5輪 しょうがくせー は さいこー だぜ
前回の『赤い空、月の影』は――
「戸愚呂。俺、もう我慢できねえ!」
「やめてよ、虻川くん。こんなところで」
「俺、お前のことがすっと好きだった」
「でも、ぼくたち男同士だよ?」
「お前だって、ずっとこうしたかったんだろ?ほら、こんなに喜んで」
「そんな、無理矢理は嫌だよ。もっとお互いを知ってから――」
「って、ナミちゃん!何してるの?」
「新作を作ってるんだぁ。えへへ。なのですわ」
「自分の癖さえ忘れてしまうとは――というか、きちんと前回のおさらいをしようよ」
「え?前回は主にこんな感じだったのではなくて?」
「ナミちゃんにはこう見えていたのか――」
「それじゃあ、『赤い空、月の影』5輪、はっじまーるよー!」
「ツキちゃん、いいところばかり取ってくね!それと、題名、もうちょっと考えてよ!」
わたしはコンパクトをきつく握りしめて言った。
「あなた、何か隠してるでしょ。魔法少女になる前にそれを教えなさい」
目の前の妖精は可愛げに首を傾ける。
「別に隠しはしないドリル。イスカは正直ドリル。だから、なんでも教えるドリル」
妖精の語った内容は衝撃的だった。
「みんな、それを知ってて魔法少女になったの?」
「普通はなる前に教えるドリルが、教える前になった場合はすぐに教えているドリル」
わたしには無理だ。
こんな現実を背負ったまま、普段の生活を送るだなんて。
「別にイスカは脅したりはしないドリル。ただ、僕は真実を言うのみ――君が魔法少女にならないのなら、別の誰かがなることになるだろうね」
そう言って妖精は姿を消した。
######
休みの日なのでわたしは外に出かける。
スケッチブックと鉛筆を何本かもって、絵を描きに行く。
わたしの夢は画家になることだ。
どうして画家になりたいのか、と言われても困る。
別に親は画家でもないし、実はそれほど絵が上手いわけでもない。
クラスのみんなは絵が上手いと言ってくれるけど、所詮は小学生の描く絵であって、世の中、もっとすごい絵を描く天才がいることをわたしは知っている。
それでも描き続けるのは、わたしが絵を描くことが好きだからだろう。
「今日もいる」
ここ最近、河原で楽器を演奏している女の子がいた。
背の高さからまだ小学校中学年くらいだと思う。
なんだかすごい子で、話したことはないけれど、行く度に別の楽器を演奏していたりする。
今日は尺八のようだ。
「なんで尺八なんだろ」
この前はバイオリンだったし、その前はボンゴを熱く演奏していた。
夢はストリートミュージシャンなのだろうか。
わたしはその女の子の姿をこっそりとスケッチする。
けれども、すぐに手が止まってしまう。
思い出さないようにしているのに、すぐに思い出してしまう。今朝の妖精の言葉を。
「どうしてみんなの名前が変わっているの?まるで洗脳されたみたいに」
「魔法少女は契約すると名前を奪われるドリル。名前のうち、どれか一つだけ残されるドリル。そして、魔法少女はいつの日か、誰の記憶からも消えていくドリル」
「そんなの、無茶苦茶よ。魔法少女にならなくちゃいけなかった子はどうなるの?」
「契約は解除できるドリル。そうすれば全て元通りドリル」
「でも、他の子が魔法少女になる。そうして命を落とすかもしれない」
「そうドリル」
妖精はまるでわたしたちの命など眼中にないようだった。
わたしたちは妖精にとっての都合のいい道具だ。
「あの、どなたでしょうか」
「え?」
わたしは楽器を演奏していた女の子に話しかけられる。
わたしはとにかく言い訳をしたように思う。
でも、本当はあまり覚えていない。
自分もまた魔法少女に選ばれたこと、そして、友だちが命尽きるまで魔法少女として戦っていること。
そして、植え付けられた恐怖。
それらが頭の中をぐるりぐるりと回って、ほとんど何も考えられないでいたのだ。
#####
芽以は独りぼっちになってしまった。
男の子たちとばかり遊んでいた芽以は小学校高学年になるにつれてだんだんと仲間外れにされるようになった。
「いまさら、どこに行けばいいって言うのよ」
男の子と一緒に遊んでいた芽以は女の子の流行を知らない。
どんなことを女の子が話しているのか。
