お詫びのプレゼント 1
体毛を失った翌朝、僕はいつものようにミサキを向いに行く。
ミサキの身支度を終えて、学校に向う途中、ミサキが話しかけてくる。
「腕の毛とか剃った?」
ズボラなミサキにまさか気づかれるとは思わなかった。
しょうがないので、昨日の一件を話す事にした。もちろん下の毛の事は避けて。
「ああ、うんムダ毛処理をしたというか、どちらかというと姉ちゃんにやられた」
「もしかして、あの宇宙人の出している永久脱毛クリーム?」
「うん、そうだよ。脇毛とか無くなったよ」
「痛かった?」
「いや、全く痛くかなったよ。気がついたら溶けるように無くなっていた」
「そう、普通は大変なんだから、剃ったり、ガムテープみたなので剥がしたり」
「ガ、ガムテープ。それは痛そうだね」
「ちょっと触らせてよ」
「う、うんまあ良いよ」
「じゃあ、失礼して」
通学路の途中で、僕のガクランとシャツのボタンを外し、脇めがけて手を突っ込んできた。
「ちょ、ちょっと」
「ここら辺かな」
ミサキは僕の脇をまさぐる。たまらず声を上げた。
「ふひゃ、ふひゃひゃひゃ……」
「久しぶりに聞いた、その笑い声。しかしツルツルね」
「ふひゃひゃ、も、もうやめてよ、ふひゃ」
そんな事をやって居ると、ヤン太に見つかった。
「お前らなにやってんだ?」
「ツカサが脇の処理をしたって、さわってみなよ」
「どれどれ」
ヤン太まで僕の脇を触り出す。
「ふひゃ、ふひゃひゃふひゃひゃひゃ、ふひゃひゃひゃ……」
僕の涙が枯れるまで、さわり尽くされた。
途中からは脇の処理などどうでもよくなって、僕を笑わす事に夢中になっていた気がする。
ようやっと学校に着き、授業を受ける。
1時間目が終わり、スマフォを確認すると姉ちゃんからメッセージが届いていた。
「昨日はごめんね、埋め合わせをするから」
そう一言だけ書かれていた。
どうせたいした事はないだろう。そう思い、僕は普段どおりの生活を送る。
5時間目の体育の授業が終わり、教室に戻ると例のピンク色の『どこだってドア』が教室の隅に立てかけてあった。
僕は見て見ぬ振りをする。これは何か嫌な予感しかしないが……
やがて6時間の国語の授業が始まるとき、墨田先生がやって来て、こう言った
「今日の6時間目は特別授業だ、またプレアデス星団の宇宙人さんがやってくるので失礼の無いように」
墨田先生は携帯電話を取り出し、どこかへ電話を掛ける。
しばらくすると例の宇宙人が、ドアをガチャリと開けてやってきた。
「ヤア、君たち、元気にしてたカナ?」
気さくな挨拶をしてきたが、今度はどのような事をされるのだろうか。
前回は、クラス全員が酔っ払った状態にさせられた。
深刻な被害は出ていないが、二日酔いに悩まされたり、警察に補導されたり、尻が腫れ上がった人もいる。
クラスを見渡してみると、警戒している人物は2割、残りの8割は楽観的な感じがする。
そんな雰囲気のクラスで、墨田先生の説明が始まった。
「この間の実地調査の件で、宇宙人さんは思わぬ迷惑をかけたので、すこしお詫びがしたいそうだ」
続いて宇宙人が喋る。
「この間は大変だったソウダネ。たいした事ないんだケド、チョットしたプレゼントを贈ろうかと思うヨ」
「なんだろう?」「どんなものだろうか」「今度はいくらもらえるんだろう」
クラスのヒソヒソ声をよそに宇宙人は話しを続ける。
「本当にたいした事ないんだけど、秘書はプレゼントにナルと言ってね。キミタチは地球を見たくないカネ?」
僕が手を上げ質問をする
「僕らは常に地球を見ていますが、どういう事なんでしょうか?」
それに宇宙人は真面目に答える。
「アア、言い方が悪かったカナ。ワレワレの月軌道上の銀色の月から、地球を見たくないカネ?」
「見たいわ!」「行ってみたい!!」「連れってくれ!!」
クラス全員から歓声が上がった。
「エエト、行きたい人は手を上げてネ」
宇宙人は多数決を取るが、もちろん満場一致で挙手をしている。
墨田先生もちゃっかり手を上げている。
「デハ、先生も含めて連れて行くヨ、トリアエズ移動に備えてトイレを済ませてきてネ」
「「「はーい」」」
興奮しならが、僕たちは返事をした。
まさかの宇宙旅行のプレゼントだ。
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