68 皆でかくれんぼ
「まだ、パーティーまでに時間があるな。どうしようか、エイリー」
タパニとの話がひと段落したのを見計らって、ファースが尋ねてきた。
「できれば今すぐ帰りたい」
「それは無理だな」
そんな真顔で返さなくても、わかってるよ! 流石に逃げ帰るような勇気は私にはないよ!
「じゃあ、ファースに任せる」
「皆でかくれんぼしよう!!」
すかさず、ノエルちゃんがそう言う。
「おい、ノエル」
「いいね! 楽しそう!」
ファースがノエルちゃんを止めるが、私はノリノリでノエルちゃんの案にのる。
かくれんぼなんて、久しぶりだし、少しくらいならやってもいいよね!
キラキラとした目で、私とノエルちゃんはファースを見る。
それに負けてか、ファースは深いため息を吐いて、
「わかったよ。だが、鬼はエイリーだからな」
と了承してくれた。呆れた目で私を見てきたけど。
「なんで? 私が鬼なの?」
「エイリーが隠れる側だったら、一生見つからないだろ……」
「どうして?」
「エイリーが不可視の魔法を使うことくらい想像がつくだろ。エイリーの不可視の魔法なんて、誰も解除できないに決まってるじゃないか」
「別にいいでしょ、使っても」
遊びこそ、本気を出すべきなのだ! この時に魔法を使わなくて、いつ使う!
「駄目だ。見つかるわけないだろ。だから、エイリーが鬼な。マップも使わないように」
「えー」
「そうしてしまったら、つまんないだろうが。他の魔法は使ってもいいけどな」
「わかった。けど、範囲はこの中庭だけにしてね」
中庭といえ、王城だ。中庭だけで、かなりの広さがある。狭い公園よりは確実に大きい。
「それでいいだろう」
「オーケー。じゃあ、30秒数えるから、さっさと隠れて。いーち、にー、さーん」
私は目を瞑って、数を数え始める。
「キャー、隠れなきゃっ!」
なんて、可愛い声でノエルちゃんが言うと、隠れる場所を探すべくかけて行った。
ファースやタパニもそれぞれ別の方向に向かったようだ。
「じゅーいち、じゅーに」
私は数えながら、攻略法を考える。マップが使えないとなると、透視の魔法を使った方がいいだろう。いや、人間の場所が分かればいいんだから、そんなに大袈裟なことをしなくてもいいのか。
そうなると、やはり魔力を感知した方が手っ取り早いか。ファースなんか、魔力をかなり持っているのでわかる。ノエルちゃんもタパニもそれなりにあるので、大丈夫だろう。
つまり、結論はこうだ。
――――マップを使えないなら、自分で作っちゃえばいいんじゃない♪
自分の魔法でマップを作るなら、ルール違反じゃないはずだ。それは、
「にじゅーはち、にじゅーきゅ、さんじゅっ! もーいかい?」
私が数え終わってそう尋ねても誰も答えを返してこない。こっちの世界では、『もーいかい?』を使わないのか……?
……いや、違うだろう。場所を特定させないために、返さないのだ。
向こうも相当ガチなようだ。人のことを言えないじゃないか。
そっちがガチなら、こっちだって本気でかかってやる!
そうして、私はクラウソラスを抜いて、呪文を唄う。
「大地や大地、探し人の場所を教えてくれ。風よ風、あの人の声を届けてくれ。描け、写せ、形と成れ!」
これは、たった今私が創った魔法だ。マップの技術を応用し、地図を作ると言うマップがあれば何の役にも立たない魔法だ。
まあ、
私の前に、立体の地図が浮かぶ。地形も正確に読み取っており、分かりやすい。我ながらいい出来である。だが、人の数が3人より多いのだ。タパニとノエルのダミーが2人ずついる。
「ほほう? 流石ファース、と言ったところか」
これは魔力を感知して、人の場所を見つけ、表示するという手段を取っている。つまり、全く同じ魔力を持った何かであれば、その人と認識してしまうのだ。
まあ、完全に一致しないと、認識しないので、こんなことをできるのはタパニとノエルの魔力量を詳しく知っていて、魔力操作に秀でている人に限られる。つまり、ファースだけだ。
ファースは魔力量はそんなにないのだが、魔力のやりくりが上手い。魔力頼りで大雑把に魔法を使う私とは違い、ファースは必要最低限の魔力で魔法を使うのだ。
「なんだかんだ、ファースが1番ガチじゃん」
くすくす、と私は笑いを漏らす。
「じゃあ、ひとつずつ潰して行きますか!」
ダミーを含めて5人。たいした数ではない。
「まずはファースからかなぁ~」
魔力量を完全一致することがダミー作成の条件。故に自分で自分のダミーを作ることはできない。ファースは1人だけだ。当たりもハズレもない。
「飛べ飛べ、鳥のごとく。舞え舞え、風のごとく。美しく、可憐に、羽ばたけ!」
私は呪文を詠い、体を宙に浮かせる。上からの方が探しやすいだろうし、歩くのしんどいし。
「待ってろよー!」
それが合図だと言わんばかりに大声を出す。当たり前だが、ファースたちからの返答はない。
そうして私は、ファースの隠れていると思われる場所に飛んでいった。
――――独り言が多いのはご愛嬌ということで。
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