耳にしてもまるで外国語を話されているようで聞き取ることができなかった。
「どないしろっちゅーねん!」
芽以の叫びの上を覆いかぶさるように、悲し気な旋律が響きわたっていく。
「口笛……?」
軽快なリズムを刻むその曲は口笛で演奏するには向いていない。
「君の気持ち、よく分かるよ」
「なんやっ!?」
芽以は驚いて背後に立った少女を凝視する。
(なんやかわええコやなあ)
「我は何年も君たちのような、世界にはみ出しかけの子どもたちを見てきた。だから、君が世界を恨んでいることを我はよく知っている」
「別に恨んでなんか――」
「嘘だね」
突然出された大声に芽以は思わず少女の瞳を見てしまう。
琥珀色の瞳。
心の芯まで吸い取られてしまいそうな瞳だった。
「君はこれからもずっと一人だ。それは怖いだろう?仲間外れにした男どもが恨めしいだろう?なら、それを世界にぶつけるんだ」
思わず頷こうとした芽以の額にかちゃり、と硬いものが当たる。
それがなんであるかを確認する前に引き金が弾かれた。
「さあ、最後の仕上げだ!」
少女は大きく口を開け、天を仰ぐようにして笑い転げた。
########
「やっぱり予習復習は大事よね」
「だからって、テスト前でもないのに勉強とか、頭悪いのか?」
「毎回授業に遅れてきたりするのはどこのだれかしら」
ツキはヒカリの頭を小突く。
「ゆりぃ、ゆりぃ」
「なあ、コイツ、ほんとどうにかしてくれよ」
ナミはツキとヒカリの横で別の生物のようにのたうち回っていた。
「そうね。こんなとき、ソラちゃんがいたらいいんだけど」
「そうだな」
ツキたちはソラのことも誘ったのだが、いつもの通り、やってくることはなかった。
「どうしてソラちゃんは来ないんだろう。やっぱり、わたしたちのことが嫌いなのかな」
「そんなことねえって」
ヒカリは弟をあやすようにツキの頭を撫でる。
「ゆりぃ、ゆりぃ」
「なんだかんだで、俺たちはソラにおんぶにだっこだったのかもしれないな。主にナミの世話で」
「確かに――私も時々忘れ物のお世話になることもあったし」
「俺なんか、忘れ物するのを見計らっているかのように前日に電話がかかってくるからな」
「私たちにはソラちゃんが必要なのに」
「でも、頼ってばかりじゃいけねえのかもしれない」
「!?」
ツキの眉を顰めた表情に、ヒカリは異変を察する。
「ワームか」
「ええ。そうみたい」
ナミも真剣な表情になり、ツキの家から飛び出す。
「ねえ、みんな。巻き込んじゃって、ごめんね」
ツキは噛みしめるように言った。
「別にいいよ。逆に俺たちの知らないところでくたばっちまう方が、嫌だったっつーの」
「そうですわ。お友達のためなら頑張れますのですわ――だぜ」
「お前、ほんと、それ、飽きねえよな」
「怖くはないの?」
ツキはなるべく心を落ち着かせて問う。
「怖くないわけねえだろ……」
ヒカリは呟いた。
「でもな、俺はお前が一人で戦っていなくなっちまうことの方が辛い」
「そうですわ。ツキ。あなた、一人で戦うつもりでしたのですわね――だぜ」
「だって――」
「それがテメェの悪いところだっつの。ほんと、ほっとけねぇ」
「わたくしたちが何のためにいると思っているのですの?いつも自分のことを考えようとしないツキの、いえ、月影夜空のためですのよ」
「なんでその名前を――」
「忘れるとでも思ったのか? 俺たちはゼッテーに忘れねえ」
「そうですわ。というか、わたくし、ヒカリのせいでそうですわ、としか言ってないのですわ――だぜ。魔法少女の運命になんて負けませんのですわ――だぜ」
ツキはくすりと笑う。
「ほんと、最高の友達だわ。あんたたち。ずっと、ずっと友だちだからね」
「え・い・えんの・ともだ・ち!」
「そうだぜ、ダチンコだ」
「ものの見事にぶっつぶしてくれちゃって!」
#####
生い茂る木々の立ち並ぶ林道でツキたちは止まる。
「大分黒くなってるじゃねえか……!」
ヒカリは傍に倒れている子どもたちを見て、ワームに怒りの眼差しを浴びせる。
ナミはその悲惨な光景に思わず目を伏せた。
「大丈夫。いざとなったらわたしが守るからさ」
ツキはナミの手を握る。
「ごめんなさいなのですわ。ツキたちを支えると誓ったばかりなのに」
