10.誰もいなかった

 私、父親がいなかったんですよ。4年生になる年の春に事故死したんです。まぁ……再婚なので血は繋がってませんでしたけど。

 血の繋がってる方の父は私が生まれて数ヶ月経った頃に母と離婚したそうです。だから顔も知りません。流石に覚えてないですからね、生後数カ月のことなんて。

 先生はえこひいきがひどい人だったので、特に気に入られたりしていなかった私は、なんとなく話しかけにくくて相談なんてできませんでした。

 友達……。仲の良い人は、嘲笑われたり、そんな事でって思われたりするのが怖くて話せませんでした。第一、すっかり人間不信になってましたし。それに今までよく話していた大抵の子は、もうすでにからかう側にいましたから。

 こんな感じで、誰にも相談なんてできませんでした。お前の心が弱いせいだ、って言われたら、何も反論できないんですけどね……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る