第三十一話 王族の知り合い

王都に家を構えて拠点を作る事は出来た。

でも、王立学園に入って勇気候補を探すには、まだクリアしないといけない事がある。

その中でも何ともならなそうなのが年齢だ。

12歳が入学年齢なのに、僕はまだ10歳だ。

11歳になるのもまだ先になる。

さて、どうしよう。

レティ情報だと王族なら年齢制限無しになるようだから、あり得るとしたらその辺りかな。

と言っても、僕は実は王族でした!とかは無いのだから、誰か王族の人に頼み込むとかしか無いだろう。


「誰か王族の知り合いっていないかな?」

「いるわよ」

「いるわね」

「いるよ!」

「いる!」


え?4人とも?こんな所に解決の糸口が!


「だ、誰?」

「ディアよ」

「ディアね」

「ディアお姉ちゃん」

「ディアちゃん」


そうだよね。

エルツ族に聞いたらそうなるよね。

レティにはいなさそうだよな。

後は騎士団とかにツテはないかな?


「ねぇ、リンに知り合いいるじゃない。王族」

「え?いないよ?いたっけ?」

「ご主人が知らないのにわたしに聞いてもわからないと思うの」

「フィア。教えてよ、誰さ」

「国王。最近知り合ったじゃない」


いやいやいや。そりゃお互い知っている間柄だけどさ。

ただ勲章くれただけだよ?

あ、でも、あんなイタズラしてきたんだから、話ぐらい聞いてくれるかな。

それにしても一気に最トップか。


「よし、分かったよ。パイライトタイガーの群れに飛び込んだつもりで国王様に会って話してみるよ」

「その言い回しは、やっても無駄だと分かってても、してしまう無謀な行為の例えだからね」


ダ、ダメかもしれない。


そんな訳で、今僕は一人王宮の前に来ている。

まずは国王様に会うところからだな。

どうすれば会えるだろう。

いきなり来て「お話ししたいなあ」、とか言っても会ってくれないだろうな。

王宮は周囲をぐるっと外壁が囲んでいて、まずは大きな正門から敷地内に入らないといけない。

どうやって中に入ろうかと悩んでいると、正門で立番をしている衛兵さんがこちらを睨んできた。

キョロキョロし過ぎたか。

ああ、まずい、こっちに来た。

一旦逃げて態勢を整えるか?


「キミは王宮に何か用事があるのかい?」

「い、いえ!あ、じゃなくて、はい!」

「え?どっち?」

「はい!あります!用事!」


ダメだ、これじゃあ、挙動不審過ぎる。

憲兵を呼ばれるか?


「それなら、中の受付で用紙に来訪の理由を書いて出してね」


あれ?入っていいの?

思っていたより簡単に入れるんだ。

正門をくぐり、入ってすぐにある受付に向かう。


「いらっしゃいませ。こちらの用紙に記入をお願いいたします」

「は、はい」


良かった。冒険者ギルドみたいな雰囲気だ。

これなら慣れてる。


用紙は、っと。

この記入例を見ながら書けばいいのか。


名前は、リン。あ、じゃなくて、リーンハルト・フォルトナー。

流石に自分の名前は忘れない。

次は住所。住所って今住んでいる場所の事?

なんて書けばいいんだ?確か王都は住む場所に細かく名前と番号が振ってあるんだっけ。


「あ、そこは大体で良いですよ。王都にお住まいですよね」

「はい。王都の真ん中辺りのアーケードが近くにあるところです」

「そこなら王都中心街2区でいいですよ」


よし、書けた。

次は、来訪理由か。


1.王宮観光

2.国王謁見

3.事務手続き

4.その他


普通の用事に紛れて国王謁見が一つだけ飛び抜けてるな。

国王謁見に丸、と。

あ、違った、2.に丸を付けるんだった。ま、いいか。


後は、「来訪者と申請者が違う場合には名前と住所を記入」だって。

え?どういう事?

来た人が申請者?とかじゃないの?

違う場合ってあるの?


「あ、そこは親御さんがお子さんの為に代筆する時なので結構ですよ。後はここに判子を押してください」

「は、はんこ?」

「無ければ拇印でも結構です。ここに指を置いてから、ここに押してください。はい、これで受け付けをいたしますね。この番号札をもってお待ちください。あ、これ指拭きをどうぞ」


な、なんで今、指にインクを付けて紙に押したんだ?

