暗器屋さんの荒行事[2]


「もう!わかりましたね!ふう、もういいですよ。傘喰さん、店主。」

「はい、すいませんでした…」

黒髪が特徴的なこの店唯一の女子、佐々木が、前に正座をしている男2人への説教を終えた。

「もとはといえば傘君がぼーっとしていたからだめなんだよ…」

「いや、そんなの店主が一方的にふざけたのがだめなんじゃないですか…」

「どちらも悪いです!」

「「…さーせんしたっ!」」

罪のなすり付け合いをしていた黒髪の好青年、通称店主と高校生程の青年、傘喰が佐々木の圧倒的な威圧感の前に再びひれ伏し、作戦会議は終わった。



作戦実行日

中根商店の3人は、標的がいるビルの前に着いた。

「そんな状態で大丈夫か?傘君?佐々ちゃん?」

「大丈夫だ。問題ない。」

「店主は良いとして、佐々木さんは緊張して無いんですね…」

3人共軽い冗談を交えている。そんなに緊張していないようだ。

「作戦通り8:00に開始するよ。まあ、いつ始めてもいいけど…いいね!やっちゃおう!」

そう言った店主はこれから殴り込みにいくと言うのに何も装備せず、ビルの玄関から堂々と入っていった。

「「えー」」

何でなん?どうして時間を守らず突っ込むん?社会人なら時間厳守って当たり前でしょ!?

「いきましょうか、傘喰さん。」

「そうだねー。」

佐々木と傘喰は店主の後に続いてビルに入っていった。

「あぁ?なんだお前ら?あぁ?」

「なんじゃ!おら!」

はい、テンプレ発言バカー。

ビルに入るといきなりガッツリチンピラな方々に喚き散らされた。

そんな奴に対しても店主は…

「すいません、社長の蓋下三津雄さんに会いたいのですが~?」

((す、すげー!))

緩い雰囲気での唯我独尊、我が道を行く。それに対して…

「あぁ!?社長はお前らなんかに会わねぇよ!」

「そうじゃ!おら!」

こちらも全くぶれないテンプレチンピラスタイル!

「すいませーん。会話ぐらいまともにしてくださーい。」

そして!佐々木は正論ぶつけて火に油注ぐターイプ!

「なんだテメェ!ぶっ殺したらぁ!」

切れたぁぁああ!すぐに切れたぁぁああ!

切れたチンピラの1人が佐々木に向け拳を振りかぶった。なんの訓練もしていないが、成人男性の全力の単純な殴りだ。本来なら佐々木は殴り飛ばされているはずだろう。しかし、相手が悪かった。

「ぐあああ!手がっ!」

「うるっさいですよ。だからチンピラは…はぁ。」

チンピラの拳は佐々木の顔に突き刺さる事はなく、手で受け止められ、力一杯に握られていた。

チンピラの手がみしみし言ってるよ。やべぇよ佐々木。

「これは…正当防衛ってことでいいっすよね?佐々木ちゃんの。」

「良いとおもうよ。チンピラから佐々ちゃんに殴りかかったからね。」

「どうします?店主ー。殺しますー?」

「いや、社長室に連れていって貰うから。1人殺していいよ。」

「はーい。」

佐々木が今対処しているチンピラをそのまま壁に叩きつけると、喚く事なく動かなくなった。

「ひぃっ!助けてくれ!何でもするから!」

とにかくテンプレなチンピラを静かにさせると3人は進んでいると。

「おっと、あの角の先の大広間で大人数いるよ。少し気をつけてね。」

「「はーい。」」

3人は店主の忠告を聞き、それぞれの得物を構えた。

店主は素手のままでいて、

佐々木はどこに忍ばせていたのか、ファンタジーゲームでよく見る自身の背ほどのバスターブレードを片手でもち、

傘喰は突入時から腰に吊っていた刀の柄に触れた。

「じゃあいくよー。佐々ちゃん、最前で突撃よろしく。」

「はーい」

佐々木が次の瞬間、姿を消した。いや、姿を消したのでは無く、凄い速さで角を曲がったのだ。そして、大人数が存在する角の向こう側から爆発音と断末魔が聞こえてきた。

気になったため、店主と傘喰がチラ見すると、辺り一面が赤く染まっており、そこにはただ1人、佐々木が笑顔で立っていた。

「すいませーん。ついやり過ぎちゃいました。」

楽しそうに満面の笑みだった。

「つい、の次元じゃないよね。ま、お疲れ。」

「うーん、まあ、いいよ。佐々ちゃんお疲れ様。」

「ありがとうございまーす。ところで店主ー。社長の野郎は多分このドアの先にいますよね?」

そう指差した先には他のドアよりも大きなザ・社長室といったドアがあった。

「そうだね。ここからは少し大人数…かな?まあ、ここも気をつけてねー」

店主がまた敵の予言をしたのだが…どういう訳か必ず当たる。どういう原理なのか…

『魔法科〇校の劣〇生』のお兄さまみたいなことやっているのか?