「10年程度で俺を超えたと思うなよ?」
「なによ、それ」
ツキはヒカリを小突く。
「さーて、行きましょうか!映像化なんて夢のまた夢の、大きなお友達ほいほいな変身シーンをとくとご覧あれ!」
三人の体は光に包まれ、そのシルエットをコンパクトからのリボンが覆っていく。
リボンのラッピングがはじけた時、そこには愛と勇気とギャグの戦士が誕生する。
「作者も悪ノリしないでくれるかな」
すいません。
######
遠くの空から砂埃が舞い上がるのが見えた。
「あれは――」
わたしは絵を描く手を止める。
止めようと思ったのに、震えが止まらなくて、スケッチブックの上はひどい有様になる。
「みんなが戦っているドリル」
いつの間にか妖精が出てきていたけれど、いつものことなのでもう慣れてしまっていた。
「いかないドリルか?」
「行ってどうするの?」
どうせわたしの力などいらない。
わたしはいつも邪魔な存在で、みんなに迷惑ばかりかけていて――
「でも、あのワームが完全に黒くなってしまったら、果たして3人だけで倒せるかな?」
そんなの、大丈夫に決まっている。
3人は変身さえ怖がっているわたしとは違って、何でもできる、そんな子たちだから――
でも、わたしの期待を裏切るように、天高く舞う砂埃は止みそうもない。
砂煙とともに、宙を舞う人影が見えた。
わたしは恐怖のあまり、走り出していた。
#######
「ツキ!?」
先陣を切って戦っていたツキはワームに突き飛ばされ、天を舞った後、勢いよく地面に落ちる。
「いてててて。こりゃあ、強いね」
痛くもないような顔で言っているツキだが、ヒカリとナミはツキが痛みを我慢していることをよく分かっていた。
「まだ、全部黒くなってないのにこれだけ強いとは――」
ツキは地面に唾を吐く。
雑木に垂れかかった唾は赤く染まっていた。
(単純に数が足りない――)
魔法少女の魔法はみんなで力を合わせればそれだけ威力が倍増する、というような、簡単なものではなかった。
同じ系統の魔法は互いに干渉し合い、効果を打ち消しあう。
だからこそ魔法少女のチームの中で最も核を担うのは唯一魔法の威力を強めることができる強化系なのであるが――
(強化系を使えるのは私だけ。でも、ワームの動きを止めなければ、攻撃は決まらない――)
さらに、黒くなり始めたワームは魔法に対する耐性を持ち始め、ヒカリの魔砲をかるくはじき返すようになっていた。
(物理的にワームの動きを止めつつ、ワームの魔法耐性を弱体化させないとダメだけど)
現在、ワームの耐性を弱体化できるのは変質系を得意とするナミだった。
(私が具現化系でワームの動きを食い止めつつ、ヒカリの魔砲を強化する……でも、2系統同時に使用できるか……)
ツキが考え込み、集中力が切れている時に、ワームは口から魔砲を放つ。
「嘘でしょ――」
ツキたちは魔砲に飲み込まれた。
「大丈夫……じゃなさそうね」
「ったく、なんで野郎も魔砲を使えるんだ?聞いてねえぞ」
「わたくしたちの攻撃を見て、学んで使った、とかなのですの?」
「そういうこともあり得るのか……」
ワームの特性上あり得ない話ではないとツキは考えた。
だが、そうなるとますますピンチである。
「ギリギリまで、ガンバって――」
「ギリギリまで踏ん張って――」
「ピンチだ、ピンチだ、どうにもならない。そんな時――」
「「「ウルトラマンが欲しい!」」」
「ウルトラマンじゃなくてごめんだけど!」
ワームと無理矢理にも立ち上がった3人の魔法少女との間に一人の少女が立ちはだかる。
その少女は、自分に自信がなくって、すぐに誰かのことを羨ましがって、嫉妬して。
そのくせ、何かを手に入れるための努力なんてしなくて、いつも受け身ばかりで。
でも、そんな自分自身が情けなくて――
「わたしも変われるかな」
「ソラちゃん。魔法少女になるっていうことは――」
「知ってる。でも、それでもみんなは魔法少女になって戦ってるんでしょう?もう、わたしだけ逃げるなんてできない。ずっと、ずっと、こんな弱虫なわたしをみんなは助けてきてくれたんだから!」
みんなを拒んでいたのはわたしだった。
みんなを嫌っていたのはわたしだけだった。
自分を役立たずだと思っていたのも、わたしだけだった。
