地元に30年以上暮らしてるのに1人ぼっちの俺の友達は亀
@nichirai
第1話 2018年7月28日
孤独だ。
結婚し子供もいるが、俺は孤独を抱えている。友人がいないのだ。
孤独には大きくわけて2つ種類がある。1つは1人でいることを望んでいる、または苦にしていない。困っていないのだ。
もう1つは言わずもがな、望んでいない孤独だ。
友達がほしいのにおらず、ツレや親友という響きに憧れながら日々を生活している。
なんならビクビクしながら過ごしている。
勤め先で同僚の話を聞く。「昨日家飲みして・・・」「今度友達の結婚式で・・・」「ツレとキャンプに行って」
昨今のスマホゲームだとコンボということになるのだろうか?家飲み、友達の結婚式、キャンプ・・・
この3フレーズはかなりくる。
削られる。「その話なら帰り際にしてくれ」と思う。
帰り際ならその話を聞いて孤独に苛まれても家に逃げ帰ることができる。家に帰り会社を忘れることで無毒化することができる。
朝イチにしてくんな。
仕事前の軽い世間話でしてくんな。
自分の孤独を思い出し、足取り重く腰重く、自意識でいっぱいの頭をひこずりながら仕事をすることになる。
表面上ニコニコと聞いているが心中穏やかではない。
劣等感というか何というか、(ああ、また家飲みしたんだ・・・ダンロンフウハツ、話は尽きず、気づいたら朝だったんだ・・・)
(ああ、また結婚式行ったんだ。今月3回目でお祝儀貧乏なんだ)「うわぁきちぃ、なぁ~」と合いの手を入れながら羨ましくて仕方がない。
そして自分のひきつった笑顔を思い、また落ち込むのだ。
また「望まず孤独な人間」は1つ深刻な問題をもつ。
色んなことの経験値が低すぎて知らないことだらけで会話が弾まないのだ。
人と会う用事もなく、集まって何かやるわけでもない。
家にいるのだから。
「○○の道を××の交差点で左に曲がってコンビニの反対側にラーメン屋が・・・」
○○の道が分からず、したがって××の交差点も分からない。
そしてラーメン
またラーメン食いにいってるやん
またラーメン食ってるやん
「ええ~知ら~ん、そんなん出来とんじゃ」
で、話が終わる。
話が広がらない。相手もつまらないだろうな、と思う。
また興味の範疇が狭い、守備範囲が人と違う、というのもあるかもしれない。言い訳だが。
社会人になってから友達ができない、という文章を読むことがある。
会社と家の往復になり、運よく趣味の合う人間が見つかればいいのかもしれないが見つからず、学生時代の友人とも疎遠になっていき、気づけば先細りの人生になっている。
閉じたコミュニティと言うか、孤独な人間にとって出来上がったグループに後から入るのは至難の技だ。
実際には友達のいる人間には新しい友達ができ、友達のいない人間はいつまでたっても友達が増えないように思う。
コミュニケーション能力に雲泥の差がある。
もはや奇跡を待つしかないのか。
春先に亀をとってきた。
ミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)だ。
セメントを練る容器に水を入れ甲羅干しをする陸地を作ってやる。
はじめは近寄ると水に潜って容器の角を足でひっかいていたが、そのうちに「餌をくれるヤツ」と覚えたのか、近寄っても逃げなくなってきた。水に浮いてこちらを見ている。
「早く餌を出せよ」
と言っているようだ。
育った場所の環境によるのか、こいつはドッグフードの亀版のような餌を食べない。餌を糸ミミズのようにしてキューブ状に固めたヤツしか食べない。
あと浮草を入れているとそれを齧っているようだ。植物性の栄養も欲するのかもしれない。
キューブが頭と同じくらいの大きさなので、それを8つにちぎって水に浮かべる。
すぐによってきて齧りつく。味わう、ということには興味はないらしく丸飲みにする。
一片が少し大きいと餌を咥えたまま前足でちぎる仕草が愛らしい。
毎朝出勤前にこれをやるのが俺の日課だ。
便宜上、カメと呼んでいるが名前はない。
朝近寄ると泳いで寄ってきて水面からこちらを眺める。
心が通じている気がする。
「カメ・・・」
俺のたった1人の友達。
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