第1回目の改善政策 1
宇宙人に支配されてから1週間が経った。
僕らは、いつも通りの日常生活を送るが、今日は初めて『改善政策の発表』がある。
この日が来るまで、僕たちは政策に関して討論を重ねたが、結論は出せなかった。
宇宙人が、何を問題とし、何を考え、どのような対策を施すのか想像ができない。
想像できない理由は分かっていた、宇宙人に関する情報がまるでないからだ。
少しでも情報があったなら、そこからなにか傾向が分かったかもしれない。
……よく考えたら「ビールと唐揚げが好き」と「塩辛の見た目が苦手」いう、全く役に立たない情報だけは僕にはあった。
学校の授業がはじると、どことなく教室には緊張感が流れている。
今日の『宇宙人の政策の発表』は誰しもが不安なのだろう。落ち着きの無い生徒が多い割には、無駄話は聞こえてこない。
そして授業は昼休み前の4時間目に入る。
4時間目の授業は通常の時間の半分ほど、かなり早めに切り上げられた。12時のテレビ発表にまにあわせる為だ。
僕たちは早めの昼食を取らされると、座席につかされ、正午まで待機をする。
やがて時計の針は12時近くを示し、担任の
12時になると『第1回
画面には、いつもメインの司会を務めている女性の
「この放送は、東経135度に
日本、韓国、北朝鮮、パラオ、東ティモールに向けて放送されます。
なお、人口が一番多いという理由で、本放送は日本からお送させていただきます」
宇宙人は国ごとの正午の時間に発表を行うと言っていた。
日本と同じ時間帯の国はこれだけあるらしい。
「なお、この放送の通訳は、宇宙人から提供された通訳機によって同時放送しております」
宇宙人の技術がもう使われているようだ。
放送の世界では、もう言語の壁はなくなったのかもしれない。
春藤アナウンサーは原稿を読み始める。
「それではこれからプレアデス星団の宇宙人による『第1回目の改善政策の発表』を行いたいと思います」
画面には宇宙人は出てこない。
淡々とニュースキャスターが原稿を読み上げ、それを人々に伝えるだけのようだ。
そう思っていたら、
「それでは中継です、中継先の
いきなり中継が入ってきて、カメラが切り替わる。
カメラは変わった建物を映し出した。
灰色の建物があり、その横には灯台のような高い塔がある。
塔の形がかなり特徴的で、頂上部分には天文台のようなものが乗っていた。
また塔のとなりにある建物には半球状のドームがある。
そちらは天文台では無く、おそらくプラネタリウムだろう。
周りを見ると、森に囲まれた丘陵地のようだが、どこだかまるで分からない。
教室内がざわつく。
「なんだここ?」「どこだ?」「誰か知ってるか?」
だれも知らないようだ、答えは返ってこなかった。
しばらくすると、またカメラが切り替わった。
そこは壁一面ガラス張りの展望台で、おそらく先ほどの建物の灯台のような部分にあると思われる。
辺り一面が見渡せるその場所に、会議室で使われるような安っぽい長机が置いてあり、そこに例の宇宙人と福竹アナウンサーが並んで座っていた。
「はい、こちら『明石市立天文科学館』からです。
これから『第1回目の改善政策の発表』を、お送りします」
そう言われても、僕は場所がわからない。
スマフォで『明石市立天文科学館』といれると、住所はどうやら『兵庫県明石市』らしい。
なぜ、そんなところから中継するのか、僕には全く分からなかった。
「ところで何故、ここから放送するのでしょうか?」
どうやら現場に居る福竹アナウンサーも、なぜここから放送するのか分からないらしい。
宇宙人にマイクを差し出して、質問を投げかける。
「コノ場所が、君たちの国の時間の中心だよネ?」
「ええ、そうですね。この場所は『
「つまり、コノ国の中心なワケでショ」
「……いえ、違います、日本の中心は東京ですね。
おそらく都庁がある新宿あたりか、政治なら霞ヶ関あたりが中心になると思います」
「エッ!、時間の中心が国の中心になるんじゃないのカネ?
グリニッジ王立天文台は世界の中心じゃ無かったのカネ?」
宇宙人には理解ができないらしい。軽く混乱していた。
「ええとですね、この惑星では時間の中心が特別な意味があるわけではなくてですね……」
福竹アナウンサーが丁寧に宇宙人に説明を始めた。
どうやら宇宙人と人類の間には、考え方に大きな
この調子だと、宇宙人が作成した政策は大丈夫なのだろうか……
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