「こんなわたしでも、変わって見せるから!だから、みんな、見守っていてくれる?」
「もちろん!」
「ったりめえよ!」
「終わったらホテルで夜が明けるまでカップリングのお話をするのですわだぜ!」
「ホテルとかカップリングは聞かなかったことにするね」
わたしは妖精に渡されたコンパクトを取り出す。
手がどうしようもなく震える。
「でも、それでいいんだ。それがいいんだ」
恐怖を忘れるなんてできない。
恐怖を忘れることこそ一番怖い。
だから、わたしはいつも恐れて生きて行こう。
ずっとずっと恐怖と並んで歩いていこう!
「ドリーム・コンパクト! メイク・ドロー!」
わたしの体を快楽が包み込む。
快楽の光はわたしを丸裸にし、リボンはそんなわたしのデリケートな部分を――
「ナミちゃん?」
「あら。わたくしとしたことが、興に乗ってしまったのですわ」
みんなと同じシークエンスを経て、魔法少女に変身する。
「その短縮もどうかと思うけど」
「だんだん1輪あたりが長くなってきているのでいいの!」
それほど長く続けるつもりはなかったものの、どんどんと長くなっているのが悩みなのだ。
「さあ、4人そろったし、行くよ!」
わたしたちはそれぞれポーズをとって決め台詞を吐く。
「ギニュー特戦隊!」
「いや、一気にビジュアルが――」
「俺は赤いからジースだな」
「あっ。いいやつから取って!」
「じゃあ、わたくしは巨乳枠のグルドですわだぜ」
「グルトのどこに巨乳要素が!?」
わたしとツキちゃんは互いに見つめ合う。
その小さな唇に吸い込まれるように二人の小さな裂け目は――
「はいはい。ナミ。そこまで。さて、どっちがギニューをとるか――」
「もう、バーターでもリクームでも一緒な気がするけど……というか、特戦隊には一人足りないような……」
「じゃあ、ワームちゃんが隊長なのですわだぜ」
「なのですわだぜ、に慣れると、それ以外は考えられなくなっちまうな」
「光栄なのですわだぜ」
「すぺしゃるふぁいてぃんぐぽーず!」
ワームを中心とし、すぺしゃるふぁいてぃんぐぽーずをとろうとするが、ワームに暴れられ、とん挫する。
「この! 隊長のくせにノリが悪いぞ!」
「いや、ツキちゃんたちが戦闘時に変なノリをするから」
「だってさー、こういう時しかボケられないじゃん」
「いや、きっと他にもボケられる時があるよ? というか、わたしたち、いつもボケボケだよね!?」
「お二人とも、痴話げんかもわたくし得なのですけれどもなのですわだぜ」
「ひゅーひゅー」
「もう、みんな面倒臭いけれど。というかワームさんも空気を読んでか動かないよ?」
「いや、あれは完全体になってるのね。人造人間を飲み込んだのか、はたまた、紋章とタグを手に入れて超進化したのか」
「俺的にはワープ進化が究極進化ってのに変わったのが腑に落ちねえな。というか、アーマー進化もしてくれていいんだぜ?俺的アーマー進化だからよ」
ワームは進化を終えたようで、漆黒の体を自慢げにわたしたちに見せつける。
「あいつは恐ろしいほどに進化を遂げる。それこそアポカリモンのようにね。劇場版からテイマーズまで引っ張ったのは本気で正気を疑ったけど、私の言いたいこと分かったわよね」
「全然分からないよ」
「だと思った」
ツキちゃんはうんうん、と腕を組んで頷く。
「つまり、ソラちゃんとナミはワームを抑えて。私とヒカリとで一撃必殺をお見舞いするから」
「でも、わたし、魔法の使い方なんか――」
「わたくしがてとりあしとりくちとりこしとりをおおしえしますのですわだぜ」
「なんで全部ひらがなに? それと、目を光らせないで!」
ともかく、わたしたちは黒化ワームに立ち向かう。
「で、どうすれば――」
「魔法の基本は妄想なのですの。だから、たくましい妄想をすれば――きゃっ」
「何を想像したの? というか、さっきので何を想像できたの?」
「百合の花、綺麗な匂い、舞い散る花びら、触れる手と手、絡まる細足、漏れる甘い声――」
「ナミちゃん、わたしに何を想像させようとしてるの!?」
「あら。ソラちゃんなら立派なものが描けると思うのですの――ぽっ」
でも、なんとなくナミちゃんの言いたいことは分かった。
ご都合主義だけど、うん。
なんくるないさー!
