君がため

夏の暑さを心地よく思えたのは何歳までだったろう?

大人になってうちわはクーラーに変化した。

あの日、君は僕をプールに突然誘って来た。

僕は受話器の向こう側の震える声の君の気持ちも分からないまま…自転車で走り出していた。


君は瞳を赤くして突然、僕にキスをした。


唇の暑さに夏の暑さを忘れた。


夏の暑さを心地よく感じたのはあの夏までだったのか…。


9月に君は雨を残して消えた。


幼い僕にはベッドの中でうずくまる事しか出来なかった。


あの夏のプールの中に想い出も愛しさも捨てた。


抱きしめたかった!君のキスに答えを見出だせば良かった!


あれから僕は君の姿を探しては胸が張り裂けそうになった。


少年から青年、大人になった僕は夏の暑さを懐かしの君がために感じています。


君も忘れないで…。




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