僕らの決闘 2
僕たちと
ウェイトレスさんが注文を取りに来て注文を取る。その答えはもちろん『ケーキ食べ放題』を10人前だ。
このケーキの大食い競争は、何故かミサキが仕切りだした。
「制限時間は食べ放題の時間の60分ね。いくつ食べ終わったかで競いましょう。
食べかけの物はカウントに含まない。ただ、一つのケーキを何人で食べても構わない。つまり食べかけでも他の人が引き継いで食べる事は許される。そんなルールでどう?」
「上等だ、そのルールで行こう」
白木くんがミサキのルールを承諾すると、ウェイトレスさんが食べ放題の取り皿を持って来た。
「さあ、取りに行くわよ」
ジミ子とミサキが真っ先にケーキコーナへと向う。その後をヤン太とヤンキー軍団が、あとからゆっくりと僕とキングが追いかける。
食べ放題のケーキは写真と比べると小ぶりだったけど、どれも美味しそうだった。
定番のイチゴのショートケーキ、やわらかそうなチーズスフレケーキ、色とりどりのフルーツのタルト、クレープと生クリームをを重ねたケーキ。他にもかなりの種類が並べてあって、とても全種類はたべられそうにない。
「どれでも良い、早く取れ」
白木くんは手前からケーキを取り、すぐに座席へと戻る。
「おれも負けられねぇ」
ヤン太も適当にケーキを取り、座席へと帰って行った。
一方キングは、食べ放題のコーナーを一通り眺めて、
「シュークリームだったら、ほとんど
そういって、シュークリームのみをいくつも皿にのせた。
人は甘い物を食べると満腹感を得るという話しを聞いたことがある。
僕はあまり甘くなさそうなコーヒーゼリーと抹茶ケーキを取る。
ミサキとジミ子はどれが「美味しそうか」とか、「これは見たことない」とか、楽しそうにケーキを選んでた。たしかに、楽しんで食べるのが一番かもしれない。
そしていよいよ勝負に入る。
ヤン太とヤンキー軍団はものすごい勢いでケーキを食べていた。
キングはシュークリームを一口で食べている。僕もそれなりに急いで食べる。
ミサキとジミ子はゆっくりと味わって食べる。時には取り合ったケーキを分け合って半分づつ食べていたりして、とても楽しそうだ。
順調に食べ進められるかと思ったのだが、食べ始めて15分もすると、みんな手に持つフォークがピタリと止まった。
ヤン太は5個目のケーキ、白木くんは6個目の途中で全く口が動かない。
キングはシュークリームを9つほど飲み込んで、そこでもうあきらめたらしい。スマフォをいじっている。
量的にはそんなには食べていないはずだ。普通の食べ物だったら、まだまだ食べられる量のはずだが、やはり甘い物はすぐ満腹になり、そんなに多くは食べられない。
みんなは限界だと思うが、僕はあまり甘くない物をえらんで食べていたので、まだ余裕がある。
6個目を食べ終え、あと1~2つくらいならなんとかなりそうだ。
40分が過ぎたころ、みんながぐったりとしている。僕もケーキを食べていて、こんなに疲労するとは思わなかった。
キングがポツリとつぶやく。
「テレビの大食い選手権、テーブルの下にバケツを置いて、吐きながら食べているという噂は本当かもな……」
「そうっすね、そうだと思います」
白木くんが何故か敬語でキングのつぶやきに答えた。ヤン太がそれをからかう。
「いや、世の中はひろい。吐かずにそのまま食っているかもな」
「なんだと、キングさんが間違った事を言うはずねーだろ」
白木くんが反論する。もはやどちらがキングの味方だか分からない。これは完全にキングの容姿にやられてしまっている。
「白木、ちょっとそこを見てみろ」
ヤン太はテーブルの一角を指さす。そこにはケーキを食べ続けるミサキとジミ子の姿が……
僕はどれだけ食べたのかが気になり聞いてみる。
「二人でいくつ食べたの?」
「ええと二人で、12個かな?」
ミサキが視線を合わせず答えた。これは嘘をついている時に見せる表情だ。
するとヤン太が間違いを訂正した。
「19個だろ、数えていたぜ」
「19個…… マジか……」
白木くんは
あきれているとミサキは僕の食べかけのケーキに目を付けた。
「それ、まだ食べてないな。一口もらっても良い?」
僕はもう食べられる状況ではない。
「うん、いいよ。一口と言わず全部食べちゃって」
「ありがとう、もらうね」
ケーキはあっという間に消えて無くなった。
ジミ子がミサキの間違いを指摘する。
「それは3個目に食べたよ、ほら、残り時間が無いからまた取りに行かないと」
「そうだね、じゃあ行ってくる」
そういってミサキとジミ子は再びケーキを
「もう、降伏するぜ。無茶苦茶だ、ありゃ」
白木くんは心が折れてしまったらしい。
まあ、無理もないと思うけど……
こうして僕らのチームが勝利した。
「さて、俺たちが勝ったわけだが、どうする?」
ヤン太が僕らへなにやら質問を投げてきた。
「えっ、なにがどうするの?」
僕が分からず答えると、説明をしてくれる。
「決闘に負けたら、勝者の言う事を聞く決まりなんだ。もちろん無茶な要求はできないし、敗者側には拒否権がある」
「へぇ、そうなんだ」
僕が相づちをうつと、ジミ子が会話に割り込んできた。
「ここのケーキ屋の近くに、気になっていた
「えっ、お前らまだ食うのか?」
あきれる白木くん。もちろん僕もヤン太もあきれ顔だ。
そこへミサキが笑顔で言い切った。
「甘い物は別腹って言うじゃない」
先ほどまで食べていたのは何だったのか……
……白木くんは、深く考えるのをやめたらしい。
「いいぜそれで。ただし、また決闘をやろうぜヤン太」
「ああ、いいぜ。何でも勝負してやらあ」
爽やかな笑顔で返事をするヤン太。だが次には思わぬ方向に流れ弾がとんできた。
「その時にはキングさんも
「えっ、ああ、まあ。暴力的じゃなければいいぜ」
不意をつかれて、おもわずOKを出してしまうキング。
「よし!、じゃあ買ってくる」
白木くんは満面の笑みで大福を買いに行った。
こうしてヤンキー軍団と別れ、僕らはお土産を持たされて帰路につく。
大福はきっと美味しいのだろうけど、今は要らない。甘い物を見るのすら嫌だ。
帰りの道の途中でミサキが満足そうに言う。
「いやあ、食べたね。満足、満足」
「あれだけ食べたら太るよ」
僕が指摘すると、ミサキが反論してきた。
「宇宙人の
まあ、たしかにあの薬があれば太らないだろう。
すると、なぜかジミ子が突然さけんだ。
「あ、しまった!」
「どうかしたの?」
僕が質問をすると、ジミ子が申し訳なさそうに言う。
「色々とあったから、栄養摂取阻害薬を渡すの忘れてた」
「い、今から飲めば平気でしょ」
焦るミサキ、だが現実は無慈悲だった。
「あれは食前に飲まないといけないのよ……」
ジミ子が聞きたくない事実を告げる。
ミサキはすこし
「そう、そうね。帰り道は歩きましょう。一駅くらい歩けるわよ。健康の為にね」
健康の為と言っているが、どうみてもダイエットの為だろう。
こうして僕らは30分ほど歩くはめになった。
後日、ミサキとジミ子は太ったらしい。
僕は簡単な計算をしてみたところ、あの日、もし食べた分のカロリーを消費するには9時間ほど歩かなければいけなかったようだ……
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