「ドアを開けるけど中の人々からそこそこ手厚い歓迎を受けとることになるけど2人共対処出来るね?」

店主の言葉への2人の返しは自分の得物を構えた。

「うん、よろしい。これからもその緊張感大切だよー。じゃあここからが本当のお仕事だよ。ターゲットは一番守られているおっさん。まあ、皆殺しでいいね。」

そこまで言うと店主は無駄にでかいドアのノブに左手を掛け、右手をストレートでドアを殴り吹き飛ばした。残ったのはぐらぐらしている蝶番のみだ。

部屋の中を見ると店主に吹き飛ばされた無駄にでかいドアにめちゃくちゃにされていた。社長室によくある高そうな机も、革製のソファも、無惨な姿になっており、ターゲットである社長を守るために待ち構えていた平社員ならぬ平チンピラも巻き込まれたのか、そこらかしこに伸びていた。しかし社長のみ腰を抜かしてぶるぶる震えていた。恐らく無傷だ。流石店主、一撃でうまく当てず、歯向かっても不可能と教え込んだ。

「凄いです!店主!どうやったんですか?」

「えー?それ聞いちゃう?佐々ちゃん。これはね、僕の家に代々伝わっている拳術『螺旋突金剛打』だよ。」

「分からないですよ。そう言われても。」

「そうですよ。打ち方ですよ。聞いているのは。」

「あ、そう?じゃあコツはね、こういう感じに腰を落として、こう思いっきり前に突きだす!あ、突きだすと同時に拳を回すと…」

店主は佐々木と傘喰の問いにジェスチャーを交えながら答えてくれたのだが…

((動きが速すぎてジェスチャーが役割を果たしてないよ…))

「お、お前らは何者なんだっ!金ならあるっ助けてくれ!」

「あーすいませんね。店主と話していて忘れていました。えーと、僕達は『中根商店』から来ました。」

「はぁ!?なぜ『中根商店』がっ!私は何も頼んで…」

「あー間違ってますよ。蓋下三津雄、貴方を殺しに来たんですよ。」

「貴方は色々な事してましたねー。ほら。

わかるでしょ?自分のやったこと。」

「知らない!私は何もっ!ぐぁぁああ!」

しらばっくれるようなので傘喰は右腕を持っていた刀で切り落としてみた。

「止血しますね。予想以上ですよこんなに騒ぐなんて。」

そう言うと傘喰は再び刀を目で追うことができない速さで振ると、鞘に戻した。

社長の腕はもちろん止血され、もう血は流れていない。

「そうですね…足いきますか?店主」

傘喰に代わり、口を開いたのは静かに聞いていた佐々木だ。

「そうだね。佐々ちゃんやっちゃおうか。」

「ひぃっ!来るな!来ないでくれ!金ならあるっ!金ならっ!」

1歩1歩近づいていた佐々木は足を止め、尋ねた。

「え?金ならあるって、金をどうするんですかぁ?」

「金をやるっ!3億出すっ!」

「えぇー!お金くれるんですってぇ!どうしますぅ?店主ぅ!」

佐々木はいつもの笑みとは違う狂ったような口の端をつり上げた笑顔で楽しげに店主の判断を聞いた。

「そうだね…じゃあ助けよう。金は今あるかな?社長さん?」

「あるっ!あの金庫だ!」

そう言い指差した先に、店主の背の半分程のメタリックな箱があった。あれが金庫のようだ。

「じゃあ開けてきてくれないかな?」

首を縦に振り、即座に金庫に近づき、中からアタッシュケースをこちらに床に滑らしてきた。そのアタッシュケースを開けるとドラマみたいに札束が大量に入っていた。

「うん、契約成立。いいよ、助けてあげよう。」

「ありがとう!ありがとう!ありがとう!ありがとう!ありがとう!ありがとう!」

あれ放題になった社長室から3人が出てからもまだ社長は感謝を壊れたロボットのように言い続けていた。

「うるさいね。傘くん、よろしく。」

「あ、はい。『惨劇乃巫女[開放]』」

傘喰がそう呟くと先程まで聞こえていた感謝の言葉が突如消えた。

「ありがと。傘くん。じゃあ、帰ろっか。」

「いやー報酬に加えて3億のボーナスもついて来たね。良い仕事したねー!」

「そうですね!店主!帰る前にファミレスよっていきませんか?」

「おお、良いね!いきましょう!店主!」

「うーん…いいよ。どこが良い?」

「はいっ私はサイゼ〇ヤでっ!」

「僕は何処でも良いですよ。」


こうして佐々木と傘喰は初めての『中根商店』での仕事を経験したのだった。


             報告者:傘喰


「あー終わった。こんな物書かないといけないなんて知らなかったよ。うまくまとめられなかったなーまあ、いいか。読むの店主だけだし。」

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