私が消失するまでの物語
河咲愛乃
学校編
ありきたりな毎日 朝
「おはよ」
完全に覚め切っていない脳を働かせるために言葉だけでも一応言っておく。まだから差し込む光が少し眩しい。まあそれに返してくれる人なんかこの家にはいないんだけどね。私の部屋以外真っ暗なところを見て、あの人たちはもういないことを感じさせられる。返してくれるのは学校に行ったらいる友達かな。だから毎日学校に行く。一人で話すのはやっぱりつまらないものだから。
外に出て田んぼ道をのんびり歩く。学校までは電車通だ。この街は田舎すぎて高校がない。だから都会まで出ていく必要があるのだった。駅までは歩いて約5分。
ホームが二つしかないし、コンビニもないしつまらないけどなんか昔からあった温かみがある。古いけどしっかり掃除もされているし綺麗なところは綺麗だ。
電車に乗って、15分。目的地の駅に着いた。そこからはバスで行く。今日は雨が降っていないので結構空いている。席に座ってスマホをいじり始めた。
『消失5分前通告に決定』
というタイトルの記事がトップに出てきたのでなんとなく押してみた。
『今まで消失する際、何も通告が出されず気づいたら消えていっていたということがほとんどだった。昔の日本は消失というより死だったのでいきなりだったが、今の時代はわかるなら通知してはどうかという意見が多く出されており、それに対して政府は5分前に通告することを決定した。この5分前という数字は相手の消失期限が政府に通告されるのと同じ時間帯だ。政府は国民全員が所持しているARにそれを通告させるという。この制度は来年度から始まると先ほど発表された』
来年か、その頃まで私は生きているのかな。生きていると嬉しいけどね。消失してもしなくてもこの世界はそうそう変わるもんでもないし。来世に期待でもするか。この記事を読んでいる間に学校に着いた。
校門のカードスキャナーに手をタッチした瞬間にドアは開く。1秒もかからない間にその人が学校関係者に登録されているかわかってしまうのだ。もし両親が来た場合は学校から支給されるその日、その時間帯限定のカードが渡される。そのカードにはパスワードロックがかかっており、そのパスワードは渡される際にARに記憶させられているだけなので、誰にもわからない。そのまま校舎内を歩いて自分のクラスについた。ここでもARが活躍する。ARは脳と連携しているので、その人がその部屋に入るに適しているか瞬時に判断してくれる。用件を頭に思い浮かべるだけでいいのだ。
「おはよー」
私がそう言うと、
「おはよー、放課後暇?遊ぼうよ」
「今日ねカラオケ行くんだ!」
いつもの二人がさっそく声をかけてくれた。二人はこんな私を友達として認めてくれたんだ。
「ん?今日?いいよー何時まで?」
「えーとね、7じくらいまでかな」
この子は長くて綺麗な黒髪だからお姉さんぽいけど天然が入っているからたまに話が通じないことがある。それでも理解しようと一生懸命だから許しちゃうんだけどね。
「3時間歌いきるぞー」
茶色のショートカットにピアスというまあどこからどう見ても不良な彼女だが、性格は見ての通りとても明るい。この二人が街中を歩いていたら悪絡みする不良と絡まれる美少女の図が完成して色々な人から注目を浴びている。
「ホームルーム始めるぞ」
『Oh, our teacher入ってきちゃったよ』
『いや、その無駄に発音いいのやめて。ひそひそ声でもバレるわ』
『面白いからいいんじゃないの』
「おいこらそこ!この英語はお前らしかいないんだからすぐわかるぞ」
「へーいすみませーん」
「反省0かよ…」
授業は退屈だから全部寝てた。すると終わった。
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