11 よろしく、相棒
さあて、クラウソラスは何処にあるんだろう?
悲しいことにマップには、お宝の在り処は表示されない。便利だけど、中途半端なのだ。
もう魔物は居ないはずだし、ゆっくり探そう。焦ったら、見つかるものも見つからないしね。
そう思いながら洞窟の最深部へと向かっていく。
ていうか、この洞窟、本当何もないなぁ。
珍しい植物があるわけでもなく、異色な魔物がいたわけでもない。複雑な造りでもなく、何回か分岐点があるだけだ。
特筆するなら、本当に暗い。ガチで暗い。
私は魔法であたりが見渡せるが、火や光を出しただけでは、そんなに変わらないだろう。
ここに住んでいた魔物も性格が暗かったのか? と疑いたくなる。
お前ら、もっと明るくすれば良かったのに……。これじゃあ、昼か夜か分からなくなっちゃうじゃん。
まあ、ただの夜行性とか暗いところを好むとか、そういう魔物だったんだろうけど。
こんな調子なので、本当にここに伝説の魔剣・クラウソラスがあるのかと心配になってきた。
なかったら、私は当分立ち上がれないだろう。だってあるはずのお宝がないんだよ? つまり誰かが先に見つけたってことだよ? 悲しいじゃん。レアアイテムなのに……。
それにしても、やけに一本道が続く。かれこれ10分くらいは真っ直ぐ歩いている気がする。
マップを見ても、この先には分岐点はなく、最深部まで一本道だ。
いいのか? それでいいのか?!
だって、伝説の魔剣が眠ってるところだよ? セキュリティがばがばすぎない?! 本当にお宝眠ってるの?!
まあ、前世が厳しすぎるのかもしれないけどさあ。
なんて、考えているうちに、洞窟の最深部についてしまった。
最深部は少し広いスペースがあり、僅かに日の光が射していた。本当にごく僅かだ。暗いことには変わりない。
きょろきょろと注意深く辺りを見渡す。
「嘘おおぉぉぉぉ?! ないんだけどおおぉぉぉぉ?!」
そして、私の絶叫が、孤独に洞窟内に響き渡る。
魔剣・クラウソラスは何処にもない。ないないない。何処にもない!!
なんでないの?! やっぱり誰かが見つけちゃったの?! 嘘ぉ……。
はあああ、と私は深いため息を吐く。これでもかってほどため息を吐く。
くそ、無駄足かぁ。
さっさと帰って、布団にダイブしよう。そしてこのことは、綺麗さっぱり忘れようっと。
――――そう思って、私は来た道を戻ろうとした時だった。
辺りが有り得ないくらいに眩しく輝いた。
私は、思わず目を瞑ってしまう。
急になんですか?! なんかの嫌がらせですか?!
光が収まると、私は目を開けた。今まで暗いところにいたせいで、目がチカチカしている。
いきなりなんなの?! やめてよ!! びっくりするじゃんっ!
目が正常に働くようになり、最初に目に入ったのは、右手に握っているものだった。右手に重さを感じたからだ。
さっきまで握ってなかったものが、右手には存在していた。
–––––––何これ、剣?
私の体に上手くなじんでいて、体の一部だと錯覚しそうだった。そのくらい、私の体にぴったりだった。
錆一つ見当たらない銀色に輝く剣身。色鮮やかな宝石たち–––––いや魔石だ、がはめ込まれている
これが、伝説の魔剣・クラウソラス…?
あまりにも私に馴染みすぎていて、実感が湧かない。
伝説の魔剣がこんなになじんでて、いいの?! めっちゃ私にぴったりなんですけど?!
信じられない私は、魔法を使う。
「鑑定」
生活魔法の一種である、『鑑定』の魔法。食品や道具などに使え、その物の本質を見ることができる。といっても、簡単に細工が可能であり、レベルが高いものがかけた細工の魔法を見破ることができないのが欠点である。
また、自分よりレベルが低い者のステータスを見ることも可能だ。
つまり、私はほぼ全てのステータスを見ることができるわけだ。
プライバシーなんて言葉はどこかに行ってしまった。
どうなってるの、この世界のセキュリティ。
つまり、まあ私は、この剣が本当にクラウソラスかどうか確認するのだった。
「あ、本物じゃん」
ちゃんと、クラウソラスだと分かったが、本当にどうも実感が湧かない。
本物だよね、これ。本当に本当に、本物だよね?!
……まあ、ありがたくいただきますよ。クラウソラス、ほしかったし。
これから長い付き合いになりそうだ。
よろしく頼みますよ、相棒。
そんなことを思いながら、私はクラウソラスを抱きしめた。
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