これに何の意味があるんだ?

流石王宮だ、不思議な手続きがあるんだな。


番号が呼ばれて受付の人に番号札を渡すと、今度は紐がついたカードを渡される。


「それを首から提げて、王宮内では外さないようにお願いします。そのカードに書かれているのと同じマークが書かれた扉しか出入りする事が出来ませんのでご了承ください」

「は、はあ」


カードには「国王謁見 28番」という文字と「青の月」のマークが描かれていた。


王宮の中には入れたし、国王様に謁見も出来るみたいだ。

壁に書かれた道案内を見ながら謁見の間に向かう。


   謁見の間・国王の私室 直進

            鏡の間・食堂 右

 召喚の間・事務室 左


分かりやすいと言えば分かりやすいか。


謁見の間まで来ると他の謁見を希望している人達が何人か椅子に座って待っていた。

この後ろに並べはいいのかな?


扉が開き、中から人が出てくる。


「失礼しました」

「次の方ー。24番の方ー、どうぞ」

「はい。失礼します」


あと、4人か。

今の内に体力を回復しておこう。

また、こっそり攻撃されたら敵わない。

眩しいのをまたやられたらやだなぁ。


数十分後、ようやく僕の番が回ってくる。

後ろには既に10人くらい順番待ちが増えていた。

凄いな国王様。一日に30人以上も謁見してるんだ。


「28番の方ー。はい、どうぞ」

「は、はい。し、失礼します」


中は意外と狭かった。

扉に一人、これはさっきから次の人を呼び出している人だ。

部屋の左右に兵士が一人ずつ。

前には国王様と叙勲式にもいた宰相さんだ。

クラウスさんだっけ?


「ああ。フォルトナーさん。ようこそ。今日はどうなさいましたか?」

「あ、どうも。こ、国王様。本日はお日柄もよく、国王様におかれましては」

「それは、何の挨拶だ?早く用件を話せ」

「あ、え?す、すみません?」


あれ?調子狂うな。国王様、普通に話しかけてきたよ。


「ん?お前見た事あるな。誰だ?占い婆さんの所の倅か?あいつはもっと大きかったか?」

「先日のベニトアイト勲章の叙勲をされたリーンハルト・フォルトナーさんですよ。ほら、ザールブルク砦を取り返した英雄ですよ」


え?何か今不穏な単語が出てきたんですけど。

王宮では僕の事、英雄扱いしてるの?


「ああ、でっち上げた英雄か!あれは上手くいったな!硬度派の奴らが悔しがっていたのは僥倖だ」

「でっち上げは言い過ぎかと。友軍を救い出して、砦奪還戦を完全勝利に導いた功績は本物ですよ。王都では低硬度の英雄と呼ばれているようです」


意味はわからないけど、その二つ名はあまりカッコよくないと思う。

それにやっぱりこの国王自身も僕の事を政治利用していたんだ。

もう国王に対する僕の評価は地を這っている。


「あの、お話ししてもいいですか?」

「ああ、フォルトナーさん、すみません。こちらだけで話をしてしまって。本日はどの様なご用件でいらしたのですか?」


ようやく本題に入れる。

王立学園に入りたいという事、まだ年齢が規定に達していない為、王族の紹介で入試が受けられるようにして欲しい事を国王に話した。

国王はふむふむと聞いているんだか、いないんだか分からない様子だ。


「よし分かった。クラウゼン。このリーンハルトを王立学園に入学させろ。明日までに通えるようにしろ。用件はもう無いか?よし次の者だ」

「いやいやいや、話聞いてくださいよ。入学まではいいです。入試が受けられるようにしていただければ。それと、今ではなくて次の季節の入学がいいんです」

「なんだ、我儘だな。一気に卒業まで取らせるのもありだぞ」

「国王、流石に卒業も入学も勝手にはできません。あの学園は不正は許さず公正である事も売りなのです。フォルトナーさん、入試は王族の紹介状があれば受ける事が出来ますので、後でお渡ししましょう。フォルトナーさんならきっと受かりますよ。入試頑張ってくださいね」


