妹のツン度が高すぎる件

柊木ウィング

プロローグ

「今日ご飯食べに行くんだけどさ、行きたいところとかある――」


「はあ!? 喋りかけないでください!」


 私の言葉を聞いた兄――唯我海斗ゆいがかいとは、落ち込んだままリビングへと向かっていきました。


 …………あああああああああああ!!!!


 まただ……またやってしまいました! どうしてもお兄ちゃんの前になると、口が悪くなってしまいます。私の悪い癖です。

 中学に上がってから、お兄ちゃんに対して性格が悪くなってしまうのは何故でしょうか。答え無しのテストを解いている気分です。


 仲直りをしたいですが、そもそも喧嘩をしているのかすらわからない状況でどういった行動をとるべきなのでしょう。

 ……そういえば、お兄ちゃんの部屋にラブコメらしきライトノベルが置いてありました。少し拝借しましょう。


 私の部屋とお兄ちゃんの部屋は隣同士。現在お兄ちゃんは一階のリビングにいると思われます。

 ――都合がいいですね。神様に今のうちに読め、と言われている気分です。


「…………失礼します」


 お兄ちゃんの部屋は本がたくさん置いてあります。全てがライトノベルと呼ばれるものか、マンガと呼ばれるものですが。

 この類に興味はありませんが、このままの関係でお兄ちゃんに家を出て行かれても困ります。


 お兄ちゃんは高校二年生になったばかり。下手をすれば後二年ほどで一人暮らしを始める可能性が……!

 その前にどうにかしなければなりません。相手を変えるより、まずは自分を変えろです。


 私は手近かにあったライトノベルを手に取って、数分間熟読して一巻を読み終えました。

 勉強が得意な私にとって、こんなもの朝飯前です!

 ……それにしても、


「やっぱりお兄ちゃんは、自分にデレデレしてくれる人が好きなのでしょうか。さっき読んだ本には、主人公に対してデレデレするキャラが多かった気が……」


 私が読んだ本はいわゆる、“ハーレム系”だったのでしょう。やたら女の子が出てきました。

 お兄ちゃんも思春期の男の子、中学生の私は出る幕すらないのでしょうか。大人の方がいいのでしょうか。……手遅れ?


 ――弱気になってはダメです。遅れがあったとしても、それを取り戻せるかどうかは自分の行動次第なのです。


 さらに別の本を読んでみると、先程と同様に主人公にデレデレする人が現れました。


「わかりました。お兄ちゃんは“萌えキャラ”と、呼ばれる方が好きみたいですね。……なれるかわかりませんが、なってみせますよ!」


 本を本棚に戻して、私は胸元で小さくガッツポーズを行いました。

 絶対にお兄ちゃんを振り向かせてみせます!


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