第3節 ゼーレ族の問題(シェミー編とも言う)

72 久しぶりのメンバーで

 パーティーの翌日、私とファースとグリー、レノで予定通り打ち合わせを行うことになった。場所は、毎度おなじみ冒険者省。


 部屋を借りる許可はロワイエさんから快く得られた。

 王族が来るのには、驚いているようだったけど、まあ、今更だよね!

 と、いうわけで私は今、冒険者省に来ていた。時間は待ち合わせのギリギリである。


「あ、エイリー」


 案の定、ファースたちは来ていて、私を待っていたみたいだ。

 ……部屋の場所を教えておけばよかった。私も目立つが、ファースたちも結構目立つのだ。皆さん、揃いも揃って美形だし。


「おはよー、皆早いね」

「いやいや、エイリーが遅いだけよ?」

「そんなこと……あるか」


 待ち合わせ時間、ギリギリだもんな。これは否定できない。


「自覚しているなら良いわ」


 満足そうに、グリーが頷く。


「このメンバー久しぶりだね。……と言っても1ヶ月は経ってないか」

「そうだなぁ。ずっと一緒にいる感じがするんだよなぁ」


 レノもしみじみと言う。

 そろそろ周りの視線が痛くなってきたな。さっさと場所を移そう。


 というか、皆、噂話好きすぎ。

『え、あの孤高の英雄がパーティ組むの?!』とか。

『あれ、もしかして踊る戦乙女ヴァルキリーのハーレム? 皆、美形だし』とか。

『踊る戦乙女ヴァルキリーの下僕かなぁ?』


 全部、聞こえてますけど。聞こえてるんだけど?! 皆様、結構失礼だな?!


 何でもない顔をしているファースたちだけど、絶対聞こえてるよね?!

 ここにいる人たち、王族とか騎士団の団長とかお偉いさんだよ?! 3人の心が広くて良かったよ……!


「さ、早く部屋に移動しましょ」


 3人の堪忍袋の緒が切れる前に、私たちは借りている部屋に向かった。



 * * *



「さてと。何から話せばいい?」

「全部丸投げかよ」


 私の言葉に、ファースが冷静にツッコミを入れる。ツッコミが板についてきたなぁ。


「だって、知ってること話しても意味ないじゃん?」

「それはそうだけどな。……まあ、いいや。父上に言われたことを教えてくれ」


 私の主張を聞いて、ファースは諦めた。それなりに筋は通っていたからだろう。きっとそうだ。


「これからもファース達と宝探しをしていいって。あとは、犯人探しも手伝うことになった。そのうち宝庫も見せてくれるって」

「かなり協力的なのね」

「だって、国王様のポケットマネーからお金が出るからねぇ」


 事実、謁見した時の国王様からの協力しろという圧力をかけられていた。怖かった、怖かったよ……。人を働かせる気満々だよね。


「でも、それだけじゃないわよね?」


 流石、グリー。鋭い。他の2人も気づいているようだ。


「わかってるじゃん」

「マスグレイブの秘宝盗むだけ盗んで置いて、その辺に捨てるとか普通ありえないだろ」

「きっと、その行為によって起こることが、犯人の目的なんだろ?」


 皆さま、頭が良くて何よりです。私の説明することが減って嬉しい。


「そういうこと。ま、犯人探し、ファース達は関わらなくて良いよ。忙しいだろうし」


 ファースとグリーは学園が、レノは騎士団の仕事がある。それに加えて、宝探しもしなければいけない。

 この中で暇なのは、のんびり冒険者をやっている私くらいだ。


「でも……」

「気にしなくていいの。これは、私の仕事だし。それに、こういうのは役割分担が大事なんだよ。だから、ファース達には、情報を集めて欲しい」


 それに、1人の方がフットワーク軽くて楽だし、上級悪魔が関わっているかもしれない。

 ぶっちゃけ、邪魔なのだ、うん。ファースたちとは一緒にいたいけど、王族様々を傷つけた時を想像するとすごく怖いんだよっ!


 それに私が隣国から逃げてきた令嬢、ルシール・ネルソンだとバレる危険性があるので、必要以上に側にいないで欲しい。

 私の熱意が伝わったのか、


「そういうことなら……」


 と、ファース達は了承してくれた。ありがたや。


「他に聞きたいことはある?」


 私がそう尋ねると、少し間を置いてから3人はそれぞれ首を振った。


「じゃ、解散ということで」

「それは寂しいわ、エイリー」

「他にすることある?」

「……薄情ね。だから、いつもひとりなのよ」


 グリーに痛いところをつっこまれる。暗に、私のことをぼっちと言っている。酷い。私はぼっちじゃない、孤高なのだ!


「否定はしないけど、私は好きだから1人であるんだよ」

「どうだか」


 私の物言いに、呆れたようにグリーがため息をついた。


「この後食事でも行けばいいんじゃないか?」


 そんな私たちを見て、ファースがそう提案してきた。


「おお、いいなそれ。俺、この間行った、アデルフェーにもう一回行きたいぞ」

「ナイスだわ、ファースお兄様!」


 ノリノリで、レノとグリーが乗っかる。


「……あんたたち、暇なの?」

「「「全く」」」


 いや、見事にハマったけど、それ嘘だよね? 暇だよね? そうとしか思えないんだけど。


「はあ、まあいいや。アデルフェーに行きましょ。私もお腹すいたし」


 別に、ファースたちといること自体は、苦じゃないし。


「じゃあ、決まりだな」


 そうファースがまとめると、私たちはアデルフェーに行くために、部屋を出た。


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