28 お宝……
「さてと、秘宝はどこにあるんだろ?」
魔物を倒し終え、私はクラウソラスを鞘に収めながら、私は辺りを見渡す。ぱっと見それらしいものはどこにもない。
まだファースたちは放心状態ならしく、私の呟きにも反応を示さない。君たちにも関係があることだから、少しは聞いてくれてもいいのにね。
でも、なんか、こうして彼らに驚かれること、慣れた。こいつらはこういう奴だ、という感じで、私の中でまとまりつつある。
ていうか、いちいち驚いてくれなくていいんだけど。毎度毎度ご苦労様です。
「マスグレイブの秘宝って、どんな感じ?」
私はきょろきょろと探しながら、ファースたちに尋ねた。
確か、ロワイエさんが宝石って言ってたよね。どんな宝石なんだろう。虹色に輝いたりして。
にしても、相変わらずファースたちの反応がない。いい加減、戻ってこーい。そのままだと流石に怖い。死んでしまったのかと思うじゃん。
「ねえ、聞こえてる? おーい、聞こえてますかぁ?」
仕方がないので、かなり大声を出して言うと、
「うわっ、びっくりした」
と、ファースが今初めて声が聞こえました、と言わんばかりの反応をする。
「あんたたちが反応しなかったから、柄にもなく大きな声出したんだけど」
「柄にもなくって……。エイリーならしょっちゅう出してるんじゃないのか?」
笑いを含みながら、レノはツッコミを入れてくる。
「……どう言うこと?」
「エイリーは、すぐに大声出しそうだなっと」
レノの中の私はどんなイメージなんだろうか?
まあ、すぐに大声出しそうってイメージは、わからなくもないけど。
でもなんか、レノに言われるのは気にくわない。
レノのイメージを打ち破るため、私はため息混じりに反論する。
「……あのねぇ、レノ。私はあまり人とつるまないから、大声どころか、そもそも声を出さないの」
声を出すなんて、独り言、挨拶をする時、冒険者省で依頼を受ける時、買い物をする時くらいだ。
毎日仲良く話す、友達も仲間もいないからね!
…………こうしてあげてみると、なんか私やばくない? どんだけ1人でいるんだよ。
いわゆる『ぼっち』と言うやつだね。
いやいや、孤高なのだ。断じてぼっちなんかじゃないんだ。孤高なの! 同じぼっち仲間でも、そっちの方が、かっこいいの!
私は、孤高の英雄なのだ。えっへん。
こんなんで、よくファースたちとコミュニケーション取れたなぁ。偉いな、私!
「否定するとこ、そこ?」
なにやらぼそりとグリーが言った気もするが、何も聞かなかったことにしよう。
私は何も聞いてない。何も聞いてませーん。
「で? マスグレイブの秘宝ってどんな感じなの? 宝石だよね?」
私が改めて尋ねると、ファースたちがまた驚きを表している顔をする。さっきとは驚きの種類が違うことは言うまでもない。
「え?」
「え?」
双方ともに目をぱちぱちさせる。
「え、何をそんなに驚いているの?」
私は驚きを滲み出した声音でファースたちに聞く。
「確かに、マスグレイブの秘宝には宝石もある。だけど、ここにあるとされているのは、宝石じゃない。盾のはずだ」
ファースは真剣に、私の質問に答えた。驚いている様子が直に伝わってきたが、簡潔に内容がまとめてあり、わかりやすかった。
だからこそ、私は戸惑った。戸惑わずにはいられなかった。
「た、て……?」
「盾」
私が盾ってなんだ?、みたいな言い方をしたので、ファースは真面目な顔で『盾』と言って頷いた。
いやいや、流石に私だって、『盾』くらいはわかるよ! 私が言いたいのはそういうことじゃない
「まあ、宝石の回収だけをエイリーに頼むのも分かるよなー」
「どう言うこと? グリー」
今度はグリーの発言を無視せずに、むしろ積極的に聞く。
「マスグレイブの宝石は、ネックレスの台座にはめ込まれているから、厳密にいえば宝石じゃない。ネックレスって皆言ってるし。てか、はめ込まれてるのは、そもそも魔石だし。
その宝石は、王位第一継承者の証なんだよ。だから、それさえあれば誰でも王位を継ぐ権利があるんだよ。それこそ平民でも」
「なんでそんなものが無くなってるわけ?」
この世界は王家のセキュリティも、がばがばなの? 大丈夫なの?
「それは、その。俺たちの口からは言えな」
まあ、そりゃ国家秘密ですものね。簡単に漏らせないもんね。
「エイリーは国から依頼を受けたんだよな?」
「まあ、そう」
依頼料は国王様、つまりファースとグリーのお父様のポケットマネーから出ているけどね。
「それなら、こちらの説明不足だ。だから後日改めて、どんな方法にせよ、事情を聞く機会ができるはずだ」
ファースの完璧な説明に、私は思わず拍手をしてしまう。
よく言ったファース! これぞ、お偉いさんって感じ。
「な、なんだ、いきなり」
私の奇行にファースは、ぎょっとした。
「なんか、凄いなぁって。ファースって、本当に王子様なんだなぁって」
「よくわからないけど、ありがとう?」
不思議そうにファースは、はにかみながらお礼を言った。
こんな素敵な笑顔を見せられてしまっては、半分……いや、少しの嫌味が混ざっていたことは、口が裂けても言えないな。胸に秘めておこう。
「さてと、じゃあ盾の回収をしちゃおうぜ」
空気をリセットするべく、レノが手を鳴らした。
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