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「大変良いものを見せて頂きました」
「彼女に伝えたらきっと喜ぶと思います」
まるで自分のことのように微笑んだ彼女はリボンを揺らしてグラスを傾けた。
「皆さんとても指先が器用なんですね」
「ふふ、どうでしょう?」
どうでしょうって、デザイナーとして働いていてこんなに繊細なお洋服まで作れるのに何を言うんだい。
「手先に関しては不器用ではないかなぁとは思いますけれど、結構飽きっぽいので。器用なのには好きなことだけに関してです」
好きなことだけ器用?
「私もお友達と同じようにプラバンで作品を作ったりするんですけれど、どうもあまり見栄え良く作れなくて。アクササリーならプラバンよりレジンの方が好きなんですけれど、やっぱり本職の彼女には負けますね。レース編みや刺繍とかは私の方が得意なんですけれど」
ワンピースの首元を彩るレースに彼女が触れて、やっとそれも彼女自信が作ったと言うことに気付く。
マジで? ここも既製品じゃなくてハンドメイドなの? 信じられん。
「好きなこと仕事にしていますから。これも以前暇な時に作ったモノを引っ張り出してきたものだし。心から好きだからこそ自然と器用になる、んでしょうか?」
またリボンを揺らして、こくんと首を傾げる。
いや、どうだろう? でも、
「言われてみれば私もカクテルとなると指先が器用になる気がします。料理なんかもしますけれど、やっぱりどこか不恰好になってしまいますし」
それが仕事と趣味の分かれ道?
「その人にしか出来ない素敵な事を、みんなそれぞれ分担して、しているんでしょうね」
「ふ、そうですね、そうかもしれません」
「素敵ですね」
「だからこそ、素敵ですね」
自分の出来ない事を出来る誰かがする、そうやって素敵な毎日を過ごせているのかもしれないな、なんて。
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