第2話 Don’t call me baby

あなたと出会ったのは14年前。

高校の部活も夏で引退し、進路は美容専門学校に決まり、早々に僕はアルバイトを始めた。

家の近所のイタリアンで、昼間はカフェ、夜はバーになっていた。


少し冷たく、人を寄せ付けない。

そんな第一印象は、すぐに取り払われた。

入ったばかりの僕以外のスタッフとは仲良く話し、時折見せる八重歯と笑顔が可愛かった。

僕より5つ年上のあなたは調理師の学校を出たあとにココに就職したみたいだ。

まだ高校生だった僕は、夜のバーからしか入れず、カフェメインのあなたとは交代時間に会えるか会えないかだった。

初めは気にもしていなかったあなたの存在を意識するようになったのは、専門学校に入学して1年がすぎた頃だった。

僕が通っていた専門学校は、日・月曜日が休みで、ちょうどその曜日のカフェが人手不足になり、手伝うようになった。


カフェの初日、挨拶を終えた僕にあなたは、

「これから、よろしくね」

と、一言声をかけ、微笑んだ。

横をすり抜け厨房へと消えるあなたの残り香が甘くて、僕の中の何かをかき立てるような気がした。




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「僕が必要」だなんて言わないで @Mu93

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