わたしはバトンを取り出す。
そして、頭の中に描いた詳細を形にする。
「やらないか、やらないか、やら、やらないかい、こ、の、きもちは、と・め・ら・れ・ない!」
つまりはいさじだ!
わたしはバトンを振るう。
すると、ワームを押さえる白色の巨人が現れた。
それは石膏像で――
「ダビデ像ですの」
でも、顔はあべさんなわけで。
「これはこれで大いにアリですわ!もう、ビデオに撮りたいくらいの――うほっ。虫さんでそんなプレイを――ああ、そこの絡みはもっと激しく!」
わたしはバトンでナミちゃんの頭を殴る。
「もう。止めてくださらない? わたくし、子どもの頃やんちゃで木から落ちた時のケガで額に傷ができて、おにいたまをケガさせてしまったときのトラウマがあるのですの――だぜ」
「放課後のプレアデスか! それと、設定をそのまま使うのは色々問題だから!」
ガイナックス & スバル。
「それもありですわ!」
「もう、なんででもできるのね」
アントニオ猪木よりも凄い子なのかもしれない。
でも、わたしの力だけではやっぱり耐えられず、ワームは徐々にアベダビデを押しのけ始めている。
「いきますわよ!いーち、にー、さーん、だー!」
「折角可愛い顔がしゃくれ顔に!?」
ちょっと泣いちゃいそうになった。
「大丈夫なのですわ。わたしにとっての一番はいつもソラちゃんなのですわ。(性的に)」
「最後の言葉、要らなかったんじゃない!?」
やっとナミちゃんはバトンを振り、魔法を使う。
魔法をかけられたワームの体から白い百合の花と、赤いバラの花が咲き誇る。むせかえるほどに濃厚な花の匂いが充満する。
「動きが止まった――」
ワームは動きを止めていた。
つまり、今がチャンス――
「ふるえるぞはーと! もえつきるほどひーと! きざむぞ! けつえきのびーと!」
「波紋となにか関係が――」
「あるわけねえだろ! さんらいといえろーおーばーどらいぶ!」
ヒカリちゃんの肩をツキちゃんが抱いて――
「ゆりぃ、ゆりぃ」
ヒカリちゃんは極太の魔砲を発射する。
「あまり露骨なのはどうなのかと思いますのですわ」
魔砲は黒化ワームを全て包み込み、
「まさにエロの神が降臨しましたのですわ!」
ワームは跡形もなく消えた。
「なんだかとっても締まりのない――」
「下ネタばかり言うのはどうかと思いますのですわ」
「我はお前さんにだけは言われたくないと思うんだが!」
またも魔女はわたしたちの前に現れた。
「これで我の実験は最終段階に進む。ご協力ありがとう。愚かなる魔法少女の諸君」
「あなたの目的は何なの?」
ツキちゃんは叫ぶ。
「なに。我はそこの妖精に復讐するだけのことだ。そのついでとして世界にも滅びてもらうというか、そこの妖精に復讐するためには世界を滅ぼさねばならんわけだな」
「どういうこと?」
わたしたちは傍観していた妖精を見る。
「まあ、それはいつかどこかでということでドリル」
「どうやって世界を滅ぼそうって言うの? 魔法で滅ぼそうとでもいうわけ?」
すると、魔女は鼻で笑う。
「ふんっ。諸君らはまだ魔法というものが現実に存在すると信じているのか。子どもだな。まあ、子どもだから魔法少女でいられるのか」
「あれだろ?10本のろすとぼとるを黒いぱんどらぱねるにはめるんだろ?エボルマッチ」
「それを言うなら、ろすとまっちだと訂正しておこう。ウチュミさん、これから先出番あるのだろうか。というか、じーにあすが使えなくなる理由は解明されるのか。今さら突然精神論言われてもな。我、萎えるぞ。そもそもに各強化形態がだな――」
