5分後恋愛ドラマが終わったら
ドゥギー
第1話
21時47分。僕と彼女はリビングで二人きりだ。
彼女はソファの上で体育座りをしながら、恋愛ドラマを見ている。
ドラマが終わるまであと5分。僕は5分後に向けて一大決心をした。
僕の思いを彼女に伝える。僕の心臓が16ビートを叩いている。
ふとテレビを見やると、若い男女が見つめ合っていた。
まっすぐ男を見つめる女。一方男はしどろもどろだ。
男の落ち着かない様子に僕は妙な親近感を覚えた。
バチン!
ヒロインが男の頬を叩き、走り去った。一人たたずむ男。
そして通り雨。ドラマのラストシーンにしてはあまり良くない。
この状況で告白して成功するだろうか?僕の顔が曇る。
エンドロールが流れ、次回予告も終わった。
僕はグッと拳を握りしめ、深呼吸する。そして、彼女の名前を呼ぶ。
「あの、夢ちゃん」
ポニーテールの彼女が僕に振り向いた。
「何?お父さん」
僕は唾を飲み込み、思いを発する。
「さ、先にお風呂、入っていいかな?」
娘の目が細くなる。
「だめ。あたしもう入るから」
娘が立ち上がる。いつのまにか手にパジャマを持っている。
体育座りでパジャマを挟んでいたのか。
一方の僕は背広のまま。すでに準備を済ましている娘には敵わない。
少女はすぐにお風呂に向かうと思われたが、立ったまま首をキョロキョロ振っている。
僕は声をかける。
「どうした?」
娘が台所に目をやりながら応える。
「お母さんは?」
僕も台所に視線を向けると、いつも洗い物をしているはずの妻の姿が見えない。
バタン!
リビングのドアが開く。現れたのは、頭にタオルを巻いたパジャマ姿の女性だ。
「あー、一番風呂はやっぱり気持ちいいわね」
「お母さん!」
声を揃える僕と娘。久しぶりに親子の心が通った瞬間であった。
5分後恋愛ドラマが終わったら ドゥギー @doggie4020
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