あれ?異世界転生モノって現実世界に帰れないものじゃないの?

ノア

一転目 あっ俺の異世界転生が・・・

「いらっしゃい、茅野快斗『かやのかいと』さん。死後の世界へ」

覚醒して3秒で全てを理解した。

「死後の世界キタコレ!!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・。

その叫びは、そう。最初に言葉を発した人、その人をドン引きされる程で・・・後に歴史の1ページに「ここまで死を喜んだ人はいないだろう」と書かれるほどだった。

コホン、と。その大声を出した茅野快斗は。

「スマン、テンションが上がった。続けてどうぞ」

と、目の前に立つ女性に言った。

「えーと、・・・。では改めまして。私の名はディオン。この境目で門番をしており、皆さんからは人間飼いのディーンちゃんって言われてます」

なんていう定型文を放った。

青、水色、黄緑の三色で調えられた髪にふんわりとした印象を持つディオン。その肩には女神を思わせるような重力に逆らった、薄いピンク色の羽衣があった。

「あなたは、どうしてここに来たのか・・・覚えていますか?」

「んー・・・歩いてたら、ボールに当たって死んだ」

なんて見当はずれな・・・だが、こいつの場合は正しかった。

「はい、まさしくです。正確に言えば心臓が止まった、ですが。人間とは脆いもので、子供のドッチボール位のボールの速さを心臓にぶつけてしまうと、かなり低確率ですが、こういったことが起きるそうです。そこで───」

「異世界だな!?そうだろ!?」

「えっと、」

「魔王討伐か!?任せろドンと来いよ!」

「ですから───」

「そんでハーレムか!?やっぱハーレムか!?おれ黒髪ロング希望で!」

・・・。

「ん?どうした、えっと・・・ディオン。早くお願いしたいんですが?」

笑顔で近づいてくるディオンに快斗は。

「っが!?」

首を絞められ、軽々と持ち上げられたのだった。ディオンは笑顔のままにこやかに言った。

「うるさいですよ~。黙ってくださいね~」

必死に首を縦に振る快斗をみて、よしと頷いてその手を離す。

「最近は妙に死後の世界に関しての理解が早い人が多いですが、貴方は別格ですね」

ケホケホと四つん這いで咳き込む快斗を上から見下ろす。

「そ、そりゃあ異世界転生は男達の夢だからな」

声が嗄れてしまったがなんとか絞り出した。

「まぁ話が早いから結構ですが。では・・・」

「よっしゃ!異世界転生っ!もう毎晩夢見なくてもいいんだ!現実だ!」

早くも復活し、大声を出した快斗に。

もう一度首を絞めたのはディオンが人間飼いと呼ばれる由縁であった。




「貴方は少しは人の話を聞いた方がいいですね」

「はい。すいません」

1度咳払いをしたディオンは何かを快斗に投げる動作をした。

「うおっ・・・なんだこれ?」

「そこに2つボタンがあるでしょう?上のボタンが貴方の言う異世界行きで下が審議の後、天国か地獄に行けます」

その説明に。

「え?じゃあ真ん中は?」

想定外なのか・・・!?と一瞬期待したが。

「あぁ、それは特殊ですよ。というか最近多いですよ」

案外サラリと言うもんで少し悔しくなった。

「どうやら貴方は現実世界で生き返ったようですね。そのボタンを押せば現実世界と異世界をリンクさせ自由に行き来することが出来るのです」

・・・・・・・・・・ん?

「え?俺って異世界転生するんだよね?え?なに?帰れちゃうの?ずっと生きてくわけじゃなくて?」

「はい。私としては死ぬ人が減るんでそれを選んでほしいですね」

・・・なんか、思ってたのと違うっ!!

「因みにその異世界と行き来する方法は?」

「そちらの方は心配なく。元の世界に戻ったら説明書があるので・・・。どうかそちらを選んでくださらないでしょうか?」

ふむ。んーー・・・どうしよう。少し忘れかけたがよく見ればこいつはかなりの美女だ。そんなのに頼まれたら断りづらい。

じゃあ、と人差し指を伸ばして言った。

「『快斗くん大好き愛してるわ』って上目遣いで言って!いや、言ってください!」

俺の要望・・・願望に。ディオンはニッコリと微笑んでから上目遣いで声を低くして言った!!



「さっさとそれ選べよ家畜野郎」

「っはいっ!すいませんでしたっ!選ばせていただきます!!」

その怖さに勢いよく真ん中のボタンを押した。

「ありがとうございます。それでは色々頑張ってくださいね~」

ぐっばい、俺の異世界ハーレム人生。びーばっく、俺の現実世界。

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