第4話 火花を刹那散らせ
「夏に死にたいな」
先輩は今思えばチュウニ病のようなもので。少しイタイ女の子だった。細くて自殺願望があって、だけどリスカとかはしてなくて。頭もよくてスポーツもできる。憧れていた人は多分他にもいただろう。僕は運がいいのだ。
「なんでそんなことばかり言うんですか。もっと」
そしたら先輩は口の端を曲げた。
「線香花火みたいにさ」
「それは最期は激しく火花を散らしてってことすか?」
「違うよ。くすぶったり急に落ちるのを誰かに見てもらって死にたいってこと。そりゃあ一瞬火花を散らすことがあっていい」
じーっと特に感情なんてなくたって構わない。綺麗だなんて思ってくれたらそりゃあ舞い上がるけれど。義務感でもいい。ただの余りものに火をつけて、持ってもらって、どこかでしゃがんで、じーっと見てもらえたら。そんな最期は最高じゃないか。たとえ火がつかなくて捨てられても、花火として火をつけようとしてもらえただけでもいい。自分は花火だと誇れる。と先輩はペラペラと話す。先輩はいつも早口で話す。僕ならふつうに捨てられたら寂しいと思う。
「やっぱり僕にははっきりとは先輩の言ってる事が分かりません」
「そうだろうよ。簡単に言えば、君が私の話を分かろうとしている、または聞いてくれている、ただそれだけでいいってこと」
「先輩、僕のこと聞き役だと思ってます?」
「うん、君はなかなか自分のことを話さないからね」
それはだって嫌われたくないからですよ。
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