異世界さんぽ道~散歩中に異世界転移したから散歩を続行する〜

@makaroni1028

第1話 side俺

 散歩はいいものだ。

 全身全霊で街を、山を、海辺を歩き、全身全霊で一日を感じる。

 頬を撫でる春のそよ風、照りつける夏の太陽、踏みしめる秋の落ち葉、肌を刺す冬の寒波。

 あぁ、俺は日本を生きている。


 さて、そんな俺だが、今日も散歩を楽しんでいる。

 今日は少し足を伸ばして森林浴でもしようかと、隣町の森までやってきたわけだが……


「……神社かこれ?」


 苔むして朽ちて今にも倒れそうな木造の鳥居がひょっこりと現れた。


「手入れされてないって事は今は何も祀ってないのか?ふーん……」


 ここで、俺にちょっと魔が差した。


「……ちょっと、行ってみっか」


 そう思って、意気揚々と鳥居に踏み込んだ。


「どこここ?」


 鳥居を通り抜けて瞬きした瞬間、目の前の森が別の森になり、鳥居は消えた。


「…………あれ?帰り道は?あれ、これ帰れねぇじゃんよ!はぁー!マジかよぉ?!ウッソだろおい!」


 『家に帰るまでが散歩』を心がけている俺にとって、家に帰れないということは『散歩が終われない』事を意味する。

俺は、家に帰れるまで散歩を決意したのだった。

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