良かった。クラさんはいい人だ。この目の前の人と違って話をちゃんと聞いてくれて、正しく導いてくれる。

ああ、だから国王の側にいて、間違いを正す役をしているのか。


「なんだ?俺は紹介状なんて書かないぞ?せっかく卒業させてやると言ってるのに何が不満なんだ?」

「卒業とか入学じゃなくて入試が受けられれば良いんですよ。それに勝手に入学とかは出来ないそうじゃないですか!」

「ああん?俺が出来ると言ったら出来るんだよ。国王だぞ?」

「国王でもできない事はありますよ」


何だかどんどん子供っぽいところが出てくるなぁ。

本当にこの国の国王なのか?

は!もしかして影武者だったり?


「とにかく俺は紹介状は書かない!いいなリーンハルト!もう下がれ!」

「ええ!?そんな!いいじゃないですか!紹介状くらい書いてくれたって!」

「い・や・だ!自分でなんとかしろ!」

「それが出来ないから頼んでるんじゃないですか!人の話を聞かない人だな!あんな叙勲式でいたずらしてるくらいなら紹介状くらいいいじゃないですか!」


なんかもう、腹立ってきた。


「はは!あれは愉快だったな!お前眩しそうにして嫌がってたな!目を細めてたから俺が攻撃魔法をポンポン撃ち込んでたのに全然気付かなかったのは傑作だったぞ!」

「あれ、死にそうだったんですよ!回復魔法が間に合わなかったらどうするんですか!」

「うははは!あれは笑わせてもらった!小声でコソコソと魔法使いおって、その後攻撃魔法を倍にしてやったわ!」


うわあ、そんな事してたのかよ!

とんだ国王だ!


「そんな事をしてるから戦争に負けそうになるんだ」

「ああ?何だ?お前俺に喧嘩売ってるのか?」

「だってそうでしょう?ロクに戦術も戦略も立てないでその場の勢いだけで戦ってるような軍なんですよ?国のトップが公式の場でふざけてるような国が他国に勝てる訳ないじゃないですか!」


あ、言い過ぎた。

まずい、不敬罪とかになる?


「………。そんなに我が軍は勢いだけなのか?」

「え?あ、まあ。殆ど無策でしたね。ノルドの兵士はみんな力や技だけでなく、戦い方がしっかりしてましたよ」

「………そうか。どうすれば勝てる軍になると思う?」


あれ?さっきまでダメな大人だったのに、急にしっかりした顔付きになった。

こんなんでも一応国を導くトップというわけか。


まずは戦法や戦術を勉強する事から始めた方が良いという事、部隊間の連携が上手くとれていないから隊長レベルで話し合いをよく持った方がいい事を伝えた。

あの時だって第2部隊の隊長が他の部隊と上手く連携を取っていれば敵に包囲される事もなかった。


「クラウゼン。急ぎ、各団長にこの事を徹底させろ」

「御意」


行動も早い。

うーむ。この人、有能なのか、ふざけた人なのか分からなくなってきた。


「リーンハルト!お前面白いな!気に入った!紹介状は書いてやる。入試を受けさせてやる!その代わり必ず受かれ!そして、合格した事をここに報告に来い!いいな!」

「は、はい!ありがとう、ございます?」

「あと、さっきの発言は不敬罪には問わずに済ませてやる。首が飛ばずに済んだな!わははは!」


危なかった、危なかった!


「それでは、後ほど紹介状をお渡ししますので、第1会議室という部屋で待っていていただけますか?もうすぐ謁見の時間も終わりますから」

「あ、はい。分かりました」


扉が開かれ退室する。


「失礼します」

「おい!リーンハルト!絶対だぞ!不合格でも報告に来い!」

「分かってますよ!しつこいなぁ!というか必ず受かりますって!失礼します!」


何だよ、どうせ受からないとでも思ってるのか?

意地でも受かってやる!

ふと視線に気付いて見ると、順番待ちの人達が目を見開いてこっちを見てた。

え?何?みんなビックリしてる?


「つ、次の方。29番どうぞ」

「あ、どうぞ」

「ひぃ!」


何だよ。魔物を見たみたいに、失礼な。

入りやすいように避けただけじゃないか。

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