第六十五話 新・部隊編成
もし、ノルド兵が王都に攻め込んで来たとしても、すぐに僕達中等部の生徒達が直接戦闘になるとは限らない。
それでも、やれる事はやっておかないと、後でやっておけば良かった、とは思いたくない。
「レクシーさん。これは皆んなの人生を変えてしまうかも知れないんですけど、やっておきたい事があるんです」
「やっておきたい事?……ですか。危険な事ですか?」
「いえ、皆んなは何もしなくていいです。ただ、、、その、、一時的にでも僕の仲間というか、僕の部隊の一員になって貰う必要があるんです」
「お前の部隊に?ダメだダメだ!ボクはアレクシアさんに一生ついて行くって決めてるんだ!お前の下になんてつかないぞ!」
話が進まないなぁ。
でも、ヒルデさんにもこれをやっておいてもらわないと困る。
「ヒルデさん。これはレクシーさんの為でもあるんです。それに、もし、これでヒルデさんがレクシーさんの役に立てば、後で褒めてもらえるかもしれませんよ?」
「な、何!ボクがアレクシアさんの役にたてるのか!それなら何でもする!何をすればいい?奴隷か!お前の奴隷になればいいのか!」
「違います。他の人達が何事か、と驚いてますから変な事を大声で言うのやめて下さいよ。ちょっとしたスキルを使いますから、皆さんには少しだけ操作をして貰いたいんです」
あまり、僕のスキルは、一部とはいえ知られるのは避けた方が良いのだけど、このメンバーならまだいいだろう。
一部、雷好きな奴とかいるけど、この際だから仕方ない。
純粋な戦力として見れば有能だしね。
チームのメンバー皆んなに近くに集まって貰う。
一度に説明してしまった方が早いだろう。
「部隊編成」
部隊編成 新規部隊2
部隊に登録する人物を指定してください。
アレクシア・ツヴァイク Lv3
ブリュンヒルデ・エーデルマン Lv2
ミスティルテイン=ハップ=エンギル Lv2
ウルリーカ・クルル Lv5
クラウディウス・ツェーリンゲン Lv2
ディートフリート・ブライトクロイツ Lv2
ヴィルフリート・パウルゼン Lv1
・・・・・
部隊編成でこのメンバーを部隊に登録してしまう。
フィア達家族の部隊とは別の物が作れるのが、分かったので学校用のを作って混じらないようにする。
後で部隊の名前を家族用とか学校用とかに変えておこう。
最初はレクシーさんからにする。
「あら?これは、、、、リーンハルトさんがやっているのですね?ふふふっ、本当にリーンハルトさんの部隊に参加するのですね。はい、許諾を押しましたよ」
「ああ、レクシーさん、説明無しに進めてしまってすみません。今ので僕の部隊に入って貰いましたので、後でこれを使って何をするのか説明します」
「ええ、リーンハルトさんの事は信じてますから、何でも仰ってください」
話が早くて助かります。
次はヒルデさんだ。
「むっ、これは何だ?これが、、、そうか、これをすれば奴隷になるのだな?よし!アレクシアさんの為にお前の奴隷になってやるぞ!えいっ!」
素直に押してくれるのは良いんだけど、周りの人から冷ややかな目で見られるのは僕なんだから、もう少し抑えてほしい。
「次はミスティルテインさん、いきますね。許諾する、というのを押してください」
「うむ、押した。我が主人よ。これでようやくアールブの民の積年の恨みを晴らす事が出来る」
「いや、色々待って。我が主人って何?」
「今のが契約の儀式。今まではこれが無かった故に主人は我と共に動けなかった。だが、今となっては我は主人の剣となろう、、、あ、いや、剣は苦手なので、弓矢となろう」
やめてよもう。この2人が僕の奴隷とか従者とか言い出すと、その前のレクシーさんまでそういう扱いをしたみたいに見えるじゃないか!
………レクシーさんが奴隷………。
いやいやいや、なんだかとてもいけない響きに聞こえるからこれはダメなやつだよ、きっと。
なんでだ?ヒルデさんだと全く問題ないように聞こえるのに。
次はリーカか。
リーカは主従契約済みだし、家族用の部隊編成にもう入っているけど、連絡やスキルのやり取りも他の皆んなと合わせていた方がいいから、重複するけどここにも登録してしまおう。
リーカは信頼して貰っているし、2度目だし問題なく登録出来るだろう。
「あれ?私は既にリーンハルトくんの奴隷になってるので、、、あ、、、違った。家族用の部隊に入っているので、もう登録しないでもいいんじゃないですか?」
リーカ、君もか!
言い直した方だって、十分衝撃の内容になってないか?
これで、3連続奴隷にしたみたいに聞こえるじゃないか!
既に7割5分に達してるじゃないか!
レクシーさんをチラッと見ると、ニコッと笑顔になった。
それは、どういう笑顔?
