第38話 はたして人は平等か
去年末、新卒の新入社員がパーマをあてた。
今風、細身、色白、醤油顔
髪色も真っ黒から茶色くなった。
工業高校を経て給料を貰いだし、初めて自分の髪をやりたいようにやってみたわけだ。
18歳、米津玄師風。
一方、もう一人の後輩も去年末からパーマをあてている。
米津玄師より一週間ほど後だ。
こちらは29歳、既婚、2児の子持ち、一戸建て、愛車はボクシー。
以前乗っていたハリアーは事故で本当に鷹が飛びたったとのこと。
つまり去年末に我が職場でほぼ同時期に2人の人間がほぼ同じパーマをあてた。
パーマをあてる工程はほぼ同じであったと思われる。
価格についてはさだかではない。
しかし結果は往々にして違った。
ジョンレノンはワーキング・クラス・ヒーローで『宗教とセックスとテレビに酔わされて誰もが平等と信じ込まされていた』と歌ったが、確かに小学校の授業で「人は平等だ」と聞かされた気がする。
「平等と信じ込まされていた」
するどいなジョン
やるじゃないジョン
この部分に関しては自分も全くジョンと同意見だ。
人間とは、いや、そもそも生きとし生ける全てのものは不平等だ。
その生き物から何もかもを削ぎ落とし、魂というものが残るとするならば、その価値は等しいのかもしれない。
しかしそれが一度タンパク質をまとった時、外骨格をまとった時、はたまた植物細胞をまとった時に、
それはすでに何一つとして平等ではない。
平等とは「平等な権利」を指し、それはしばしば人間が生まれ持っているかのように言われるがこれは勘違いであり虚構である。人は何ももたずに生まれ、何ももたずに死んでいく。
しかし生まれた家が違い、瞳や髪や肌の色が違い、城のような家に生まれ何不自由なく暮らす者もいれば一生ゴミを拾う生活から抜け出せない子もいるのだ。
また容姿の良い女性とそうでない女性では生涯年収に差が出るという。
これは経済学者が統計をとって調べたことで、美人は普通の人より8%収入が多く、ブスは普通の人より4%少ないという結果が出たそうだ。
これを大卒のサラリーマンの平均生涯年収に当てはめると美人は普通より2400万円多く、ブスは普通より1200万円少ない、すなわち美人はブスより3600万円収入が多いらしいのだ。
美人がブスより12%仕事ができるわけではないだろう。美人が得をしているのだ。
もし教師が、政治家や宗教者が、人は平等だと言うならばその人間の事は疑った方がいい。平等を目指すのはかまわない。
しかし人は、生き物は平等ではない。
話を戻して、
新卒はパーマをあて米津玄師となった。
あっぱれである。
ほまれである。
一方中途はパーマをあて、おばちゃんとなった。これまたあっぱれである。
ほまれである。
おばちゃんのパーマは2度目である。
以前に一度挑戦し、散々な評判に終わった。
しかし充分な冷却期間をあけ、おばちゃんは再びパーマにチャレンジした。
本人が言うところによると
「いけると思った」
とのことだ。
そういえば少し前におばちゃんが「カラオケで歌えないとモテないから」と米津玄師を練習したという話を聞いた。
おばちゃんはおばちゃんを目指したわけではなかったかもしれない。
おばちゃんは米津玄師に寄せていってたのかもしれない。
しかし、似たようなパーマをあて一方は米津玄師、もう一方はおばちゃんになってしまった。
職場で修理の出動要請がかかる。
工場に常駐し電気設備が壊れたら修理するのだ。
おばちゃんがカゴに工具や材料を入れて出動してゆく。
スーパーの買い物カゴのようなカゴである。
その時は荷物が多かった。
おばちゃんがスーパーのかごを肘で抱えて出動していく。
その姿は夕飯の材料を選んでレジへ向かうおばちゃんそのものだ。
その時僕にはうっすらとカゴからはみ出た葱が見えました。
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