰り返したと思う。
そしてメェクドナルドゥに着くと、キングは頼んだメニューに手を付けず、スマフォを見ながら作業をし始めた。
「何をしてるの?」
僕がそう質問をすると、こんな答えが返ってきた。
「全国の『メェクドナルドゥ』は『ボクモンGO』の『ポクストップ』に認定されているんだ。『ポクストップ』に行くと、新たなモンスターがもらえたり、アイテムがもらえたりするんだぜ」
「そうなんだ」
僕が返事をすると、他にもキングは色々な事を説明してくれるが、興味がないせいか全く頭に入ってこなかった。
「しかし、これは面倒だな」
ヤン太が軽い
「そうね。ココに来るまでに、いつもの1.5倍くらいの時間が掛かったわ」
「俺を置いて行っても良いぜ」
キングは気にしないように言うが、その意見にジミ子が反対する。
「ちょっとあの状態は放っておけないわね。あまりにも無防備よ。交通量の少ない住宅地だったから良かったけど、車が来たら危ないし」
まあ、確かに危ない。僕もその点を注意する。
「そうだね。スマフォを見ながらの移動は危険だと思うよ。
でも、なんで歩きスマフォが危ないって言われてるのに、こんなゲームが出たんだろう?」
「危ないかもしれないけど、儲かると思ったんじゃない。利益を優先したのよ」
ジミ子が核心をつく。このゲームに関しては、実際に事故がある程度起こっているのに、特に対策もせずサービスが提供され続けている。儲かっている間はやめないだろう。
「うーん。何とかならないかな?」
僕が解決策をみんなに聞くが、キングは平気な顔をしながら答える。
「まあ、大丈夫じゃないか、気をつければ」
これが普通のプレイヤーだったら問題はないと思う。だが、ゲームをしているときのキングの集中力はちょっと異常だ。この状態が続いていると、そのうち事故に巻き込まれてもおかしくない。
「止めちまえば良いんじゃないか?」
ヤン太が投げやりにそう言うと、キングが首を横に振るいながら答える。
「さっき、ちょっと課金したから、そのアイテムが無くなるまでは待ってくれ」
課金をしてしまったか……
これはズルズルと長引いて、続いてしまうパターンだ。
しかし困った。
どうして良いものか、考えを巡らせていると、ミサキが意外にも良い意見を言う。
「自転車に乗りながら、そのゲームをやったら良いんじゃない?」
「自転車の方が危ねーだろ」
ヤン太が真っ先に否定するが、ミサキは反論をする。
「まあ、普通の自転車なら危ないけどさ。私らは空飛ぶ自転車を持ってるじゃん。
空にいれば、車も、他の歩行者にも気をつけなくて済むよ」
「おっ。確かにその通りだな」
ヤン太を初め、僕らは感心をする。
確かにあの自転車なら空中に留まれる。空中でなら、ゆっくりとスマフォを見ていても問題はない。
「そこまでしなくても平気だと思うぜ」
「いや、心配だよ。キングはゲームをしていると周りが見えなくなるから」
楽観的なキングに、僕が心から心配している事を言うと、どうやら伝わったようだ。
「分かったよ、じゃあ外でやる時は、空飛ぶ自転車に乗っている時だけにするぜ」
こうして、キングはボクモンGOを控えるようになり、問題が解決したように見えた。
後日、僕はコンビニへ買い物に行く途中に、かなり遠くに居るキングを見かけた。
キングは空飛ぶ自転車でボクモンGOをやっているみたいで、空中に止まりスマフォをイジっていた。
問題の無さそうな行動に思えるが、実際は違った。
上空に居るキングの真下には、人がたくさん群がっていて、空へ向けてカメラをかざしている。
大半はスマフォをかざしているのだが、中には一眼レフに望遠レンズを付けてた人も、何人か居た。
……おそらくキングのパンチラ写真を狙っているのだろう。
僕は直ぐにキングに電話でこの事を伝えると、キングは逃げる為に走り出す。
すると真下に群がっていた人達も、後を追うように移動を開始した。
その様子は、ちょっとしたアイドルの追っかけに見えなくもない。
空中ならば問題にならないと思っていたのだが、そうでは無かったみたいだ……
その日、姉ちゃんにこの話しをしてみた。
すると、思わぬ方向に話しが進んでしまった。
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