第3話 ログイン
気がつくとそこは宿屋の一室だった。
窓からは中世のような街が立ち並び、空には雲が流れている。建物と建物の間を鳩がうろついており、窓のしたの通りをいろんなプレイヤーが歩いていた。馬車が石畳の上を走り、遠目に見える広場に床を構える露店からは賑わう声が聞こえてくる。
ここが理想郷、「エデン」か。
「思ってたより普通な世界だな……」
「理想郷」なんていうから、ちょっと期待していたんだけど。雲の上に浮いた神殿とか、そこらじゅうを天使が飛び回ったりとか。ちょこっとガッカリした感がある。
まあ、テレビでそんなことは無いていう情報は仕入れていたんだけどね。第一、そんな世界観だったら、ゲームじゃないとか言って一生居座る人とか出てきそうだし。そもそも1日のゲーム時間っていうのがあるから無理なんだろうけど。
「しかし、本当に本物そっくりだな……」
僕はログインした宿を出て広場に来ていた。噴水に近づき、手を伸ばして噴き上がる水に触れてみた。冷たいし、ちゃんと濡れた感覚もある。すごいな。
確かに最新のVR技術を駆使した世界と言われるだけのことはある。
さて僕もその世界に来たわけだし、まずは自分の情報を確認するか。
「えーっと、『ステータス』っと」
目の前に半透明の黄色いステータスウィンドウが現れる。これは通常、他人には枠しか見えないらしいので、持っているスキルやアイテムを探られる心配はない。もちろん許可すれば閲覧できるようにすることもできる。
呼び出したウィンドウには僕のパラメータや装備、取得スキルや所持アイテムなどが表示されていた。なるほど、こうやって確認するんだな。
─────────────────
■STR【ストレングス】(筋力)■■■■
物理攻撃力などに影響する。
■VIT【バイタリティ】(耐久力)■■■■
物理防御力などに影響する。
■INT【インテリジェンス】(知力)■■■■
魔法攻撃力などに影響する。
■MND【マインド】(精神力)■■■■
魔法防御力、回復魔法力などに影響する。
■AGI【アジリティ】(敏捷度)■■■■
素早さ、物理攻撃回避率に影響する。
■DEX【デクステリティ】(器用度)■■■■
命中率、生産成功確率などに影響する。
■LUK【ラック】(幸運度)■■■■
全ての確率、主にクリティカルヒット、アイテムドロップ率に影響する。
■リク レベル1
【木天使ミカエル】
■称号;
【始まりの若者】
■装備
・武器
木の剣
木の盾
・防具
皮の服(上下)
皮の靴
・アクセサリー
なし
■使用スキル(10/10)
【早熟】【剣術の心得】
【俊敏力UP(Lv1)】
【紙一重】【気配察知】
【調合】【鑑定】
【跳躍上昇】【探求心(Lv1)】
【体力UP(Lv1)】
■予備スキル
【万能の創造】
■アイテムボック(1/30)
【ポーション(緑)】×10
■所持金
1000G
─────────────────
僕の場合、見事に数値が横並びしていた。いやまあ、それが【木天使ミカエル】の特徴なんだけどね。
あれ? 予備スキルのところにある【万能の創造】ってなんだ? キャラメイクのときはここは「なし」ってなってたはずだけど……。
ピロリン。
不意に電子音のような音がした。周りを見回してみるが、反応している人たちはいない。アレ?
ピロリン。
まただ。よく見ると僕のステータスウィンドウの端にある、「メール」という枠が点滅し、②と出ている。
その「メール」をタッチすると新たなウィンドウが開いて、二通のメールが届いているのが確認できた。さっきのはメール着信音か。
2件とも『【マジック&ソードクエスト】へようこそ!』という運営からのご挨拶メール。これは読まなくてもいいのか?と思いつつウィンドウをタッチする。
『ようこそ【マジック&ソードクエスト】へ。リク様はVRMMOのゲームは初めてですか?初めての方は下のリンクへどうぞ!』というのもの。
『おめでとうございます。リク様はこの【マジック&ソードクエスト】の限定スキルの抽選で見事【万物の創造】を手にしました。スキルの細詳については後に分かることになるでしょう。では楽しいしVRゲームの世界を満喫してください!』という内容だった。【万物の想像】は運営の抽選に当たったものらしい。
僕はさっそくスキルの詳細を見るためにステータス画面に戻りスキル欄から【万物の創造】をタッチする。
────────────────
〈スキル〉
【万物の創造】 ★★★★★
Lv1:薬草の創造
Lv2:???
達成条件:???
Lv3???
達成条件:???
Lv4???
達成条件:???
Lv5???
達成条件:???
────────────
今は薬草が創造出来るらしい。創造と生成は別物なのかな?でもLv2以降が達成条件も不明なんじゃ使い勝手がいいのか悪いのか分からないな。まぁゲームを進めていけば分かるって運営からのメールにも書いてあったしな。
僕はシステムウィンドウを全部閉じて当たりを見回す。噴水広場には所狭しと露店が開かれていた。防具を売っている露店や、武器を売ってる露店。それからポーションとかの道具を売ってる露店もあり様々だ。露店を開いていないプレイヤー達は自分の目的の露店を探して声をかけてみたりしている。そんな数々の露店が開かれている噴水広場だが、その中でも一段と目立っている露店がある。いや、別に悪いように目立っている訳じゃないんだと思うんだけどさ。たぶんね。露店の名前は『ユウリの道具屋』。これは鑑定スキルを使うと露店の上の方にテロップが出てきた。そんな目立ってる店に僕は恐る恐る近寄ってみる。店は屋台のような作りでテーブルにはポーションや魔除けなどフィールドに出るには欠かせない必需品が並んでいた。露店の幌を支える柱には魔物の頭蓋骨などが飾られている。これが悪目立ちする原因だな。何やら黒いオーラを放っている気がする。気がするだけだけど。
「いらっしゃい。お兄さん何かお探しものかい?うちはポーションから魔除け。縁結びのブレスレットなど数多く揃えてるよ」
少々変な訛りが入ってはいるが日本語だ。見た目は屋台のバイトでもしてそうな高校生、大学生位の若い筋肉質な男性だった。男も鑑定スキルで見てみる。
■プレイヤー名:ユウリ♂ Lv12
【光天使ガブリエル】
なるほどなるほど。これで名前と性別とレベルと種族が分かるわけか。レベルは最初の街にしては高いほうかな。これなら次の街へ行けばいいのに。
「どうしてこんな最初の街にいるんですか?」
「それはこのゲーム始めたばっかの人にアドバイスをしながら商品売りつけるためやな」
ユウリは本音をぶっちゃけて話してくれた。少しは有耶無耶にしていいことだと思うんだけど。特に理由はさ。このあとも少し話してフィールドで戦う時のアドバイスをしてくれた。少し商売の話になると目が本気になって怖い人だけど中身はいい人だな。
そんな感じで少しフィールドでの戦い方や、スキルの使い方。そして商売のことについて教えてもらった。そして教えてもらったお礼として『ユウリの道具屋』で手ごろな価格で手に入れられる両手剣を売ってもらった。なけなしの1000Gを全部使って。
「これからも『ユウリの道具屋』をひいきにな~」
そう別れ際にユウリさんに言われて噴水広場を後にした。
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