動物ノ王国 2

 姉ちゃんに動物の国の情報を聞いたら、こんな答えが返ってきた。


『Webページを作ってあるから、まずはココを覗いてみて』


 そういってアドレスが記してある。

 僕はそのページへと飛んでみると『動物ノ王国』というタイトルが表示された。


 そして『レオ吉くんからのご挨拶』『国の概要』『司法制度』『国の歴史』といったメニューが現れた。



 メニューを見るなり、ジミ子が言う。


「『国の歴史』ってあるのかしら?」


「たしかに、今日発表されたばかりの国だからね、とりあえず見てみる?」


 僕がそういうと、ジミ子はうなずいた。


 まずは『国の歴史』を覗いてみる。

 リンクをクリックすると、そこにはこんな写真があった。


 国王のレオ吉くんが工事用のヘルメットを被り、ツルハシをもたされた写真が出てきた。そして『このページは工事中です』との文字が表示される。



「まあ、そんな事だと思ったぜ。次は『司法制度』を覗いてみないか?」


 キングに促され、今度は『司法制度』のページに移動した。


 すると、『基本的にはイギリスと同じ、そちらを見てネ』とイギリスの司法省へのリンクがあるだけだった。

 作りが雑すぎる。もしかして、これは姉ちゃんが作ったのではないだろうか?



「ま、まあ『国の概要』を見てみましょう。ここは流石に情報があるでしょう」


 ミサキが淡い期待を込めて言ってくる。

 まあ、たしかにこのページに情報が載ってないとマズイ。


 僕は『国の概要』のページに移動する。

 そこには国の情報が載っていたが……


『国土 月面上』

『首都 月面上』

『人口 たくさん。主に犬と猫』

『産業 特になし』

『国王 レオ吉くん』


 と、非常に簡素な情報があった。


 ヤン太があきれながら言った。


「5行だけかよ。しかも『人口 たくさん』って酷いな」


「うん、ひどいね」


 僕は同意せずには居られない。この適当さ加減は間違いなく姉ちゃんの仕業だ。



「とりあえず、最後の『レオ吉くんからのご挨拶』を見てみる?」


 僕がそう言うと、ミサキがすぐに反応する。


「見てみたいわ」


「でも、初めての挨拶があれだったぜ」


 ヤン太が感想を漏らすと、ジミ子も同じような感想を言う。


「あまり期待はできないかもね」


 とりあえず僕は『レオ吉くんからのご挨拶』のページに移動してみる。すると、そこには埋め込みの動画があるだけで、文章などは一切無かった。


「これだけ?」


 ジミ子が半ばあきれた声を上げるが、キングがなだめながら言った。


「まあ、みてみようぜ」


「再生を押すね」


 僕が再生ボタンを押すと、国王のスピーチが始まる。


「えっ、あっ、はい。今回、動物ノ王国の国王に任命されたレオ吉です。

しがない動物園のライオンとして生きていましたが、この度、ほぼ人間として生まれ変わりました。


 今まではオスでしたので、メスとして生きて行くのは不安もあります、人間のように生きて行くのも不安だらけです。


 ですが、国王と任命され、国作りを少しでも任されているので、弱音を吐いている暇などありません。

 少しでも国民が自由に生きていける国を目指します。


 国王としての権限はあまりありませんが、国の象徴としてふさわしい態度が取れたら良いと思います」


 そして深々とお辞儀をして、そこで動画は終わる。

 すこしたどたどしい部分もあるが、そこには立派な挨拶があった。



 ミサキが動画を見た感想を言う。


「立派じゃない、レオ吉くん」


「確かに立派ね。世界中の政治家に見せてやりたいわ」


 ジミ子が皮肉を込めて言い放つ


 確かに、こういった姿勢の人が居れば、国は良い方向へと動いて行きそうだ。



 Webページを一通り見終わった僕は、みんなに質問があるか聞いて見た。


「何か姉ちゃんに聞きたい事あるかな?」


「まあ、ほとんど情報は得られなかったよな」


 ヤン太が苦笑いをしながら答えた。


「とりあえず、人口について把握してるか聞いてみようぜ?」


 キングに言われて、僕はその質問を姉ちゃんに送る。

 すると直ぐに返事が返ってきた。


『だいたい、猫が14万5千人。犬が16万2千人、牛と馬が1400人、熊が30人。その他480人。そしてライオンが1人だよ』


 なるほど、人口はちゃんと把握しているらしい。


『その情報はWebページに載せないの?』


 そうメッセージを送ると、


『そっか、そうだよね。載せたよ』


 と返事が返ってくる。Webページを再び見てみると、今度はちゃんと人口が書かれていた。



「Webページに直ぐに反映できるんだったら。もうちょっとウチらで指摘して情報を充実させた方がよさそうね」


 ジミ子に言われて、僕らは次から次へと指摘をする。

 すると『国の概要』ページがほんの少しまともになった。


『国土 月面上。5年後をめどに3万7千平方キロメートルに広げる予定。<オランダや、九州ほどの大きさ> 現在は火星の一部を間借り中』

『首都 月面上。まだ建設中。南極エイトケン盆地の中を予定』

『人口 猫 14万5千人 犬 16万2千人 牛と馬 1400人 熊 30人 その他 480人 ライオン 1人』

『産業 現在は無し。将来的には、アルミニウム、チタンなどの資源を利用した産業』

『国王 レオ吉くん』


 まだまだ情報が足りないが、建国途中なので仕方が無いだろう。


「ふう、疲れた」


 ミサキが大きくため息をつく。

 ここまでの情報を引き出すために、意外と時間が掛かってしまった。


「とりあえず今日はここまでにしましょう。後で何か気がついたらメールを投げるわ」


 どうやらジミ子もヘトヘトらしい。今日はここで解散となる。



 一日が終わり、みんなと別れて家に帰る。

 すると、家が大変な事になっていた。

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