青い便箋
東雲 彼方
手紙
僕が愛した貴女へ
拝啓、春風の心地よい季節になりましたが、お変わりなくお過ごしでしょうか。
僕は元気にやっていますよ。環境が変わったので少し大変ですが……(苦笑)
ところで貴女の爪はまだ青いままなのでしょうか? あの海のようにキラキラして透き通った色のネイル、僕は好きだったよ。
夏は海の近くを二人で歩いたりしたよね。君ははしゃぎすぎて躓いてたっけ? 懐かしいですね。
そうそう、『躓く』で思い出したけど去年の春は桜の花びらで滑ってたね(笑)
僕としてはあのあとずっと手を離さずいられたから嬉しかったです。
もうあれから一年経つのか、時の流れは速いですね。
ところで、
僕は貴女の事が心配です。
一方的に別れを切り出してしまったこと、とても反省しています。でも仕方なかったんだよ? 今の君にならその理由は分かると思うけれど。
はやく僕の事なんか忘れて幸せになってください。
僕はもう出来ないけれど、君には笑顔でいてほしい。最後に見れたのは泣き顔だったけどね、後悔してるよ。
さっさと他のいい男見つけて結婚しなさい。もういい歳なんだから(怒らないでね)!
結婚式は呼んでほしいなぁ……貴女の花嫁姿を見たいなんて言ったら怒る? 元カレには見られたくないか、ていうか相手の親族とかに怒られそうだね。じゃあ写真だけ送ってほしいかな。嫌だったら気にしないで。これは僕のワガママ。
良い男取っ捕まえてさっさと結婚して可愛い子供作んなきゃ僕は許しません。わざわざ僕が別れを切り出した意味がないでしょう?
あ、そうだ。貴女と住んでいたアパート。あの家の僕の机の一番上引き出し。あそこの天板のところを見てみてください。きっと役立つモノが入ってるよ。良かったら使ってね。
あとね、机の二番目の引き出しに君の写真が沢山入ってる。お見合い写真にでも使ってください(笑)
そして三番目の引き出し、そこには君の爪と同じ色をした小さな箱が入ってる。中身は見ないで捨てるか質屋に持っていきなさい。そこそこいい値段にはなると思う。決して中身を見るべからず。
なんかこれ以上書くと僕のみっともない部分しか出てこなさそうだからこのくらいにしておこうかと思います。最後くらいカッコつけさせてよ。ね?
まぁ貴女がこれを読んでいる時には、貴女の隣に僕はいないでしょうし、別に格好つける必要もないんだろうけど……浅はかだった男のプライドとでも思っておいてください。
大事だからもう一度言うけど、
さっさと僕の事なんか忘れて幸せになれ。
いいね?
この事を踏まえてから次からの文を読んでください。
大好きでした。
本当なら君ともう一度春を迎えたかった。桜を見てはしゃぐ君と手を繋いで歩きたかった。もうそれは叶わないけれど。
僕はいつまでも見守ってるからな。
幸せにならなかったら祟り殺してやる(笑)
愛してる。
最愛の貴女の幸せを願って、
敬具
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