第11話

 寝室のドアの前でノックした。


「ハルヒ、ちょっといいか?」


 気配は感じるが返事がない。 とはいえ、銃撃されることもなかったので会話を続けることにした。


「えっと、大丈夫か?その…思いっきり投げられたろ」


「…大丈夫なわけないでしょ、あたしはか弱いのよ」


 ひょっとしてギャグで言ってるのか。いや、今はそんなことどうでもいい。 とりあえず入っても大丈夫そうなので寝室のドアを開けて中に入った。


 ハルヒはベッドの上で布団にくるまっており、だるまのような恰好で俺に背を向けていた。


「さっき言ってたことなんだが…ハルヒは本当に意味わかんねぇと思ったのか?」


「・・・」


「正直な所俺は理解できた。俺は、まあ少しややこしいんだが、似たような経験があるんだ。朝起きたらいるはずの奴がいなくて、いないはずの奴がいて。その時俺が一番思ったのは、いなくなった奴に会いたいってことだった。だからさ、さっきの俺たちのことをあいつが怒ったのが、ちょっと分かるんだ。あいつがやったことを許せとは言わない。でも今度来たら力になってやらないか?」



「あたしだって…分かるわよ。あいつに会いたいって…どれだけ思ったか」


 あいつ?あいつって誰だ?


「さっきの奴が言ったこと、あんなに怒った理由は、あたしにも分かる。酷いこと言っちゃったわ」


 俺は心から安堵した。だってそうだろ。ハルヒは怒ってるんじゃなくて落ち込んでたのだから。こいつだっていつまでも傍若無人なだけのやつではないのだ。


「大丈夫だよ」


 誰だって間違えることはあるさ。まあ、お前の場合少し反省した方がいいかも知れんが。 と一応くぎを刺しておく。


「何よそれ、慰めてんじゃなくて貶してるわけ?」


 胸に手を当てて考えてみてくれればわかると思うぞ。ハルヒは布団にくるまったまま器用に俺の方に向き直ってニヤッと笑った。


「今日は早めに閉めちゃったから明日はバンバン依頼を受けるわよ!ロンドン中が驚愕するくらいの難事件を解決してみせるわ!!!」


 そうしてくれ、前も言ったがお前が事件を起こすんじゃないぞ。


 ハルヒは迷いが晴れたからか、すぐに眠ってしまった。俺も寝るとするか。とその前に、今一度現状をノートに整理してみるか。

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