第12回目の改善政策

 初めに明石市立天文科学館が映し出され、続いていつもの二人が映し出される。


「本日は第12回目の改善政策の発表です。今週もよろしくお願いします」


「ヨロシクネ」


 挨拶が終わると、宇宙人が福竹アナウンサーに話題を振る。


「先週の火星の刑務所の覚えてるカネ?」


「ええ、もちろんです。おおむね好評のようですね、政府にも、受刑者にも」


「ソウネ、評判がイイネ。アト、地上の刑務所に空きが出来たカラ、また新たな取り締まりをしても大丈夫だネ」


「またまた、悪い冗談を…… もしかしてまた新たに犯罪を規制するんですか?」


「ソウネ、ワレワレが新たに規制を追加するヨ。言っておくケド、前回の取り締まりは法律を遵守しただけだからネ、法律を作ったのはワレワレでなく人類だからネ」


「まあ、たしかにそう言われてしまうと、面目めんぼくありません……」


「今回の取り締まりは、たぶん大丈夫ヨ」


「本当ですか? お手柔らかにお願いしますよ」



「今週はコレネ」


 嫌がる福竹アナウンサーの顔を無視して、宇宙人がテロップを取り出すと、そこにはこう書かれていた。


『児童虐待、イジメ等の強化』


「児童虐待の強化ですか? 犯罪はかなり細かく取り締まりをしていたようですが、これに関しては今まであまり監視してなかったのでしょうか?」


「この惑星では。よく親が子供を叩くじゃナイ」


「ええ、そうですね。あまり良くない風習ですが、ありますね」


「ワレワレはそれがしつけなのか虐待なのか区別がつかないのヨ。行為としては同じでショ」


「なるほど、たしかにそうかもしれませんね。虐待をしていても躾といって言い逃れをする親もいますし」


「ソウネ、それで今までは見過ごしてきたんだケド、これからは指標を取り入れて監視をするヨ」


「指標ですか? どのような指標です?」


「基本的に二つの指標を取り入れるネ、一つ目は叩いた時の衝撃度、二つ目はストレス値、どちらかが基準値以上になるとイジメや虐待と判断するネ」


「なるほど、わかりやすいですね」



「試しに衝撃度のテストをするネ」


 そういって宇宙人はシリコン製のような赤ん坊の人形を出してきた。


「叩いてみてネ」


 宇宙人が福竹アナウンサーに実験をうながす。


「分かりました、では行きます」


 福竹アナウンサーはボクサーのグローブを渡され、それを装着する。

 そして赤ん坊をぺちりと叩く、しかし何も起こらない。


「叩き方が弱いネ、もっと強く叩くネ」


「分かりました、行きます」


 今度はかなり強めにベチンと叩くが、やはり何も起こらない。


あざを作るか、骨折させる勢いで殴ってネ」


「かなり強くないと作動しないのですね。では、行きます」


 福竹アナウンサーは本気で殴る、すると拳が当たる直前に、赤ん坊はアーマーに包まれた。

 全身を金属っぽいアーマー覆われ、その見た目はロボットのようなアメリカンコミックのヒーロ、アイロンマンに酷似している。


「これで赤ん坊は強化されたネ、危害はもう加えられないヨ、大丈夫ネ」


 福竹アナウンサーが試しにアーマーを素手で小突く。するとコンコンとかなり堅そうな音がした。


「かなり堅そうですね」


「ヘルメットみたいなものだヨ、ライフル弾にも耐えるネ」


「『児童虐待の強化』という話でしたが、強化するという話は監視の強化だけではなく、赤ん坊を強化するという話だったんですか……」


「被害者側を強くすればもう大丈夫ネ。アト、虐待が確認されると警察に通報が行くからヨロシクネ」


「わかりました。それではそろそろお時間です。アンケートと行きましょう」



 あのアーマーは少し大げさな気がするが、確実に虐待から身を守れるだろう。


 僕は、「今週の政策は『よかった』」「宇宙人を『支持する』」に投票する。


 しばらくすると集計されたアンケート結果が表示される。


『1.今週の政策はどうでしたか?

   よかった 98%

   悪かった  2%


 2.プレアデス星団の宇宙人を支持していますか?

   支持する 95%

   支持できない 5%』



「それでは来週もお会いしましょう」


「マタネー」


 こうして番組は終わった。

 児童虐待の監視はとても良い事だ。

 ガンガン取り締まって欲しい。

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