「そいつを渡しなさい!」
ツキちゃんは魔女に魔法を放つ。
だが、魔女は魔法を片手で受け止めてしまう。
「諸君らではまだ、はざーどれべるが足りないようだ。今のはざーどれべるを計ってやろう」
魔女はわたしたちのスカートをめくる。
「ちょっ。どこ触っているのよ!」
「いや、はざーどれべるの計測には分泌液の採取が不可欠でだな」
「ただのセクハラよね!?」
目にも止まらぬ速さで爆走した魔女は落ち着いた様子で言う。
「そこの赤髪。はざーどれべるはさんてんはち。まだまだだな」
「すくらっしゅどらいばーはまだ使いこなせないか」
「そして、そこのとっても揉みがいのあるおっぱい。はざーどれべるはよんてんに」
「褒めても何も出ませんのですわ」
「いや、思いっきりセクハラだからね!ナミちゃん、騙されて――」
「わたくしからナニが出てしまうと言うのですの!?」
「きりゅうせんと。お前は――はざーどれべるさんてんご。養殖物にしてはなかなかやるじゃないか」
「いや、結局どっちが養殖されてたのか最終的にはよく分からなくなったけどって、そうじゃなくて、なんでわたしだけそんな名前に!?」
「そう言えば、せんとってどこからとったんだろうな。だって、かつらぎたくみはごりらもんど使いだっただろ?なら、ごりもんのすけとかになったんじゃねぇか?」
「ヒカリちゃん!?完全に魔女のペースに乗せられてるよ!?」
「そして、そこの世界一のいいこちゃんのはざーどれべるは――ななだ。おめでとう。 とうとう 人間で なくなったな!」
きゃははは、と魔女は笑う。
「どういうこと?」
「さあ、な。魔女は多くを語らないし、嘘つきだからな」
そう言って魔女は霞に消えた。
#####
「ねえ、ツキちゃん。さっきのはどういうこと?」
「魔女の方便よ」
ツキちゃんはきっぱりと即答する。
それがなんだかおかしいとわたしは思った。
「ねえ、隠し事しないで。みんなもなんで黙ってるの?」
もしかして――とわたしのこころに疑心が生まれる。
「みんな、何か知ってるの?わたしの知らないことをなにか知ってるのね?」
誰も何も言わなかった。
わたしはそれを答えだと受け取った。
「信じられない――」
折角信じようと思ったのに。
友だちだと思ったのに。
「最低っ」
わたしはそう吐き捨てて、みんなに背を向けた。
そして、逃げるように走り去った。
次回予告
「大分本編のネタも過激になりましたのですわ」
「主にお前のせいじゃねえか」
「そんな、褒めないでくださいなのですわ」
「絶対に褒めてねえからな!」
「でも、見る人が少ないからこうやって無茶もできるってもんよね」
「あんまり過激だと卍されっからな」
「全く、魔法少女という奴らは騒がしい。もう少し静かにしてくれないか」
「いや、今回一番はしゃいだのはお前な気がするぞ!」
「作者に金があれば劇場版びぅども見に行けるのに」
「げげるのしーんは見せないようにしますね」
「もう、誰がしゃべってるのか分からねえよ! みんなのパンツの色を教えてくれ」
「だれ、コイツ……」
『次回、竹内緋色、ポルノを書く』
むねのどきどき、とまらないよ!
「にちあさを汚すのはほどほどにしろよ?」
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