18 一応悪役令嬢ものなので、舞踏会編はないとねっ!
「……ところで、パーティーってなんのこと?」
流れに流されて、不穏なワードを聞き流してた気がする。“パーティー”とかいう、私の天敵とも言えるワードを。
「だから言っただろう? パーティーは明後日開催される、と」
「そういうことが聞きたいんじゃない!」
「じゃあ、何が聞きたいんだ?」
ブライアンが、眉間にしわをよせて、私を見てくる。その迫力と言ったら。
私、そんなに睨まれるようなこと、言いましたっけ?
ことごとく、目の敵にしてくるのやめてほしい。
「なんで私も参加する流れになってるの?!」
「当事者がいなくては、パーティーにならないだろう?」
「……当事者? 私が?」
「今更そこを気にするのか……?」
「……どういうこと?」
困惑するブライアンと私。ただ、困惑している内容は全く違う。
私は助けを求めるようにして、ファースを見る。
「このパーティーは、魔王討伐の決起パーティーみたいなものなんだ」
「つまり、『皆で力を合わせて魔王倒すぞー! そのために食って騒いで力をつけるぞー! 頑張るぞー、えいえいおー!』みたいな感じなの?」
「……まあ、間違ってはいないな」
「間違ってはいないけど、貴族の集まるパーティーをそんな風に表現する人、わたくし初めて見たわ」
私の表現はどうやら少しおかしかったらしい。グリーにズバッと言われてしまった。
でもさ、こっちの方が断然わかりやすくない?
「だから、私も呼ばれるの?」
一応、魔王に直接、宣戦布告しちゃったしね。
いくら、色々やらかした元令嬢(今は隣国の英雄)とはいえ、パーティーに呼ばれるのも仕方がないのか。
「そりゃ、主役だからな」
レノが当たり前のことを当たり前のように言うように、言った。若干、笑ってた気もするけど。
「……主役?」
私が?
「おいおい、流石にそれくらいはわかってろよ。あんぽんたん」
「あんぽんたん?!」
ため息を吐きながら、ブライアンが悪口を言ってきた。
何、何なの?!
あんぽんたんって何?! そんなの初めて言われたんだけど?!
「確かに、あんぽんたんだな……」
「そこ納得しないでくれます?!」
「否定できないのが悲しいわ」
「否定してください?!」
「あはははははは」
「笑うのが一番心にくるんですけど?!」
ファースたちは、どうやらブライアンの味方らしい。
くそう、いつの間にこんなに仲良くなったんだよ……!
「どう考えたって、お前が主役だろうが」
「ミリッツェアじゃないの?」
この国で、魔王討伐の主力となるのは、ミリッツェアの他にいないだろう。
私はあくまで、
「ミリッツェアもだ。お前とミリッツェアが主役だ」
「……納得がいかないけど、理解はした」
つまり、アイオーンとマカリオスの共同戦線のお披露目式というか、結成式というか、そんな感じなんだろう。
いや、そんな旨の話を、
都合の悪いことは忘れる。それが、私なのだ!
「じゃあ、納得もしてくれ」
「それは無理な話だね」
「参考までに聞くが、何故だ?」
「私は、パーティーなんて出たくないから!」
「……それだけ?」
「それだけ。何か悪い?」
「……もうツッコミを入れるのも疲れてきたな」
頭を押さえて唸るブライアン。
なんか知らないけど、ブライアンを困らせたぞ?
お手上げ状態にしたぞ?
もしかしなくても、私、勝ったんじゃん?
「ブライアンが疲れるなら、私、パーティー出ない方がよくない?」
「それは却下だ」
「どうして? 私はパーティーに出なくてすむ。ブライアンは余計な心配がひとつ減る。
「できれば俺も、そうしたいがな。それはできないに決まってるだろう?」
「ええー」
頭固いな、この人。別に私が出席するメリットなんて、そんなにないじゃん。
「諦めろ、エイリー。恨むなら、魔王に宣戦布告した自分を恨むんだ」
「……そこは後悔してない」
「じゃあ、そんなに強くなってしまった自分を恨むことね」
「……これは不可抗力だもん」
「じゃあ、素直に受け入れるんだな」
「……それができればいいんだけどねっ!」
ファース、グリー、レノに、いっぺんに攻められて勝てるほど、私は強くない。
こいつら、私の扱い方がとっても上手い。というか、どんどん私のこと理解しているみたいで、ちょっと、いやかなり怖い。
「それにさ、エイリー。ミリッツェア嬢の抱える問題を解決しないといけないんだろう?」
「そうだけど、なんでファースたちが知ってるわけ?」
ファースたちが知ってても、何も驚くことはないんだけどさ。
こいつらならなんでも知ってそうだなぁという印象が、私の中に定着しつつある。
「先日、ミリッツェア嬢に直接聞いたんだよ」
「そっかー」
国家秘密とも言えるものを、他国の王族たちにべらべら喋っちゃうとは。
まあ、協力していかないといけないから、包み隠さず話しておいた方が良かったのかもしれない。
よくわからん。
「だから、ミリッツェア嬢に会うためにも、パーティーには参加した方がいいんじゃないか?」
「うむむむむ」
「ここ一週間、何もしてないんだろう?」
「どうしてバレてる?!」
一週間、何もしないでごろごろしてたことが、どうしてファースにまでバレてるんだ……。
「ネルソン公爵が嬉しそうに言い回ってるんだよ」
「……あー、父さんならやりかねないなぁ」
父さんの話しか出ていないが、おそらく母さんも兄さんも、各方面で言いふらしているのだろう。安易に想像がつく……。
これじゃあ、ごろごろばっかりしてたらダメじゃん!
私、パーティー出た時に、『あれが家でごろごろしている踊る
これは、早急にミリッツェア問題を解決しなければ……。
「ねえ、ファース」
「駄目だ」
「私、まだ何も言ってないんですけど?!」
「どうせ、『やっぱパーティー出ないと駄目?』みたいなこと聞こうとしたんだろう?」
ぎくり。
「……違うもん」
「じゃあ、なんだ?」
「うぐ……」
「俺がエスコートしてあげるから。頑張ろう、エイリー」
「うぐぐぐぐぐ」
もうファースなんて、嫌いだぁぁぁぁぁぁ。
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