第24話 その頃、学校では1(ダニエル視点)

学校に戻りフィオナをエスコートして馬車を降りる。

「ジェード、城の事を頼む」

「承知いたしました、行ってらっしゃませ」

ジェードを乗せた馬車は来た道を戻っていく。


「ダニエル様、お送りいただいてありがとうございます。ご迷惑お掛けしてしまい申し訳ありません」

馬車を見送り校舎に向かおうとするとフィオナがそう謝罪してきた。


「王族足るもの困っている国民を助けるのは当たりだ」

だから気にしなくて良いと告げると「ありがとうございます」と再び礼を述べられた。


向かう場所も同じなので一緒に校舎に歩き出す。


「…ところでフィオナ。以前、妹がご自宅にお邪魔したことがあったが……迷惑をかけたりしなかっただろうか?」

アリスが彼女を気にかけていたことを思い出して話を振れば彼女は首を横に振った。


「いいえ、迷惑だなんてそんな。とてもお優しくて聡明で…ダニエル様の事を心配なさっておいででした、とてもお兄様想いなのですね。大事に思っていらっしゃるのが話していて良く分かりました」

フィオナの言葉につい口許が緩む。


私の妹が、私のいないところで可愛すぎる……その場に居たなら間違いなく抱き締めていたはずだ…妹が天使過ぎて辛い、辛すぎる!!


人目があるので言葉にこそ出来ないがもし私の心中の言葉をジェードが聞いたのなら「また始まった」と呆れた顔をするだろう。


けれどフィオナはそんな私の様子を見て微笑む。

「ご兄妹の仲がとてもよろしいのですね」

「あぁ、かなり」


思わず「お兄様ー!」と駆け寄ってくる可愛い妹の姿を思い浮かべて微笑み答えると、フィオナはそんな私を見てくすりと笑う。


「アリス殿下はとても愛らしい方です、ダニエル様が溺愛なさるお気持ちも分かりますわ」

「妹の愛らしさは容姿だけではないんだ。本当に小さい頃から大人びたことをいう子で、けれど時折見せる甘えた表情がまた可愛いくて…」


にこにこしながら話を聞いてくれるフィオナに、つい調子にのってアリスがどれだけ可愛いか熱心に語ってしまった。

校舎に到着してもまだ話したりなくて昼食に誘ってみる。フィオナは最初は少し戸惑ったようだが、結局は誘いを受けてくれた。


妹の事を話せるという嬉しさに私は回りの目があることをすっかり失念していた。

それ故、私がアリスを思い浮かべて微笑んだ事により私がフィオナを気に入っていると言う噂が広がってしまったのだ。


始業式を終え、教室に戻る。

その途中で「殿下がフィオナ嬢を見初めた」「婚約者がある殿下にフィオナ嬢が言い寄った」「殿下とフィオナ嬢が一緒に登校した」「仲睦まじい姿で微笑み合っていた」等々広がった噂がいくつか耳にはいってきて私は自分の席につくなり頭を抱えた。



「おーおー…ダニエル、すげぇ事になってんな」

目の前の席にどかりと腰掛けどこか楽しそうに笑うのはクラスメイトで、同じ生徒会のカイル・アンバーだ。


「婚約者に見切りつけてフィオナ嬢に乗り換えたってマジ?」

「カイル…止めてくれ」

絶対この状況を楽しんでいるであろうクラスメイトを軽く睨み付けるが、カイルは全く気にしない。


「お前さー、もうちょっと回り気にしなさいよ。今をときめく王子様の言動には皆が注目してんだぞ?」


「つい……妹の話で盛り上がってしまっただけだ」


「妹って、王女殿下?なんでまた」


「妹がフィオナを気に入っているようでな…それで少し」

カイルには私が妹を溺愛していることは伝えてない。

悪いやつではないが信頼のおける友人と呼んでいいものかは微妙なところだからだ。


「なるほどね。だとしても気を付けろよ?ダニエル殿下の言動は身分が関係ない学校内でも注目の的なんだ、嫉妬に狂った令嬢が何しでかすかわからんからな」


「あぁ、気を付ける……それとカイル、学校で殿下はやめてくれ」

難しいことだとわかってはいるが学校でくらい『ただのダニエル』として過ごしたい。


「悪い悪い、けど本当に気を付けろよ。まぁお前に何かあったら俺は逃げる、他人のフリをする」


「この薄情者め」

冗談だとわかっているがそういって軽くにらめばカイルはケラケラと笑った。



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