第14話 裏クエスト 上
「おはよー」
と言っても返ってくる声はない。
父は現在出張中で家にはいない。まぁ、父は年中海外に出張中なので家にいるのは長い休みの時期だけだが。
昨日知り合ったらゴスロリ少女、ルナとゲームの中で夜中までずっとクエストをこなしていたので気づいた時は夜の二時。ルナは「今日は学校はない」と言っていたが実はニートだったりしてな。「今日は」ではなく「今日も」のだったりしたな。
そんなくだらない事を考えながらゆっくりと準備をしていく。
現在の時間は朝の9時。大遅刻だ。でも、遅刻するならいつ行っても同じだよね。
■
くっ!ちゃんと9時の時点で学校に行っていればよかった。
結局学校に行ったのは昼休み。その時間なら先生もいないだろうと高をくくっていたのだが…
なんで居るんだよ!それも教育指導の村上が!
その後は空いてる教室でみっちり一時間怒られて、反省文まで書かされた。それに加えて今日から一週間早朝指導だとよ。朝遅刻しないように。
帰りには村上から大音量の目覚ましをもらったよ。とほほ…。ゲームもほどほどにしよ。
■
「今日は散々でしたよ」
俺は今グリーンさんに愚痴を聞いてもらっている。まだルナは来ていないようだ。
「まぁ、起きれなかったリクが悪いね。ルナは大丈夫だったのかな?」
「ルナは今日は学校ないって言ってましたよ」
「へ~、開港記念日か何かかな?」
それから10分ほど待ったがルナが来る気配はない。
「来たら連絡してもらおっか。先に今日のクエストに行こうか」
「そうですね。どっちにしろログインしたら通知きますしね」
俺たちは一旦広場を離れ、ポータルエリアに向かった。
■
この間ミノタウロスを倒した洞窟。その最深部に新たなクエストが発生していた。
クリア時にもらえる経験値も多く、すでに他の人たちがいるかもしれないが。
案の定、最深部には多くのパーティーが集まっていた。1,2,3…。全部で12パーティーがこの最深部でクエストの開始を待っている。かなり多くのパーティーが集まっているが、最深部の一割も埋まっていない。
今日のクエスト名は『地底湖の守護』。クエスト中のみ最深部にある地底湖の中島に咲く一つの花を現れる敵から死守する簡単なクエストだ。そしてこのクエストは複数パーティー可の合同クエストだ。
こんな話をしていたら残り開始時間まで一分をきっていた。一体俺は誰に話しているのだろう。
10
9
8
7
6
5
4
3
最深部の壁全体が赤く光りだし、「WARNING」の黄色い文字が表示される。
2
1
グゥゥワアアァァァァ!!
俺たちが陣取っている地底湖の周辺より、少し離れた壁際にそいつは現れた。
ドラゴンだ。
出現したドラゴンは飛竜ではないが、体躯が良い地竜だ。体全体を茶色い鱗に覆われ、四本足で立っている。その足には鋭い爪が生えそろい、妖しい光を宿している。頭部には二本の角を持ち、口からは妖しげな真紅の炎が顔をのぞかしている。
俺たち全12パーティーの遠距離攻撃ができるものは一斉に遠距離系スキルを発動させる。地竜に向かって飛んでいく色鮮やかな魔法、投降武器たちは見事に地竜に当たったが、HPゲージはほんの少し減っただけで、すぐに回復してしまった。
『なっ!』
各パーティーから驚きの声が漏れる。俺たちはミノタウロス戦で経験しているが、まだボス系にあったことの無い者からしたら驚くことだろう。現に俺たちもそうだったのだから。
俺たちの攻撃を物ともしない地竜が口をガバッと俺たちに向けて開ける。そこから放たれたのは広範囲を埋め尽くす真紅の炎だった。近距離攻撃を試みようとしていた複数のパーティーの前衛たちは炎の渦に巻き込まれて死んでしまった。幸いこのクエストは開放クエストなので復活してからこの戦いに再度参加することはできるが、デスペナルティ中ではかえって邪魔になってしまうだろう。
地竜の放った炎が消えると、残ったパーティーの前衛たちが一斉に攻撃を仕掛ける。
俺もレベルを上げたことで覚えたスキルを使ってみる。
「加速!」
先に地竜に向かっていたプレイヤーを追い越して、一足早く地竜のもとに接近する。そこですれ違いざまに「一閃」を入れ、元の後衛のいる位置に戻ってくる。俺が戻ったと同時に他のプレイヤーが地竜に攻撃を始めた。やはり一人の攻撃では大した攻撃にはならないが、複数人でかかれば徐々に地竜のHPゲージは削れていっている。
俺の「加速」はかなり有用なスキルだが、その分燃費が悪い。何度も連発して使うことはできないのだ。
ちびちびとマナポーションで喉を潤おしながら、戦況を確認する。
後衛が遠距離攻撃が打ち込めるように、前方だけは開け、左右後ろからプレイヤー達が攻撃している。いわゆる「タコ殴り」ってやつだ。地竜のHPゲージもそろそろ半分をきる。
地竜のHPが半分きったときそいつは現れた。
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