マイ自転車 1
ある昼休み、姉ちゃんからLnieでメッセージがきた。
『前に乗った空飛ぶ自転車、色々とテストが終わって要らなくなったから使ってみる? 電動アシストとか無いから、使うなら格安でゆずるよ』
そのメッセージに僕は即座に反応した、返事をすぐさま入力する。
『使って見たい、欲しい』
『プロテクターも付けて、一台3万円でどう? 弟ちゃんの友達の分もあるけど、どうする?』
僕はみんなに聞いて見る。
「あの、テストで使った空飛ぶ自転車が余ってるみたいなんだ、3万円なんだけど、みんなは欲しい?」
質問を投げかけたものの、返事は決まっている。
「欲しい」「Yes」「欲しいわ」「ちょうだい」
僕は姉ちゃんにメッセージを返した。
『みんなも欲しいらしいよ』
『分かったわ、あさってに届くように発送するから家に居てね。あと、このアプリをスマフォにインストールしておいて。マニュアルはメールで添付するから、友達にもよろしくね』
しばらくすると、姉ちゃんからメールが届いた。僕はそれをみんなに転送する。
このアプリというのは、もちろん『空飛ぶ自転車』に関するアプリだった。
メールのマニュアルを読んで見ると、どうやら『空飛ぶ自転車』に従来の自転車の鍵は無いらしい。このアプリを入れた状態でスマフォを自転車にかざすか、手のひらの生体認証が鍵の代わりとなるようだ。
自転車の鍵としては少し大げさな気もするが、これだけセキュリティがしっかりしていれば盗まれる事はないだろう。
後日、家で自転車の配送を待っていると、ロボットが自転車に乗って空からやってきた。
そして僕の事を確認すると、いろいろと手続きをする。それは、スマフォのアプリの登録だったり、手のひら認証の登録だったり。
一通り、手続きが終わるとロボットは自転車とダンボールの箱を置いて帰って行く。ダンボールには落下
僕はプロテクターを着けると、引き渡された自転車をさっそく漕いでみる。
ただ、目的などは無く、とりあえず近くのコンビニや駅、ハンバーガーチェーンのメェクドナルドゥなどを巡回して戻ってきた。
サーキット場とは違い、一般道は意外と
ある程度の高さに上がれば、電線は気にならないのだが、そこまで上がるのはなかなか体力がいる。4階建ての建物の高さくらいに上がらないといけないからだ。
また、距離が近いと、高度が上がりきる前に到着してしまう。近所のコンビニだと、わざわざ空を飛ばなくても普通の自転車の方が早いかもしれない。ここら辺はちょっと使い勝手を考える必要がありそうだ。
しかし、色々と制限はあるが、やはり空を飛ぶのは気持ちよいし、乗っていて楽しい。
この日は意味も無く、近所を走り回った。
空から見る風景は、まるで別の街に迷い込んだかの様だ。
ただ、一つ問題なのは、人の目が気になった。
まだ空飛ぶ自転車は珍しく、多少はしょうがないかもしれない。
後日の昼休み、僕らはこの自転車について相談をする。
「せっかくだから週末に自転車でどこかに行かないか?」
ヤン太が僕らに言ってきた。
「異議無し」「いいよ」「Yes」「いいわよ」
満場一致で賛成だ。ジミ子が腕を組みながら、次の議題を出す。
「さて、問題は行き先ね」
「ハンバーガーチェーンのメェクドナルドゥはどうだ?」
キングが提案するが、それをヤン太が否定した。
「さすがに近すぎないか? 徒歩でも行ける距離だし」
「そうね、どうせならちょっと遠出した方がいいわよね」
ミサキが笑顔で言ってきた。僕らもそれに同意する。
するとミサキが、こんな場所を提案してきた。
「ほら、小学生の遠足の時にいった、あの山はどうかな?」
記憶を思い出しながらジミ子が言った。
「あそこは確か、バスを使って行かなかったっけ?」
「……そういえばそうだったかも?」
どうやらミサキはあまり考えていなかったようだ。
僕がスマフォで調べて見る。
「ええと、距離は25キロくらいあるね。標高は200メートルくらいか。意外とキツいかも」
そう言うと、ミサキは反論してくる。
「大丈夫だって、そのくらい行けるよ」
確かに体力のあるミサキは大丈夫だろうが、僕らはちょっと不安だ。
「初めてだし、もうちょっと近場で様子を見ないか?」
キングから慎重論が飛び出した。それにジミ子も賛同する。
「私もその方が良いと思う」
ヤン太が腕組みをしながら、行き先をひねり出す。
「すると、隣町のショッピングモールか、3駅先の映画館ぐらいか」
「ショッピングモールはちょっと近すぎるかも」
ジミ子が言う。確かに隣町のショッピングモールは歩いて40~50分。自転車だと20分くらいだろう。
直線で行ける空飛ぶ自転車だと、15分も掛からないかもしれない。
すると、映画館しか残らなかった。
「映画館で良いんじゃないかな」
僕がそう言うとみんなも納得したようだ。
「そうね、じゃあ映画館にしましょう」
ミサキがそう言うと、キングが新たな問題を持ち出した。
「映画は何を見る?」
「そもそも今は何が上映しているの?」
ジミ子に言われて、慌ててスマフォで上映スケジュールをチェックする。
普通は見たい映画があるから映画館に行くのだが、今回は完全に手段と目的が入れ替わってしまった。
僕らは、適当に見る映画を決めると、そこから逆算してサイクリングの予定を立てた。
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