無くなった世界の後で

ただの鳥

第1話いつかの記憶

「ねえ、なんで『まほう』はなくなったの?」


 記憶にあった、どこかの部屋。

 その部屋で少年は顔に霧がかかった様な、大人にそんな質問をした。


「魔法ねぇ……」


 少年は大人はすぐに答えられると思っていた様でソワソワしている様子を見た大人は、少し考えた後に少年に対して。


「あんまり上手くは言えないけど、強いて言うなら神様が使えなくしたんじゃないかな」


「かみさまは人を助けてくるんじゃないの? なんで使えなくしたの?」


 応えられた答えに対して、少年はすぐに疑問に感じたことを聞いた。

「今までは、魔法を使って楽していた人に対して、あえて魔法を取りあげる――」そこで大人は一旦言葉を区切り「神様が人に対して試練を与えてるのかもね」曖昧な表現をして少年に伝える。

「試練かぁ……」納得したのか、していないのかよく分からない表情をして一言吐くと、しばらく考え込んだように沈黙が続く。

 そんな少年に対して、大人は気を利かせたのか少年に問題を出した。


「魔法が使えなくなって、こんな世の中だけど、数年後、数十年後はどんな世界になってると思う?」


 少年は真剣に、その問題にしばらく頭を悩ましていると。


「んー、難しいなぁ。すぐには思いつかないや」

「だったら、明日までの宿題ね。しっかり考えてきなさい」


「まるで先生みたい」と少年が冗談みたいな声で呟くと「まるでじゃなくて、先生だからね」と軽く少年の頭に拳骨をいれた。


 何かをひたすらに考えてる少年、大人はその少年を見て微笑んでいるが、どこか悲しい顔をして見つめていた。

 そんな大人に気づいたのか、少年は大人を見て。

「先生!」

「ん、どうしたの」

 少年は目を輝かせ、大人に、自分に誓うように。

「ぼく、大人になったら旅にでる!」

「そう、良い夢じゃない。頑張って叶えなさい」

「うん、そしたら僕は――



 ここで夢は途切れた。

 

 この世界は、魔法が使えなくなった、出来損ないの世界。僕は旅の記録を記録していくだろう。

 もし、世界が魔法をわすれてしまっても、この記録は残していく。

 たった一人孤独に魔法を使う"彼女"との大切な大切な約束。

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