振り返ればあの時ヤれたかも

秋野シモン

一日目

「俺と...付き合ってくれ」


「ごめんなさい!」


「な...」


走り去る彼女の背中を、俺はただ見つめることしか出来なかった。


「やっちまった...」


言うチャンスはいくらでもあった。

入学式、夏休み、学園祭。

だけど俺はへたれ続けて、そのチャンスをことごとく不意にした。

そして、やっと言えたのが終業式の後とは。


いや、タイミングの問題じゃねぇな。そんな考えはただの逃げだ。


俺が恋愛対象として見られてなかっただけか。


「ちっくしょー!」


そのとき、扉が開いて。


「おいお前!屋上で何叫んでる!早く帰れ!」


「すみません...」


しまらないな。まったく。


~~~~~~~~~~


家に帰ると、母さんが夕飯作りをしながら、顔も向けずに訊いてくる。


「シンジ、今日はミコトちゃんと一緒じゃないの?」


「うん」


もうあいつに会えそうにないな。


自分の部屋に向かい階段を登ると、母さんがまた見ずに声をかける。


「もうご飯だからすぐに降りて来てね」


自分の部屋のドアノブに手をかけて、もう引きこもりになろうかとか考えて、結局無理だと結論づけて、部屋に入る。


見知らぬ女がお茶を飲んでいた。


「は?」


「あ、どうも」


「誰?」


「ふむ、突然の出来事に対する反応としては、意外と冷静ですね」


そう言いながら、まだお茶をすする女。


「いや、答えろよ」


「初見の人間に対して、随分強気ですね」


「すみません...」


「いいですよ、別に。あなたと私は同い年のはずですし」


さっきから何を言ってるんだ?


女はようやく湯のみを置き、立ち上がる。


「初めまして。トキノ管理局、時空犯罪防止課から来ました、コードA-KIです。アキと呼んでください」


「トキノかんりきょく?こーど?」


「その事についての説明もしますがその前に、一つ確認を」


「?」


「あなたは、幼馴染みの天明寺ミコトにフラれましたね」


「う...」


「その反応は肯定と認識します。了解。記録通りです」


「いったい何なんだよ!何で知ってんだよ!」


「では説明します」


女...アキは俺に少し詰めよる。


「私は、あなたが犯罪者になるのを止めに来ました」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る