63 次章に続く!って感じです
「やはり、デジレは裏切っておったか」
優雅に紅茶を飲みながら、ベルナはさほど驚かずに言った。
「知ってたなら、教えてほしかったんだけど」
「確信が持ててたわけじゃないから、言わなかっただけじゃ」
私は今、魔王関連のことの情報整理をするべく、次期国王であるベルナに会っていた。
めんどくさかったから、他の人に聞いてほしかったけど、残念なことに私が一番情報を持っているし、色々な事件に関わった回数が多いのも私だ。
ノエルちゃんとデジレのこともあるし、出向くしかなかったのだ。
「それにただでさえエイリーはぽろりともらしてしまうからの」
「そんなことないし! 信用ないな」
「日頃のおこないというやつじゃ」
くくく、と楽しそうにベルナが笑う。
「つまり、デジレのこと泳がせてたってわけ?」
「そういうことじゃ」
ベルナはデジレを使って情報を集めていたし、その報酬として情報を流していたはずだ。
デジレが裏切っていたと知らなかったら今回のことは問題になるが、勘づいていてわざと情報をもらしたとするなら話は別だ。
つまり、スパイをあぶり出すべく、情報を流して味方か敵かを探っていたのだろう。恐るべし。
「うへえ。怖い怖い」
「そうかの? デジレも妾の目的を薄々と勘づいていたようだったがの。決定的なものは何一つ落とさなかった」
「それでもベルナの方が上手でしょ……」
ベルナが確信に近いものを抱いている時点で、ベルナの勝ちだと思うんだけど。
デジレは隠したくても隠せなかったってことでしょ?
「それは違うの。まんまとノエルを連れ去られた時点で、妾の負けじゃ」
「ベルナは悪くないよ。まんまと逃がしちゃった私が悪い」
何回逃げられてるんだって話だよね、私。
でもあんな古典的な方法でくるとは思わなかったんだもん。しょうがないしょうがない。
「そうだの。エイリーも悪いの」
「そこは否定するとこじゃない?! いや、私が悪いんだけどさ?!」
「ノエルが連れ去られたのは妾も
そう結論づけると、ベルナは表情を真剣なものへと一転させる。
「それで、ここからが本題なのじゃが」
「あ、あくまで今までのは前置きなのね」
デジレのことも重要だと思ったんだけど、前置きって言っちゃうあたり、流石ベルナだよな~。
「これはディカイオシュネーに放っている妾の密偵からの情報なのだが」
「密偵?! ディカイオシュネーに密偵?!」
国土拡大を狙っているディカイオシュネーは、周りの国と関係が良くない。
半分鎖国状態なもので国境を越えるのも難しいし、国内の情報統制だって厳しいと聞いている。
そんなところに密偵を放ち、情報を持ち帰らせるとは。
「妾の得意分野だからの」
「得意分野で済ませるなって感じもするけどね。ベルナなら納得だわ」
うんうんとうなずいていると、「其方に言われたくないわ」と不機嫌気味に言われてしまった。
「それでじゃ。どうやら、ディカイオシュネーはアイオーンに戦争をふっかけるつもりらしい。国内では準備が進められてるとか」
「魔王が復活したって言うのに?」
「だからだろうな」
魔王対策に忙しいところに戦争を仕掛ければ、平時に比べれば簡単に落とすことができるだろう。
一理あると思うけど、やっぱりおかしい。
「でも、ディカイオシュネーだって、魔王は脅威のはずだよね? だったら、魔王を倒した後、疲弊しているところをつついた方がより確実じゃないの?」
このタイミングで情報を明かすんだから、すぐに仕掛けてくる可能性が高いと言うことだ。
少なくとも、魔王を討伐する前には開戦するんだろう。
「妾もそこが謎での」
ふうと息をもらすベルナ。
「ちなみにデジレとノエルが逃げた先は、ディカイオシュネーじゃ」
そんなことまでわかってるんだ……。
逃亡先を特定しちゃうなんて、怖すぎないか……。
この人がディカイオシュネーに潜らせてる密偵って、もしかしてひとりふたりじゃないんじゃ……?
「怪しい匂いがぷんぷんするね?」
「じゃろう?」
シェミーにちょっかいを出してきたサルワだって、ディカイオシュネーの軍を率いていた。
そして、ノエルちゃんとデジレが逃げた先もディカイオシュネー。
「少なくとも、魔王と協力関係にあるってことだよね?」
「そうじゃろうな。でないと説明がつかんしの」
めんどくさ~。
魔王とその仲間たちを相手するだけどでも疲れるってのに、人間も相手にしないといけないとか。
私、対人戦って専門外なんだけど。そもそも戦争とかしたことないし。
「そこでじゃ、エイリー。其方に頼みたいことがある」
「断りたい」
でも無理だよねぇ。知ってる知ってる。
「開戦したら、ディカイオシュネーに潜りこんでほしいのじゃ。そこで悪魔がいたら討伐してほしいし、いなかったら偉い奴を捕らえてほしいのじゃ」
「ますますお断りしたい」
そりゃあ、上級悪魔とかいたら、並大抵の実力だと相手にならないから、仕方ないかもしれないけどさぁ。
隠密行動なんて、私に一番向かないものじゃない? 自信あるよ?
「何もひとりで行けというわけじゃない。仲間もいるから心配いらぬ」
「へえ。そうなんだ」
ベルナはにっこりと笑っているが、断らせるかという圧を感じる。
「とういうわけで、頼んだぞ?」
ほら、決定されてしまった。
よっぽどの理由がない限り断れない。
めんどくさいからなんて理由でなんて、断れないだろう。
はあ、めんどくさいな~。
「はいはい。わかりましたよ」
ノエルちゃんのことは心配だし、デジレのことは一発ぶん殴ってやりたい。
できる範囲で頑張ろうと思い、こくりとうなずいた。
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