星と少女の幻想物語

@Ltein

第1話 星を見た銀髪の少女

「きれいだね」


少女はそう言った。

澄んだ黒い瞳、輝く銀髪。そして柔らかい笑顔

とても、とても眩しかった。


「うん、凄く綺麗だ」


満天の星も美しかった。だがそれ以上に、この少女が美しく、煌びやかだった。

この一瞬を、この時を共有できる事が何よりも幸せだった。



ずっとこんな夜空を眺めていたい…

この時を共有し続けていたい…

山頂の、周りに木々が無く、一部だけが芝生みたいに広がっている大地に、2人で寝そべりながら僕は思った。



キミもそう思っているだろうか?

僕と同じ時を過ごして幸せだろうか?

思ってくれたら…想ってくれたら…



「ふふっ、なに浮かない顔してるの?

男ならもっとシャキッとしなさいよ」


キミは微笑んで、僕に元気をくれた。


「キミ、名前は?」


「みなと、神崎湊だよ」


「私は成宮凪。湊くんか、いい名前だね!」


「キミもね」


キミはムスっとした。


「名前教えたんだから凪って呼んでよ」


「うん…な、凪」


僕の恥ずかしそうな表情を見て満足したのか、キミはまた笑った。


「な〜に〜?」


「また…会えるといいね。2人でまた、この夜空を見上げよう」


「会えるよ。絶対に、会ってみせる。

だから、はいこれ。お揃いのキーホルダーあげる。大切にしてよね!」


そう言って差し出したのは、右半分の星型のキーホルダーだった。


「じゃあまた逢える日まで!

そのキーホルダー持ってれば逢えるから!」


「ありがとう。じゃ、また逢える日まで!」


その少女は、颯爽と駆けて行った。



遠い夏の夜の記憶。

あの少女は今、元気にしているのだろうか…?




薄暗く、蒼い空を、小鳥のさえずりで包む朝。

スマホのアラームが鳴り響き、目が醒める。


「眠たい…学校めんどくさい…」


布団をめくって歯を磨く。

薄汚いパジャマとぐちゃぐちゃの寝癖が相俟って、だらしない姿になっている。

時計は6時50分を指し、食欲が無いのに食パンを無理矢理食べた頃にはもう、空は朝焼けに染まっていた。

のんびりテレビを見ながら、スマホをいじっていたら、とあるニュースが耳に留まった。


『今日は流星群が見られます。星を眺める絶好のチャンスです!是非見てください。』


ここ都会だから星なんて一等星くらいしか見えねえよ…

そんなことを考えていると、

ふと昔の夏の夜の記憶がよぎった。


「また逢える日まで!」


あの少女って今どこに居るのかな?

ひょっとしたら、案外近かったりして。

いや、思うだけ無駄か。

連絡先も知らないし、どこに住んで居るかもわからない。

手がかりはこのキーホルダーだけだしな。

7時半なり、制服に着替えた。


「じゃあな、ロン」


「ワン!」


もうだいぶ明るくなり、暑いな…と思い始めて来た春の終わり。


「今日も頑張るか…」


と、呟いて家を出た。

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