試合開始(チュートリアルその1)
「これでいいわね」
準備を終えた姫様は、テーブルからチェスの駒を出した。
「全部で32個あるわ。龍野君、黒の16個を取って」
「あいよ」
言われるがままに、黒色の駒を全て取った須王龍野。
「その駒が、勝負を決するカギよ。無くなれば敗北、そう捉えてもらって構わないわ」
「わかった。だが、聞きたいことがある」
「何かしら?」
「敗北におけるペナルティは無いのか?」
生来の武人であろう須王龍野には、ペナルティの無い勝負は肌に合わないようだ。
極限まで自らを追い詰めなければ、勝負に全力を出せない。そして彼は、全力でない勝負を許せない性質だった。
「なら、こうしましょうか。『敗者は勝者の言うことを、何でも一つ聞く』というものを」
姫様は返す刀で、ペナルティを伝えられた。
「いいぜ。その条件付きの勝負、引き受けた」
須王龍野も条件を引き受け、改めて勝負に臨む姿勢を見せた。
「決まりね。伯爵!」
「こちらに」
私は54枚のトランプをシャッフルし、須王龍野と姫様に1枚ずつ交互に、合計10枚を渡した。
「まだカードに触れてはダメよ、龍野君。脇にあるポーンを1つ、前に差し出してちょうだい」
須王龍野は言われた通り、黒のポーンを1つ差し出した。
姫様も龍野の置いたポーンの近くに、白のポーンを1つ差し出す。
「これで、賭けは成立ね。では、その5枚を取って。ああ、私に見せてはダメよ。私も龍野君には、手札を見せないから」
言われた通り、須王龍野は手札を見る。私はその手札を、ちらりと見た。
そこには、「ハートの2」「ハートの3」「ハートの9」「ハートのJ」「スペードの6」とあった。
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