怪異的奇譚集

如月逸佳

意地悪

彼はいつも私に対して「意地悪」をして来た。


小学校の時、私が給食で牛乳を飲んでいる時に急に笑わせてきて、思わず牛乳を吹いてしまった。

中学の時は、私のお弁当からいつも私の好物であるデザートの林檎を持っていった。

その事を友人に相談すると

「きっと、其奴はあんたの事好きなのよ。

だから、何時も意地悪してくるの。

男子ってそうゆうものよ。」

と言われた。その時は、そんな訳ないと思っていたが、改めて考えてみるとそうなのかもしれないと思ってしまい、段々と此方が意識してしまうようになってしまった。そして、いつのまにか、彼の事が好きになっていた。

しかし、告白する勇気も湧かず、中学卒業の日を迎えていた。

( 私と彼は違う学校に進む。此れが最後のチャンス。今日こそ告白をしよう)

と覚悟を決めた私の元に一本の電話がかかってきた。

彼が交通事故で亡くなったと言う知らせだった。

私は、悲しくて涙が止まらなかった。その日の卒業式にも参加しなかった。

( もう私も死んでしまおう。彼の後を追おう)

そう思った私は気がつくと家の近くの線路の前に立っていた。そしてなんの躊躇もなく、其の線路の中に足を踏み入れた。

電車のヘッドライトが近づいてくる。

(これで彼の元に行ける)

と思った其のとき、後ろから誰かに押された。

私の直ぐ後ろを電車が走り去っていく。

後の空っぽの線路に立っていたのは、死んだ筈の彼だった。彼は微笑むと空気のように消えた。

すると、私の目から自然と涙が溢れてきた。


彼は最後の最後までやっぱり意地悪だった。


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