第25話 その頃、学校では2(ダニエル視点)

始業式のあった日こそ、フィオナと可愛いアリスの事を話したくて昼食に誘ってしまったがそれ以来回りに気を付けろというカイルの忠告を受け生徒会以外で彼女に声をかけるのは控えていた。

けれど、フィオナは私が学校内で唯一妹の事を話せる相手。

このままというのも少し寂しく感じる。





これまで私は学校で受ける王族扱いに辟易していた。いくら普通の生徒と同じく扱ってほしいと訴えても畏れ多いと言われ、中々話しかけてすらもらえなかった。

こちらから話し掛けても頬を染めて俯いてしまうか怯えられてしまうかで中々友人が出来ない。

カイルとは元々何度か面識があった為、普通に話してくれているが他の生徒は簡単に距離を縮めることができなかった。



そんな中で物怖じせず私と友人になってくれたのがフィオナだ。

下の学年ではあるが怯えるでもなく色眼鏡で私の事を見るでもなく、友人として接してくれた。

それを望んだのは私自身だったが望みに答えてくれたことが素直に嬉しかった。


教師すら王族だからと距離を置かれたり贔屓目に見られてたりしていた私はつい横柄な態度をとってしまうこともあった、それを彼女は堂々と叱ってくれたりもした。私と対等な友人であろうとしてくれたのだ。

不敬罪を問われる覚悟で彼女は間違った私を正そうとしてくれる、その事に好感を抱きそれ以降さらにフィオナとは仲良くなれたと思う。

加えて妹の事を話しても呆れることなく聞いてくれる姿勢はとても好ましい。



彼女のような人が婚約者であったら良かったのにと思うこともある。

アリスとも仲が良く、しっかりと自分の意見を物怖じせず言える優しい彼女が婚約者だったら……


我に返りそんな事を考えていた自分に驚く。


これでは私がフィオナを好いているみたいじゃないか。


婚約者のいる身でそんなことを考えるのは良くない、父と母のように私自身も誰かを愛するときは一途でいたいと思っている。




ジュリア嬢のことも、いつか心から愛せるときが…………………………………………………くる、かもしれない。

たぶん。

いつか、きっと、五十年くらいしたら。




そう思っていた…いや、思うようにしていた。

けれど、それをぶち壊したのは誰であろうジュリア嬢本人だった。







△△

「ダニエル殿下ぁ、お会いできない時間が寂しくてぇ…私、追いかけてきてしまいましたわ」

そういって私の腕にべったりくっつくジュリア嬢。

言葉には出さないけれどとても香水臭い。

何をどのくらい振りかけたらこんな臭いになるのだろうといつも思う。



フィオナとの噂が立った一週間後、どこからかその噂を聞き付けたジュリア嬢が編入手続きをとって入学してきたのだ。

それもどんなコネを使ったのか、私のクラスに。

お陰で寮以外では、樹液に集まる昆虫さながらべったりとくっつかれてたまったものじゃない。

やんわりと離れるように嗜めてみたものの言葉が通じないらしく余計にベタベタされる。そのせいでフィオナどころかカイルとも話せない。

ジュリア嬢が威嚇して、私に近づけさせないようにするのだ。


最初は私も堪えていた、暫くすれば飽きて家に戻るだろうと。

けれど、そんなに甘くはなかった。

一ヶ月、二ヶ月、三ヶ月が過ぎてもジュリア嬢は帰らない。

それどころか私を見ていたという理由で、男女関係無く呼び出して罰を与えているという噂まで聞こえてきた。

その時、アリスの言っていた『もしジュリアが学校まで来たらフィオナを気にかけてほしい』という言葉を思い出す。


その言葉通り、ジュリア嬢は隠れてフィオナに嫌がらせをしているようだ。証拠を掴もうとするもなかなか現場を取り押さえることが出来ないでいた。



そしてとうとう、限界まで耐えていた私の堪忍袋の尾が切れる出来事が起こってしまった。

ジュリア嬢がフィオナを呼び出して、階段から突き落としたとカイルが慌てて私に報告してきたのだ。

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