真意を聞くのが怖いんですけど。
次はカミナリ野郎だ。
クラウディウス・ツェーリンゲン。
こんな名前だったっけ?
まあ、いいや、こいつなら奴隷になるとか言いださないだろう。
「待て!俺も奴隷にしようと考えているなら、やめておいた方がいい。俺は貴様になんか従わんぞ!」
「そんな事考えた事もないよ!と言うか他の人達も奴隷にしている訳じゃないからね!ほら、許諾を押して!」
流石にこいつを奴隷にするとかの噂が立つのは、断固として阻止しないといけない。
まあ、他の人達ともそんな噂はやめて貰いたいけど。
その後は、ポーン組、つまり剣術学科の人達だ。
ディート先輩とか他にもいるけど、流石に問題発言は出てくる事はなく、無事全員部隊に登録出来た。
魔法学科の人達が皆んなおかしいんだよ!
「あう、あの、部屋に入れてください」
「ダメだダメだ。今は大事な話をしてるんだ。関係無い者は入らないでくれ」
ん?この声は、確か。
「あ!リン様!私ですぅ〜、話を、話をざぜでぐだざい〜」
「ああ、その人は僕の知り合いなので、部屋に入れてあげてください」
ベルシュが何故か泣きながら入ってきた。
「どうしたの?」
「リンざま〜私もこちらのチームに入れてください〜」
「え?クラスの方はどうしたのさ」
「チーム分けをクラスでしたんですけど、私1人だけ余っちゃいました………。だからこっちに入れてください!お願いです!もう私の居場所はリン様しかないんです!」
「分かった、分かったから、そういう表現はやめてくれるかな。変な誤解を生むから」
これって、入れてあげないと、いけないのかな。
というか、僕が決めていい事じゃないよ。
「あの、レクシーさん、こんな人が来たんですけど、ダメですよね」
「なんで、ダメな方に誘導するんですかー」
「ちょい、ベルシュは黙ってて。で、どうでしょう?」
「ふふ。リーンハルトさんの中ではもうこの方を入れる事で決まってるみたいですね。わたしは異存はありません。リーンハルトさんの決める事にすべて従いますよ?」
「え?いやいや、それはダメですよ。レクシーさんがリーダーなんですから」
「何言ってる!お前がリーダーだぞ?」
ヒルデさんは熱でもあるのか?
いつもレクシーさん命の人が、何を言ってる、はこっちのセリフだよ。
「リーンハルトさんがリーダーですよ?言ってませんでしたでしょうか」
「聞いてません………。変更は」
「だ、め。わたしが決めたんですから従ってくださいね?」
うわぁ、ずるいなぁ。こんな時は従ってって。
そんな笑顔で言われたら従うしかないじゃないかよ。
結局、僕がリーダーで、そのリーダー権限でベルシュもこのチームに入ることになった。
フリーデとクリスが抜けている分の補充の意味もあるから丁度いい。
「ありがとうございますー。リン様の下僕として一生ついていきますー!」
また、奴隷かよ、という目で見ないで!
まずはこのメンバー全員に家族シェア+を使ってチャットスキルを配布する。
使い方も教えて、皆んなで会話が出来る事を確認する。
家族のとはチャットルームが違うので、リーカの時のように話が混じる事も無くなる。
「この部隊編成と言うのを入れたのは、これだけの為ではないのでしょう?」
「ええ。このチャットはまあオマケみたいなものですね。本当の目的はちょっと時間が掛かります。今日、皆んなが家に帰った頃に成果が出るかもしれません」
この後に簡単な説明をして、今日は帰宅となった。
「リーカ。ちょっと家に帰る前に寄りたいところがあるんだ。付き合って貰っていいかな?」
「はいぃ!デデデデデートですね!」
「違うよ?熊に会いに行くんだよ」
「………あまり、ロマンチックではないデートですね」
「だから、デートでないって」
王都冒険者村に来た。
ここの地下に住んでいるクマのリュリュさんに用事があった。
「こんにちは、リュリュさんいますか?」
「んお?おお!リーンハルトか!遊びに来てくれたか!ほら中に入ってくれ。おや?こちらのお嬢さんは、、、ああ、いや、そのなんだ。リーンハルト、キミは人族にしては若い方だったな、、、。だが、あまり増やしすぎて、刺されたりするなよ?」
「なんの話ですか!この子はリーカって言って、僕の……ああ、新しい家族です、、、」
なんの話も何もリュリュさんの言っている事そのままだった………。
クマさんに女性関係で心配される10歳男子………。
いや、もうすぐ誕生日だし!10歳と11歳とじゃあ全然違うもんな!………違うよね?
横で「うへへぇ、家族ですぅ」とかクネクネしながらリュリュさんに挨拶しているリーカは放っておいて、ここに来た目的をリュリュさんに話す。
「ふうむ。なるほど。キミの能力というか、才能というか、そう言ったものには毎回驚かされるものがあるな!我が誇り高き銀の毛を軽々と切っただけでは無く、そのような力まで持っているのだからな」
「別に才能とかではないですよ。そういうスキルをたまたま持っていたってだけなんですから」
「何を言っているんだキミは。たまたま持っていたのがそのスキルなら、それをたまたまで持ててしまうのがキミの才能なんじゃないか!十分自身を誇っていいと思うよ」
友にそう言って貰えるのは嬉しいよ。ありがとう。
リュリュさんの家の外に出る。ダンジョンの中だけど。
そこで、僕とリュリュさんが向かい合って、お互い構える。
そして、僕はギベオンソードを持っている。
そう、僕はリュリュさんと闘いに来たんだ。
経験値譲渡スキルをオンにして、リュリュさんと闘った経験値の20%を部隊に登録した皆んなに配って、あのメンバーのレベル底上げを狙っている。
詳しいやり方とか、スキルの内容は部隊メンバーには教えていない。
ただ、放課後に勝手にレベルアップする筈だから、もしそうなったら僕のせいだ、とだけ伝えてある。
そして、リュリュさんを相手に選んだのは、前にここでリュリュさんと手合わせをして貰った時に僕自身のレベルが上がった為だ。
軽く、本当に軽く、、、腕が取れそうだったけど、、、2回斬りつけただけでレベルアップした。
レベル7になってからは、何をしてもレベルアップはしなかったのに、リュリュさんと闘ったら一気に上がったのは、ギベオンベアーの経験値が物凄く高いんじゃないかと思ったんだ。
「じゃあ、行きます。その、怪我させちゃったらすみません」
「痛いからすぐ治して欲しい。おそらくこの間のようなくらいのダメージが入らないと、経験値にならないだろう。だから、遠慮なくやってくれ。こっちもそれ相応に戦闘にならないといけないだろうから、本気でいくぞ!本当の本気で行く。でないと死んでしまう」
お互い手を抜くとレベルアップには繋がらないと思うから、ある程度本気で闘う必要がある。
まあ、きちんとした手合わせになればいいんだと思う。
問題は僕とリュリュさんのどちらもちゃんとした師匠に付くこともなく、誰からも学んでいないから、手合わせの仕方が分からないという点が問題と言えば問題だ。
リュリュさんは銀色の毛に思いっきりマナを流し込んで強化している。
僕もマナは大量に込めたら多分スパスパ斬っちゃうから、少しだけにして斬り込んでいく。
「ぐおっ、うぐぅ、ちょっ、ちょっと待った!待った!待てって!うがあああ!待てと言っとろうに!はあはあ、キミは強すぎだ!少しくらい手を抜けって!」
「それじゃあ、経験値にならないですよ。あ、じゃあ、こうしましょう。部隊編成」
部隊編成 新規部隊3
部隊に登録する人物を指定してください。
リュリュ・ハーララ Lv7
あれ?自分でやっておいてなんだけど、クマも部隊編成出来るんだ。
いや、まあ、魔物って言ってもエルツ族みたいなものか。
そもそも魔物ってくくりが間違ってるんだろうな。
家族とも学校とも違うから3つ目の部隊にしておこう。
「うん?これはなんだい?」
「リュリュさんをレベル8にしたいんだ。僕の部隊に入ってくれば今なら20%の経験値をプレゼント中!」
「何か売りたいの?まあ、いいや、これを押せばいいのかな?」
よし、これで、リュリュさんも一緒にレベルアップすれば、手合わせもやり易くなるぞ。
でも、リュリュさんが8に上がるまでは、チマチマと削って少ない経験値を稼いでいくしかないか。
「おおお!本当にレベルが上がった!ここ何年間もずっとレベル7から変わらなかったのに。全く、、、キミはただ退屈させないだけじゃ物足りなくなってきているのかい?」
クマさん表現はイマイチ分からないけど、喜んでくれてるみたいだ。
『ご主人!何してるの!今、こっちのみんなが一斉にレベルアップしたんですけど!魔王と闘ってたりするの?』
お、ラナ達もレベルアップしたんだ。
そうか、部隊は分けたけど、スキルの経験値譲渡は皆んな均等に分配されるもんな。
この分なら学校チームも皆んなレベルアップしたのかな?
「ありがとう、リュリュさん。また腕取れかけたけど、まあ、想定範囲内でしたよね?よねっ?」
「本気で死ぬかと思ったよ!すぐ治してくれるから良いけど。いや、良くないけど!痛いんだからね!レベル8になったからギリ、イーブンだよ!」
「リュリュさん興奮すると若者っぽい話し方になるね」
「若者だよ!今年で16歳だよ!」
そんな若かったんだ。
クマの年齢分かんないな〜。
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